人事必見!産業医の職場巡視記録:大事な目的と効果的な活用方法を解説

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この記事はこのような方に向けて書いています。

・産業医の職場巡視記録の扱いについて知りたい人事・労務担当者の方

労働環境における安全衛生上の課題を特定し、改善することは業務中の事故や疾病を防ぐために非常に重要です。そのため、衛生管理者の配置に加えて産業医による職場巡視が義務付けられています。しかし、職場巡視の記録方法については法的に具体的な規定がないため、どのように記録を残すべきか悩む方も少なくありません。

この記事では、産業医による職場巡視の目的や役割、そして適切な職場巡視記録の管理方法について分かりやすく解説します。

目次

産業医による職場巡視とは

産業医の職務の一つに職場巡視があります。

労働安全衛生規則第15条では職場巡視について次のように定められています。

産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。

過重労働による健康障害の防止やメンタルヘルス対策が事業場における重要な課題となっていることから、産業医の業務をより効率的かつ効果的に行うため、労働安全衛生規則が2017年6月1日に改正されました

この改正により、これまで「毎月1回以上行うことが義務」だった職場巡視が、以下の条件を満たす場合に限り「2ヶ月に1回以上でも可」に変更されました。

職場巡視頻度の緩和が認められる条件

1.事業者の同意を得ること。

職場巡視の頻度変更は、産業医や事業者の独断では認められません。産業医の意見は、衛生委員会などで調査・審議を行った上で事業者と協議して決定する必要があります。

2.事業者が産業医に所定の情報を毎月提供すること

所定の情報とは以下の3つを指します。

①衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場などの巡視結果

 ・職場巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視日時、巡視場所

 ・「設備、作業方法、または衛生状態に有害のおそれがある」と判断した場合の対策内容

 ・その他、労働衛生対策の推進にとって参考となる内容

② ①のほか、衛生委員会の調査審議を経て事業者が産業医に提供することにした情報

 ・長時間労働者の氏名と労働時間

 ・新たに使用予定の設備名(化学物質も含む)およびその使用する業務内容

 ・従業員の休業状況

③長時間労働者の情報

 ・休憩時間を除き、1週間の労働時間が40時間を超え、かつ1ヶ月の合計が100時間を超えた場合、その従業員の氏名と超過時間の内容

産業医の職場巡視の目的

産業医の職場巡視の目的は、専門的な立場から労働環境における安全衛生上の課題を特定し、業務に関連する事故や疾病の発生を防止することです。また、この巡視は、衛生管理者や企業と産業医が意見を交わし、企業文化や現場の状況について共有する貴重な機会でもあります。産業医が企業の課題や文化を理解することで、より効果的な助言や改善提案が可能になります。

職場巡視記録について

職場巡視の際の観察ポイント

職場巡視の際にチェックする主なポイントは以下の通りです。

オフィス環境について

  • 温熱環境:温度計や湿度計の設置状況、冷暖房環境、事務所衛生基準規則の遵守状況
  • 照度:一般事務作業に必要な最低300ルクス、付随的な事務作業に150ルクス以上の照度が確保されているか
  • VDT作業環境:コンピュータを用いた作業環境の整備状況
  • トイレの衛生状況:清掃状況や清潔さの維持
  • 休憩室の衛生状況(生ごみの臭いの有無、冷蔵庫の中の食品の保存期限などが適切に管理されているか)
  • AEDや消火器の配置:適切な場所に配置されているか
  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔):職場の基本的な衛生管理が徹底されているか

喫煙対策について

  • 分煙の状況:喫煙エリアが適切に分けられているか
  • 喫煙室の衛生状況:喫煙内の清掃状況と換気の確保

防災について

  • 避難経路の安全確保:避難経路が確保され、障害物がないか
  • 設置物の固定:地震対策として、設置物がしっかりと固定されているか
  • 4S(整理、整頓、清掃、清潔):作業環境でも、整理整頓が行き届いているか

職場巡視記録の作成

職場巡視記録の作成は法的には定められていませんが、労働基準監督署の臨検の際に職場巡視が適切に行われているかを確認されることがあるので日誌や報告書のような形で記録を残しておくことが望ましいでしょう。

また、産業医の職場巡視に合わせて衛生委員会を行っている場合はその議事録に職場巡視記録をまとめるのも有効です。

記載項目

職場巡視記録には、以下の項目を記載しましょう。

  1. 巡視日時
  2. 巡視場所
  3. 実施者名
  4. 同行者の氏名および役職
  5. 指摘事項(改善の優先度を区分できるようにすると効果的です)
  6. 良好な事項(継続することが望ましい点)
  7. 対策案またはリスクアセスメント

また、産業医が記録を作成した後に、事業者や衛生管理者などの社内関係者へ回覧する際の確認欄を設けておくと便利です。

重要なのは、改善点だけでなく、良い点も積極的に指摘することです。改善点と同時に、継続すべき良好な取り組みを評価することが、職場環境の向上につながります。

なお、茨城県医師会では、このような項目を網羅した職場巡視記録のフォーマットを作成していますので、記録を作成する際の参考にすると良いでしょう。

図1

図2

図3

引用:junshi.pdf (johas.go.jp)

図4

引用:産業21-80号.indd (johas.go.jp)

職場巡視の前にチェックリストを用意すると、より効率的に進められます。チェックリストを活用することで、必要な項目を漏れなく確認できるだけでなく、巡視そのものがスムーズに進みます。

また、記録が膨大になるのを避けたい場合、チェックリストは職場巡視時にのみ使用し、その後の正式な報告書では図3や図4の形式を採用する方法もあります。このようにすることで、現場のチェックを簡潔に行いながらも、報告書は必要な情報に絞った簡潔な内容にまとめることができます。

職場巡視記録の保管について

職場巡視記録の保管は法律で義務付けられていません。 しかし、これらの記録はリスクアセスメントや安全管理に役立つ重要な資料となるため、保管しておくことが推奨されます。

参考として、衛生委員会の議事録は3年、健康診断の結果は5年の保管が義務付けられています。これに準じて職場巡視記録も3〜5年を目安に保管するのが望ましいと考えられます。

職場巡視の際の注意点

職場巡視の際の注意点として以下のような点が挙げられます。

・労働者が立ち入る場所は原則としてすべて巡視対象とすること
・巡視時は労働者と同様に適切な作業着を着用し、マスクなど保護具も同様に使用すること
・巡視者自身の安全確保のため、職場同行者や衛生管理者に同行してもらうこと
・巡視中は、作業環境や設備の確認に加え、労働者の動きや行動範囲、具体的な作業内容も可能な限り観察すること
保護具の未着用など明らかな指摘事項があれば、その場で職場同行者や衛生管理者と相談して指摘すること

まとめ

ここまで、産業医による職場巡視とその記録の取り扱いについて詳しく解説しました。職場巡視の頻度は法律で明確に定められていますが、記録や保管方法に関しては規定がないため、どのように管理すべきか悩む方も多いでしょう。本記事では、特に職場巡視記録の管理や保管方法に焦点を当て、実際に役立つポイントをご紹介しました。

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【参考文献】

1.労働安全衛生規則 | e-Gov法令検索

2.産業21-80号.indd (johas.go.jp)

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