この記事はこのような方に向けて書いています
・産業医が予定通り働いてくれずに困っている人事・労務担当者の方
・産業医をこれから雇おうとしている人事・労務担当者の方
運送業は、トラックの長時間運転、荷物の積み下ろし時の高所作業、フォークリフトによる運搬作業、過積載による事故リスクなど、多岐にわたる労働災害のリスクに直面しています。
最近でも、長時間運転によるドライバーの疲労と睡眠不足が原因で重大な交通事故が発生したというニュースを耳にします。このような事故は、企業が産業医と連携し、適切に労働環境を評価し、労働者の健康状態をモニタリングすることで防げていたかもしれません。
産業医は、医学的な視点で労働者の疲労を評価し、適切な作業スケジュールや休息時間の確保を提案することで、安全な職場環境の維持に大きく貢献することができます。
今回の記事では、自社にあった産業医選びにお困りの人事・労務担当者向けに、運送業の分野に適した産業医とはどんな特徴なのかについて記載しています。また最後には、簡単な運送業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストも記載しています。
是非、産業医を契約中の方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会にご確認してみてください。
運送業の現状と産業医の重要性
運送業における労働災害の現状
運送業界は、荷役作業時のリスクが特に顕著です。上図に示されているように、荷物の積み下ろし時の転落や墜落が運送業における労働災害の約30%を占めています。またトラックに関する事故が全体の7割となっています。そのため労災が起きる事故は、主にトラックや荷台からの墜落、荷物の崩落によるものであり、労働者の労働災害の防止対策が急務であることを示しています。
特に「荷役5大災害」が問題とされています。これには、
・トラックや荷台からの墜落・転落
・荷崩れ
・フォークリフト使用時の事故
・トラックの無人暴走
・トラック後退時の事故
が含まれます。これらの事故は、運送業において労働者が日常的に直面する危険であり、企業は適切な安全対策を講じる必要があります。
国の目標と対策計画
日本政府は、第14次労働災害防止計画において2027年までに荷役作業による死傷者数を2022年と比較して5%以上減少させることを目標としています。この計画に沿って、事業場では荷役作業の安全管理の強化が求められています。(第14次労働災害防止計画より)
運送業での産業医の役割
産業医は、このような環境下で「健康と安全」に関する専門知識を活用し、労働災害のリスクを軽減するための役割を担います。具体的には、労働者への安全教育、作業プロセスのリスク評価、適切な保護具の使用の推奨、緊急事態対応プロセスの策定が含まれます。また、企業は産業医と連携して、作業環境の改善、安全装置の導入、定期的な健康診断の実施などのサポートも行うことができます。
それではもう少し詳しく運送業分野で雇うべき産業医の特徴について、掘り下げて考察していきます。
運送業界に向いている産業医の4つの特徴
①企業文化をより理解しようとする
「夜間の勤務が体にツラい」と話している従業員の方がいるかもしれません。運送業界は、長時間労働、夜間労働、そして高い身体的及び精神的ストレスがある職場環境が多いという特徴があります。
これらの特徴は、従業員の健康に直接的な影響を及ぼすため、産業医には企業の環境を深く理解し、対応策を講じることが求められます。
- 長時間労働と睡眠不足の問題: 運送業界では、長時間労働が常態化しており、これが睡眠不足や生活習慣病のリスクを高めています。産業医は、従業員の睡眠の質の向上や、適切な休憩時間の確保を推奨することが重要となります。
- 運転中のストレスと孤独感: 長時間の運転は、ストレスや孤独感を引き起こすことがあります。企業と協力して産業医は、労働者一人一人のメンタルヘルスのサポートやストレスマネジメントの方法を提供することができます。
- 身体的負担の軽減: 運転による身体的負担は、筋肉痛や関節痛などを引き起こす可能性があります。産業医は、運動プログラムや適切な体勢の指導を通じて、これらの負担を軽減することができます。
これらの対策を通じて、産業医は運送業界の従業員の健康を守り、生産性の向上に貢献することができます。運送業界特有の企業文化を理解し、それに基づいた健康管理策を講じることは、産業医の重要な役割の一つです。
②労働安全衛生法やその他の産業保健法に関して知識がある
【働き方改革によって労働時間の管理がより厳密になる】というニュースを聞いている方もいるかもしれません。運送業に関わる主要な法律は労働安全衛生法、道路交通法、貨物自動車運送事業法、道路運送車両法、労働基準法などがあります。
特に、令和2年度の「過労死等の労災補償状況」においては、脳・心臓疾患の労災請求件数多いことから、運転手の働き方改革が進められています。
主な法的規則は以下の通りです。
- 自動車運転者の拘束時間は基本1日13時間まで
- 手持ち時間(荷待ち時間)も労働時間
- 休息期間は原則継続する8時間以上が必要
- 運転時間は継続で4時間などの制限がある
- 休日は32時間を下回ってはならない
出典:改善基準告示の見直しについて(参考資料):厚生労働省
これらの法規制に対し、多くの企業が正確な理解と適切な対処に苦労しています。運送業界における産業医は、これらの法律に精通し、企業の状況に応じた具体的な提案とサポートを行うことが求められます。
運送業界における産業医は「健康と安全」の相談相手という側面だけでなく、リスクアセスメントと対策のサポート役として重要な役割を果たしています。
③迅速なレスポンスと緊急事態などにも対応して動ける
運送業界では、緊急時の迅速な対応が不可欠です。しかし、産業医がタイムリーに対応できない状況はありませんか?
例えば、交通事故や運転中の健康問題など、重大な労働災害が発生した際、産業医は企業と協力し、事故予防措置や対策の実施、従業員の身体的・精神的サポートを行うことが重要になります。
また、違法行為による業務停止命令のリスクがある場合、産業医は長時間運転や夜間運転などのリスク評価を行い、労働者の健康状態を確認し、問題の未然防止に努める必要があります。
運送業界における産業医は、健康管理の専門家であり、企業の安全文化の形成と維持に重要な役割を果たします。さらに、組織改革のサポートや予防的対策などにも貢献することができます。
④外国人労働者の対応ができる
運送業界でも、人手不足は深刻化しており、その人手不足解消のために外国人労働者の需要は増加しています。
しかし、言語の壁や文化の違いから、労働災害のリスクが高まっているのが事実です。
このような状況では、産業医の役割が重要となるかもしれません。企業と協力し、産業医は多言語に対応した安全教育資料策定や労働者間の情報伝達のギャップを埋めるサポートを行うことができます。
運送業界の産業医は、健康管理の専門家であると同時に、企業の国際化における重要な役割を担うことができるのです。
運送業における産業医の特徴についてのまとめ
運送業界に求められる産業医の特徴に関する記事はいかがでしたか?自社の産業医は、今回の記事で述べられたような特徴を備えていましたか?
運送業における産業医の役割は非常に広範で、企業の健康と安全の環境を向上させることが重要です。運送業界特有のリスクを理解し、それに対応できる産業医を選択することは、リスクの低減はもちろん、従業員の質の向上や意識改革に繋がり、結果的には企業の生産性向上にも寄与します。
最後に運送業に向いている産業医の基準を簡単なチェックリストにまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
あなたの会社の産業医は大丈夫??建設業や建築業の産業医チェックリスト
【必須条件】
□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
□ 知識や経験の有無 :労働安全衛生法などの法律や働き方改革などに精通しているか
□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
□ 迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
【副次条件】
□ 外国人労働者への対応の有無:企業と相談して臨機応変に対応できるか
これらは運送業に求められる産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で最も大事になるのは、【企業文化にあった提案をすることのできる産業医】です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。
以上が「運送業に向いている産業医」についての記事になります。最後までお読みくださりありがとうございました。
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