落ち込んでいる部下に皆さんにどう声をかけますか?実際に産業医として勤務していると「うつ病」と診断された部下や同僚にどう声をかければいいのかと悩む方もいらっしゃるかもしれません
上記は精神障害等による労災認定状況は上図のように年々増加しています。年々メンタルヘルスによる労災認定件数は増加しており、国としても早期の対応が望まれています。
しかし、実情ではメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所では全体で6割以下という現状もあり、これらへの対応が求められています。
今回企業でメンタル不調者の対応もしている産業医の私が詳細について解説していきます。
自社の産業医がメンタル対応してくれないなど自社の産業医に何かお困りの方はお気軽にご相談ください!
そもそもうつ病って?正しい理解できてる?
うつ病とは、気分がひどく落ち込んだり何事にも興味を持てなくなったりして強い苦痛を感じ、日常の生活に支障が現れるまでになった状態です。こうした状態は、日常的な軽度の落ち込みから重篤なものまで連続線上にあるものとしてとらえられていて、原因についてはまだはっきりと分かっていません。
(厚生労働省より)
うつの3大症状としては
- 抑うつ
- 不安
- 意欲低下
などあります。
現状として、うつ病は一生の間に約15人に1人という割合で発病すると言われるほど、多くの方が経験する病気です。(厚生労働省より)
しかし、症状で悩んでいても病気であると気が付かなかったり、医療機関の受診に抵抗があったりと、うつ病にかかっている人の4分の1程度しか治療を受けていません。
うつ病は特別な病気ではなく、誰でもかかる可能性がある病気です。 また、きちんと治療することで回復できるので、早めの相談・治療と休養が必要です。
うつ病の基準ってどこ?
「落ち込んだらうつ病?」「調子悪かったらうつ病?」とうつ病の基準は多くの人にとってわかりにくいものです。
うつ病の基準は医師によって異なるということが昔から問題視されていました。それを統一化するためにdsm5を設けてうつ病の基準が明確にされました。
うつ病の基準として
「抑うつ気分もしくは興味喜びの減退を含む、合計5つ以上の症状」
が2週間以上続くとうつ病と判断されます。(dsm5より)
例えば仕事や家庭の環境の変化が続いたことに対応できずストレスが溜まり、不安や無力感がが広がることで日常生活に興味が持てずうつ病を発症する場合などがあります。
うつ病のサインとは?
うつ病の初期症状として以下の点が挙げられます。
うつ病のこころのサイン
- ゆううつ、悲しい
- 無気力、無関心
- 意欲、集中力、決断力が低下する
- 焦燥感、自責感が強くなる
- 悲観的になる
- 柔軟な考え方ができなくなる
- 将来に希望がもてなくなる
うつ病のカラダのサイン
- 眠れない、もしくは寝過ぎる
- 食欲が低下する、もしくは食べ過ぎる
- だるい、疲れやすい、元気が出ない
- 頭痛、頭重、めまい、吐き気など
(厚生労働省の「こころの耳」より)
最近自分や周りの人の様子が変だなと思った際には上記のような症状が当てはまっているかどうか確認してみてください。
うつ病かもしれない同僚への接し方
うつ病かもしれない同僚にどう接したらいいのかわからないと悩む方もいるかもしれません。
大事にしてほしい考え方として同僚に対しては、理解とサポートがもっとも重要となります。
単に「頑張れ」と励ますのではなく、同僚に対する理解と一つ一つのサポートを意識して声をかけることが重要です。
それらを行うことで、彼らが仕事環境でより良く機能しやすくなり、回復に向けた一歩を踏み出しやすくなります。
うつ病の人への励ましの言葉とは?
うつ病で苦しんでいる人への言葉選びはとても重要です。思いやりと真摯なサポートがとても大事となります。
今回、うつ病を抱える人へかけるべき言葉をいくつかご提案しています。
「いつでもサポートするよ」
周りくどい声がけではなく、率直に伝えることが重要です。本人が一番辛いということを理解し共感してあげましょう。もし本人が話してくれた際には、話してくれたことに感謝して「そうだよね、辛いよね」と共感してあげることが大事です。つまり「傾聴」を意識することが重要になります。
「あなたのペースで大丈夫だよ」
うつ病の回復は個人差が大きく、時間がかかることもあります。焦りは回復を妨げる要因となり得るため、彼らのペースを尊重し、そのプロセスを全面的に支援する姿勢が重要です。
「大変な経験をしたんだね」
うつ病のせいで自分の思い通りに行えないことが多くなり、甘えではないかと自己嫌悪に陥ってしまうことがあります。理解と共感の声をかけ、彼らの苦悩を認め、労ることで、自尊心の回復に繋がります。
②うつ病の人に対するNGワードを避ける
うつ病に苦しむ人への対応には、言葉選びが非常に重要です。一見、激励や応援のつもりで使われる言葉も、人によってはプレッシャーや不安を増大させる原因になることがあります。
「早く元気になってね」
うつ病は風邪とは違い短期間で治るものではありません。また人によって個人差が大きく、時間を要することも多いのが現状です。つまり良かれと言った言葉が、本人に対してプレッシャーを与えてしまうかもしれません。
「頑張ってね」
うつ病を抱える人にとって、日常生活のシンプルなタスクでさえ大きな努力が必要な言葉があります。この言葉は、彼らに過剰な負担を強いることになり、心理的な圧迫感を与えかねません。
「本当にうつ病なの?」
うつ病やその他の精神的な課題は外見からは明確にはわからないことが多く、このような問いかけは、相手を不安にさせたり、理解されていないと感じさせることがあります。
「あなたより大変な人は沢山いるよ」
他人の苦痛と比較することは、相手の感情や体験を否定し、無価値感を与えかねません。各個人の感情は独自のものであり、他者と比較することのない価値があります。また自分はもっと大変だったよと言ってしまう人がいますが、それは相手にとって負担になりかねません。
③医療機関への受診を勧める。
医療機関の受診は、うつ病の適切な診断と治療を受けるために不可欠です。専門家の指導のもとで治療計画が立てられ必要なサポートを受けることにより、症状の軽減や回復に繋がります。自身だけでの対応や解決が難しいと判断した場合は、本人に許可を取った上で会社の産業医などに相談しましょう。自分一人で判断せず、適切なサポートを受けることがうつ病の人にとって大切です。
以下の記事はメンタル不調者を抱えている方向けの記事ですが、このような対処法をアドバイスしても良いかもしれません。
④会社の産業医に相談する。
従業員数が50人以上の会社には産業医が在籍しています。
産業医は面談を通じて従業員の相談に乗ることで、悩みや困りごとに対するアドバイスを提供するために産業医面談を行います。産業医は医療の専門家であり、うつ病に関する専門的な支援やアドバイスを提供できます。
基本的に扱った健康情報は守秘義務となり、必要であれば上司と職場に開示して対応を促すこともできます。
一番重要なことは、産業医をうまく使い、本人と職場の環境調整していくことです。
まとめ
うつ病は誰もがなりうる病気です。もし部下や同僚がうつ病だった際には早期に対応することが重要です。上司や同僚はうつ病の人をサポートすることは可能ですが、うつ病という「病気」を治すことは難しいです。
無理をせず会社の産業医に相談することで医学的なサポートと適切な対応が得られ、復職や職場環境の調整につながる可能性があります。産業医は専門家として、労働者の健康を保ちつつ効果的なサポートを提供する役割を果たすことができます。