この記事はこのような方に向けて書いています
・スタートアップ企業で産業医をこれから雇おうと考えている担当の方
・スタートアップ企業でメンタルヘルス不調者に悩んでいる担当者の方
「従業員増加している中でメンタル不調者が増加している」と感じたり、「近々産業医の選任が必要だが、どのような産業医を紹介してもらうのがいいのか悩んでいる」と感じているスタートアップ企業の人事・労務担当者はいませんか?
経営者をはじめ、多くの人事・労務担当者が口を揃えていうのは、スタートアップ企業にとって、企業として急成長していくためには、モチベーションの高い社員を増やしながらも、離職者を減らさないことが重要ということです。
特にスタートアップにとって以下のリスクが表面化しがちです。
- 高い心理的ストレス:高い期待と成果が求められる環境でストレス、燃え尽き症候群、うつ病などの精神的な健康障害を引き起こすことがあります。
- 過労による健康問題:長時間労働や休息期間の不足は、疲労、睡眠障害、免疫力の低下をもたらし、長時間放置してしまうと、心筋梗塞や脳卒中などの深刻な健康リスクを引き起こしてしまうことがあります。
- 人間関係に起因する問題:フラットで密な組織構造や成長への高い圧力が求められる状況でのチームワークは、職場内の対人関係のトラブルやコミュニケーションの問題を引き起こすことがあります。
- 不規則な食生活や生活習慣:忙しさから夜遅くの食事などの不規則な食生活や暴飲暴食が常態化し、栄養不足による体調不良などの悪循環を引き起こすことがあります。
これらのリスクがより顕著になる可能性があることをを認識し、従業員の健康と安全を守るための対策を講じることが重要となります。
この対策を講じるために、産業医の専門的なアドバイスやサポートを利用していくことがより大切になります。
今回の記事では、スタートアップの人事・労務担当者に向けて、産業医の採用に際して考慮すべき特性や、産業医に求める資質について詳しく掘り下げていきます。また最後には、スタートアップ企業に最適な産業医を見分けるための簡単なチェックリストも記載したので是非参考にしてみてください。
スタートアップで既に産業医を採用している方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医にとってどのような資質が必要なのかを確認しながら読み進めてもらえらば幸いです。
スタートアップ企業を支える産業医の5つの特徴
1. 企業文化を理解しようとするコミュニケーション能力
「スタートアップ特有の問題について全然わかってくれない」と悩んでいる人事担当者は多いかもしれません。
実際にスタートアップ特有の問題には
- リソースの制約:使える資金や人的資源が限られている
- 過重労働と大きなストレス:迅速な成長と短期間での目標達成の実現が求められる
- 管理体制がまだ不十分:安全衛生分野や法令に関する専門知識がまだ不十分である
などがあります。
産業医に求められるのは、現在のスタートアップでは、どの問題の優先順位が高く、即座に対応すべきななのかを企業と相談の上、対応する能力です。
しかし、スタートアップを担当する産業医は、50人未満の事業所であることが多いため、月に1回程度、企業に訪問するという働き方が一般的です。そのため直接会う以外は、メールでのやり取りをすることがしばしばであり、適切な対応を行うためには、企業の担当者との密なコミュニケーションを通じて、協力して対処することが必要不可欠になります。
産業医には、短時間で状況を把握し、関係性を築く力が重要となるのです。
2. 企業の変化に対応する柔軟性
「この半年で業務内容が大幅に変わった」と感じているスタートアップ企業で働く方も多いのではないでしょうか?
スタートアップ企業では日々、業務内容が変化しており、数ヶ月単位という短期間で事業の方向性が変わることは珍しくありません。このような環境では、従来の手法やプロセスが頻繁に見直され、新しいアイデアや戦略が試されることが一般的です。
このような流動的な職場環境では、産業医が果たす役割は重要であり、従業員の健康維持と生産性の維持が求められます。
つまり、産業医は、常に変化する業務内容や作業環境を適切に把握し、それに合わせた健康管理やリスク評価を迅速に行う能力が必要なのです。
また、発展途上の会社の中で、健康や安全に対するポジティブな企業文化や価値観を形成する重要な役割を担っています。
3. 労働安全衛生法などの産業保健分野への広範な知識がある
「産業医は具体的にどのような支援が可能なのか?」多くの担当者がこのような疑問を抱えているかもしれません。
特に、スタートアップ企業では【健康や安全】に関する体制が十分に確立されていないことも少なくありません。つまりこれは、改善の余地が豊富にあるということでもあります。
この状況は、産業医にとって、労働安全衛生法などの産業保健に関する法律や、その他の産業保健に関する経験と知識を総合的に利用し、企業にあった解決方法を提示する絶好の機会になります。
加えて、さらに質の良い産業医は産業保健の土壌を企業と伴走して作りながらも、経営戦略に基づくより高度な解決策を同時に提示できるかもしれません。
4.状況に応じた適切なリスクアセスメントができる
「特定の問題に対処しないとどのようなリスクが生じるか」という懸念を抱える担当者も多いのではないでしょうか?
スタートアップ企業の産業保健分野では、リソースが限られている中での効率的な問題解決が求めれます。産業医には、問題が顕在化し、さらなるコストが発生する前に予防措置を講じることで、企業のリスクを低減する先見性が必要不可欠です。
質の高い産業医は、リスクと利益をバランスさせることで企業にとっての最適な戦略を提示することができます。
5.レスポンスが素早く、法改正などにも対応して動ける
「相手先からのレスポンスが遅いと、本当に大丈夫なのか」と心配になった経験はありませんか?
この心配はスタートアップ企業においてはさらに重要になります。法律の改正に迅速に対応できなければ、国から事業停止の指摘を受けるだけでなく、最悪の場合は会社が消滅するリスクも抱えています。予防策を講じ、さらには問題が発生した際には、即座に対応する能力は、企業にとって非常に重要になります。
この状況において、産業医の役割は特に重要です。スタートアップを担当する産業医は「健康と安全」に関する深い専門知識を活用し、法律や規制の改正に対して迅速に対応する必要があります。つまり、企業が直面する問題に対して柔軟かつ明確な対応策を立てられるよう、支援することが不可欠なのです。
最後に
スタートアップ企業が求めるべき産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?もし産業医を雇っている場合は、自社の産業医は今回の記事で述べたような特徴をしっかり備えていましたか?
スタートアップ企業における産業医の役割は多岐に渡り、企業の健康と安全の環境を向上させていくために重要になってきます。そして、そのような企業に合った産業医を選択することができると、リスクを低減させることだけでなく、限られたリソースの中でも従業員の質の向上や従業員の意識改革に繋がり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与するのです。
最後に、スタートアップ企業が採用すべき産業医の基準をチェックリストにまとめました。
スタートアップ企業に最適な産業医チェックリスト
□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
□ 知識や経験の有無 :労働安全衛生法などの法律や働き方改革などに精通しているか
□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
□ 迅速な連絡や対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか 、問題に早期に対処できる
□ PDCAを回せるか:状況に応じてリスクアセスメントを行い、企業側に適切な対応を提案できるか
これらはスタートアップに求められる産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で最も大事になるのは、『企業文化にあった提案をすることのできる産業医』です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。
以上が「スタートアップ企業に向いている産業医」についての記事になります。最後までお読みくださりありがとうございました。
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