【復職者対応】産業医が伝える人事労務担当者が知っておくべきメンタル不調からの復職の流れ

みなさんは休職と聞くと、どんなことを思い浮かべますか?

  • 休職はあまり自分に関係ない
  • 一度休職すると戻って来れない
  • 身体や精神的に弱い人がなる

と思っている人がいるかもしれません。ただ今の日本では現状として、休職者が増え続けているのです。

今回は、休職とその後の復職対応の流れについて解説していきます。

復職対応は契約している企業の産業医にとっては慣れていないことが事実です。そして、その慣れない先生が対応するとスムーズな復職が難しいこともあります。メンタル不調にも対応でき、企業と労働者の第三者視点から対応することができる産業医を取り揃えているライフインベスターにお任せください。どんなことでも一度ぜひお気軽にご相談ください

目次

あまり知られていない日本における休職の実態

”増え続ける休職者数、注目されるメンタルヘルス不調と、ニュースでもおそらく報道されていますが、先行き不安の世の中により、日本全国で今、休職者が増加傾向となっています。


それでは休職理由にはどんなものがあるのでしょうか?

休職の理由は様々ですが、なかでも疾患によるものでは「メンタルヘルス不調」「がん」が多くを占めています※1
厚生労働省の「労働安全衛生調査(令和3年・実態調査)※2」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続1か月以上休職した労働者または退職した労働者がいた事業所の割合は、平均で10.1%に及びました
メンタルヘルス不調による労災発生件数も増加傾向にあり※3、こころの健康に関するより深い理解が求められています。

しっかり対応すべきメンタル不調者とは?

メンタル不調とは、うつ病や統合失調症などの精神疾患や、適応障害や抑うつ状態などの心理状況にあることを言います。
うつ病で休職した社員のうち47.1%が5年以内に再発・再休職に至っており、また、休職期間は1回目の平均107日に対し、2回目は平均157日と1.5倍長くなっていたというデータもあります※4

つまり、一度再発してしまうと悪循環に陥りやすい、という特徴があります。

この悪循環は社員と会社のどちらにも不利益をもたらしてしまいます。症状が改善したからといって完治したと捉えるのではなく、継続したフォローが重要なのです。

以下からは復職の流れについて解説していきます。

復職の流れ

メンタルヘルス不調からの復職、そして再発予防には復職支援体制の整備や周囲の理解が不可欠です。
社員間や部署間で休職・復職への理解に差があると、一貫したサポートができずに混乱を招いたり、社員間に不公平感が高まるなど、復職を妨げる事態になりかねません。一番大事なことは、社員同士の共通理解なのです。


日ごろから休職から復職までどのような流れをたどるのか共有し、復職者についての理解を深めておくとよいでしょう。実際に、社員の共通理解がないために復帰後、うまくいかないという事例もあります。


休養期から復職期までは下記のような流れをたどりますが、社員の状況に合わせて医師と相談しながら決め、療養の進み具合に焦らないことが大切です。

復職の流れ_メンタル対応に強い産業医紹介_LiFE Investors株式会社

(1)休養期 ―こころとからだをゆっくり休める―

この時期のポイントは、

規則正しい生活リズムに整え、体力を取り戻す
・引き続き安心感の醸成を
・焦って大きな決断をしない

社員からの病気休業診断書の提出により、休養期が始まります。
休養期のポイントは、主治医と共に治療に専念し、仕事のことは考えずにこころとからだをゆっくり休めることです。

休職中の経済的不安や将来に対する不安もできる限り軽減できるよう、傷病手当金制度や休業の最長(保障)期間、不安・悩みの相談先などについて情報提供を行います。
その他必要な事務手続きについての説明を行い、休職中の連絡は必要最小限にとどめましょう。

(2)回復期 ―生活リズムを整える―

この時期のポイントは

生活リズムの回復と維持する
・安心感をしっかりとつける
・焦って大きな決断しない

回復期は調子がよい日と悪い日の波があることが多いです。

そのため回復期では、規則正しい生活リズムに戻していくことが目標となります。

決まった時間に食事や睡眠をとり、軽い運動をするだけでもかなり疲れが出てしまうのです。 引き続き社員の安心感を醸成する対応を心がけましょう。

なかには焦って復職を急ぐ社員もいますが、体調が戻ってきたからといって、自己判断で治療を中断してはいけません。 慌てずに、主治医と治療を継続し、しっかりと療養の手順を踏むことが重要です。

(3)復職準備期 ―復職可否の判断・職場復帰支援プランの作成―

この時期のポイント

・社員からの職場復帰の意思表示
・職場復帰可能の判断が記された診断書の受理
・産業医などによる職場復帰の可否の判断
・職場復帰支援プランの作成

体調の変動が安定して、調子の悪い日でも出社できる程度の状態になったら復職を検討できる時期です。簡単にいうと、元のパフォーマンスの7割程度まで回復してきたら復職を考えるということです。


さらに、2週間以上規則正しいリズムで生活でき、日中は外出して過ごす体力が回復していること、通勤電車に乗れること、作業に集中できることなど、毎日出社して軽減業務程度ができる状態であることが必要です。

産業医などによる職場復帰の可否の判断

本人から職場復帰の意思表示があり、主治医による職場復帰可能の判断がなされたら、診断書を受理します。
この際、「早く復帰しなければ」という本人の焦りや、「早く復帰してほしい」という家族の意向により職場復帰の意思表示がなされることがあります。
さらに、主治医による診断は日常生活における病状の回復によって職場復帰の可否を判断していることがあり、必ずしも職場で求められる業務遂行能力が回復しているとは限りません。

病状回復≠ 職場復帰


十分に回復できていない状態で復職をしてしまうと、同僚に迷惑がかかったり、復職者本人のメンタルヘルス不調の再発につながりかねません。こういう場合に再休職につながってしまう


そのため、診断書を受理したからといってすぐに職場復帰の判断をしてはいけません。

つまり、職場と復職後の本人のミスマッチを避けることが大事なのです。


そして、復職準備期で最も重要なことは、最終的な復職決定の前段階で、必要な・情報収集と評価を丁寧に行い、復職の可否を適切に判断することです。

産業保健スタッフを中心に、プライバシーの保護に留意しながら下記のような情報収集を行います。

  1. 職場復帰に対する意思の確認
  2. 主治医からの意見収集
  3. 健康状態の評価
  4. 職場環境の評価
  5. その他

①職場復帰に対する意思の確認

職場への申し訳なさや将来の不安から焦って復帰を希望していないか、産業医面談などを行って慎重に判断します。

②主治医からの意見収集

診断書の内容だけでは不十分な場合、本人の同意を得たうえで主治医から病状や治療内容などの情報収集を行います。この際に、主治医との密な情報交換を行うことが重要になってきます。

③健康状態の評価

自覚症状や治療の状況、生活・睡眠リズム、飲酒習慣などの確認をします。休養期からの生活記録表を活用してもよいでしょう。必要に応じて、本人の同意を得たうえで家族からも情報収集を行います。

④職場環境の評価

  • どのような業務や職場が適しているか
  • どのようなことに配慮が必要か

などの職場環境を評価し、復職できる状態であるかを本人の状態を踏まえて総合的に評価します。

⑤その他


本人の行動特性や家族の支援状況、職場復帰の阻害要因などを確認します。

このように十分な情報収集と評価を実施したうえで、職場復帰が可能か判断を行います。

職場復帰プランの作成

職場復帰が可能と判断された場合、

  • 復職者本人
  • 管理監督者
  • 産業保健スタッフ
  • 人事労務管理スタッフ

で十分に話し合いながら職場復帰プランの作成を行います。職場復帰プランは、下記の項目について検討して作成します。

①職場復帰日
②管理監督者による就業上の配慮
③人事労務管理上の対応等
④産業医などによる医学的見地から見た意見
⑤フォローアップ内容
⑥その他

①職場復帰日


本人の状況や、職場のサポート体制の整備状況から、職場復帰日を決定します。

②管理監督者による就業上の配慮


業務内容や業務量、周囲からのサポート方法や就業上必要な配慮などについてあらかじめ検討しておきます。

③人事労務管理上の対応等


配置転換や移動の必要性、勤務制度変更の可否および必要性について検討します。職場復帰は元の慣れた職場へ復帰させることが原則ですが、配置転換や異動をした方がよい場合もあるので、状況に応じて判断することが重要です。

従業員を適材配置をすることが最も重要となります。

④産業医などによる医学的見地から見た意見


本人の病状に応じた安全配慮義務に関する助言や、職場復帰支援に関する意見を聴取します。

つまり、職場のことを理解した専門家の話を聞きながら擦り合わせをすることが大事となります。

⑤フォローアップ内容


管理監督者や産業保健スタッフなどによるフォローアップの方法や、就業制限等の見直しを行うタイミングを決めておきます。また、すべての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通しをたてておきます。

復職したら終わりではなく、元のパフォーマンスに戻るようにサポートすることが大事となります。

⑥その他

試し出勤制度の利用事業場外資源の利用などについて相談します。

試し出勤制度

本格的な復職の前に、「試し出勤制度」などを設ける事業所があります。試し出勤では職場に試験的に一定期間継続して出勤し、座席などで過ごしますが、業務は行いません。

  • きちんと時間通り出勤できるか
  • 欠席はないか

など、復職可能かどうかの判断材料にします。職場の状況を確認しながら復職の準備をすることができるため、本人の復職に対する不安の軽減につながる場合があります。試し出勤では賃金が発生しないため、導入や実施の際は、あくまで職場復帰支援であることを本人や関係者に説明しておくことが大切です。

試し出勤制度の例として、以下のようなものがあります。

  • 模擬出勤
  • 通勤訓練
  • 試し出勤

①模擬出勤
勤務時間と同様の時間帯にデイケアなどで模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごします。

②通勤訓練
自宅から勤務職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅します。

③試し出勤
職場復帰の判断等を目的として、 本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤します。

(4)復職期

この時期のポイント

・同僚に対し配慮事項を共有する
・管理監督者による観察、支援 ・産業保健スタッフなどによるフォローアップ
・本人の状況にあわせて段階的に通常勤務

となります。

職場復帰が決定したら、同僚に対して勤務上の配慮事項を共有し、職場復帰した社員がスムーズに働けるように配慮します。職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、下記の項目に沿って産業保健スタッフなどによるフォローアップを実施し、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。本人や職場の状況を把握し、慎重に業務内容を調整して段階的に通常勤務へ戻していきます。

疾患の再燃はないか
勤務状況業務遂行能力の評価
職場復帰支援プランの実施状況の確認
治療状況の確認
職場復帰支援プランの評価と見直し
職場環境などの改善
管理監督者、同僚の配慮など

①疾患の再燃はないか


本人との定期的な面談や、管理監督者をはじめとした同僚による観察を行い、再燃の早期発見と迅速な対応が重要です。

②勤務状況や業務遂行能力の評価

本人の意見だけでなく、他の社員による意見もあわせて客観的な評価を行います。

③職場復帰支援プランの実施状況の確認

職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認します。

④治療状況の確認


通院状況、病状や今後の見通しについての主治医の意見を社員本人から聞きます。

⑤職場復帰支援プランの評価と見直し


さまざまな視点から評価を行い、問題が生じている場合は関係者間で連携しながら、職場復帰支援プランの内容の変更を検討します。

⑥職場環境などの改善


職場復帰する本人がストレスを感じることの少ない職場づくりを目指して、作業環境・作業方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境の改善を検討します。

⑦管理監督者、同僚の配慮など


職場復帰をする社員を受け入れる職場の管理監督者や同僚に、過度に負担がかかることのないように配慮します。

復職直後は軽い作業でもとても疲れやすく、再発しやすい時期です。1週間から1か月ごとにフォローアップ面談を行い、心身の不調や就業上の問題点をいち早く把握できるよう努めます。復職を目標とするのではなく、復職後も本人・同僚が無理なく働き続けられることを目標に、各機関の密な連携が不可欠です。

メンタルヘルス不調から復職した場合の再発率はとても高く、一度再発してしまうと療養期間がより長くなり回復率が低下、さらにその後の再発率が上昇するなど、悪循環に陥るため、再発予防がとても大切です。再発予防のために周囲の心構えを共有しておくことが重要です。そして、対応としては初動が最も大事になります。

メンタルヘルス不調への理解

まず、メンタルヘルス不調は再発しやすく悪循環に陥りやすいため、復職後も継続的なフォローが不可欠ということを事前に共有しておくことが重要です。


見た目は以前と変わりがないように思えても、復職者の状態を慎重に評価して段階的に業務量を調整しなければならないということへの理解を得ておく必要があります。


復職者のフォローによって周囲に負担がかかり、ときに複雑な感情を抱いてしまうのは仕方がないことかもしれませんが、復職者は休職していたことや周りに負担をかけることへの罪悪感や、思うように仕事量を回復できないやるせなさと焦りを感じています。


受容的な態度で迎え入れるようにしましょう。また、周囲のフォローが不可欠だからといって、過度な扱いはときに重荷になることがあります。なるべく普段通りの声掛けを心がけてください

再発のサインをキャッチする

メンタルヘルス不調は、早期発見・早期対応がとても重要です。

周囲の観察も早期発見には欠かせないため、日ごろから異変に気付けるよう何気ない声掛けや観察を心がけましょう。表情や顔色、身だしなみなどの視覚的な変化や、勤務状況および業務遂行能力の評価、治療状況・通院状況が観察のポイントになります。

情報の取り扱い

復職者を迎えるにあたって、社員間で事前に対応を共有しておくことはとても重要ですが、復職者の情報をどこまで周囲に伝えるかは必ず事前に確認をとりましょう。また、復職者に無断で主治医や家族に連絡をしてはいけません。情報の取り扱いには細心の注意を払うことが大切です。

まとめ

日本ではメンタルヘルス不調による休職者が多く、また、再発率も高いため、復職支援体制の整備が大変重要となります。スムーズな復職には周囲の協力も不可欠であるため、日ごろから社員に対しメンタルヘルス不調や復職に関しての情報共有を行い、理解を促しましょう。
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