人事労務担当者必見!産業医の守秘義務とは?職場の健康管理の重要性を解説

この記事はこのような方に向けて書いています

・産業医の守秘義務について詳しく知りたい方


・産業医の管理する健康情報についてもっと知りたいと思われている方

・企業内の健康情報についての取り扱いについて知りたい方

産業医が負う守秘義務と聞いてどんなことを想像するでしょうか?一番は社内の個人個人の健康情報かもしれません。

そのほかにどんなものが守秘義務の対象となるのは、どのような事項なのでしょうか?

社内で悩みやトラブルを抱えて、産業医に相談や話をしたいと思っている方の中には、産業医に話してしまったことで個人の情報や秘匿しておきたい内容が外部に流出してしまうことを懸念されている方もいるかもしれません。

また、企業内の人事労務担当者の中には、どの程度まで産業医に情報を共有すべきなのか、どう産業医を活用すべきなのかわからない方もいる方もいるかもしれません。

そこで、今回は、

  • 産業医の負う守秘義務を負う事実はどのような範囲か?
  • 産業医が守秘義務を負う相手はどのような範囲か?

について解説していきます。

是非、自社の産業医の守秘義務を守ってくれそうか、また各種問題についても具体例を挙げて解説していきますので、この記事で産業医の守秘義務について理解を深めてもらえれば幸いです。

自社の産業医が信用しにくいのかもしれないや、もし産業医に何かお困りなことがあればライフインベスターにお気軽にご連絡ください

目次

産業医の負う守秘義務とは?

「職務を行う過程」で知った「秘密」に守秘義務がある

産業医の守秘義務は、法律によって規定されている法的な義務になります。具体的に産業医の守秘義務については、「刑法」と「労働安全衛生法」に規定されています。

第134条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。             出所元:刑法 134条

と規定しています。

このように、産業医には「職務上知り得た健康情報などの秘密」に対して守秘義務が発生するのです。

職務上知り得たとは

「職務上知り得た」とは、産業医が職務を行う過程で知り得た情報のことをいいます。

より細かい産業医の業務等を記した労働安全衛生法にも同様の記載があります。

第105条 第65条の2第1項及び第66条第1項から第4項までの規定による健康診断、第66条の8第1項、第66条の8の2第1項及び第66条の8の4第1項の規定による面接指導、第66条の10第1項の規定による検査又は同条第3項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。 労働安全衛生法 第105条

簡単に言うと、

職場での健康診断、面接指導、検査などに関わる産業医や産業保健スタッフは、これらの活動を通じて知った従業員のプライベートな情報を他人に話してはいけない、ということです。

しかし、本人の了承を得た場合や、人の生死が関わっている場合には、この限りではないです

産業医が扱う「秘密」の定義

産業医の業務において、「秘密」とは、従業員が個人的に保持し、外部に公開されたくないと思っている情報のことを指します。これには、従業員自身が秘密にしておきたい情報だけでなく、一般的な観点から見ても秘匿されるべき情報も含まれます。

秘密の範囲

  • 主観的な秘密:従業員が個人的に他人に知られたくないと感じる情報。
  • 客観的な秘密:社会的観点から秘匿されるべきと考えられる情報。

具体例

例えば、健康情報に関しては、糖尿病や心臓病といった慢性的な疾患や、心理的ストレス、うつ病などの精神的健康状態も「秘密」として扱われます。これらは、従業員が職場での信頼関係や評価に影響を与えないように、または個人的な理由から他人に知られたくないと考えている情報です。

産業医としては、従業員から知り得たこれらの情報を厳密に管理し、無断での開示や不適切な利用を避けることが求められます。これは、従業員のプライバシーを守り、職場での健康管理を信頼性のあるものにするために不可欠です。

漏らすとは?

産業医が従業員の秘密を守る義務

「秘密を漏らす」とは、第三者に情報を開示する行為を指します。これは、不特定多数の第三者だけでなく、特定の少数の第三者への開示も含まれます。

例えば、従業員の家族も第三者にあたります。そのため、従業員の同意なしにその家族に健康情報や個人的な悩みを伝えることは、望ましくないとされています。

しかし、厚生労働省が記載している「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」にも記載があるように、生死が関わる場面や、本人の判断能力が乏しい場面ではその限りではないとされています。

情報の匿名化でも安全ではない

従業員の名前を伏せ字にするなどして匿名化したとしても、健康診断の結果や面談の内容を詳細にブログなどインターネット上で公開することは問題です。具体的な状況や進行具合が記載されている場合、それが誰の情報であるか特定される可能性があり、これも守秘義務の違反となり得ます。

産業医は、従業員から信頼される健康情報の管理者としてどんな形であれ無断での情報公開は避けるべきです。秘密の保持は、職場での信頼関係を維持し、従業員のプライバシーを保護する上で極めて重要です。

秘密の「利用」について

秘密の「利用」について

産業医が職務上知り得た従業員の秘密情報を「利用」することについて明確に理解することは重要です。ここでの「利用」とは、得られた秘密情報を基にして、何らかの個人的または第三者の利益を得るための行動を指します。

秘密情報の利用禁止

  • 定義:産業医が従業員から知り得た健康情報や個人的な情報を、その人の許可なく自己の利益や他人の利益のために使用すること。
  • 範囲:秘密情報の利用は、その情報を公開することだけに限らず、情報を基にして何か行動を起こすこと全般を含みます。

利用の具体例

産業医の場合、「利用」の例としては、従業員の健康状態や個人的な問題を、職場の人事評価に不当に影響させるような行為や、第三者に情報を提供してその情報から利益を得るような行為が挙げられます。これは、従業員の信頼を裏切り、そのプライバシー権を侵害する行為となり得ます。

産業医は、職務上知り得た情報を、従業員の健康支援や職場環境改善の目的以外で利用することが厳しく禁じられています。この原則は、従業員のプライバシーを守り、職場での信頼関係を維持するために極めて重要です。

産業医の守秘義務の範囲

①依頼者が自発的に話した場合

産業医が従業員から自発的に提供された情報、特に職務と直接関連しない個人的な情報についても、守秘義務の範囲内で扱われます。

従業員が産業医に対して信頼を置いて健康状態や個人的な問題を打ち明けた場合、それらの情報は「職務上知り得た秘密」とみなされ、厳格に保護される必要があります。たとえそれが産業医の主な業務範囲外であっても、従業員の健康管理と福祉をサポートするため、また職場内での信頼関係を構築・維持するために、産業医はこれらの情報を外部に漏らすことはできません。

従業員が産業医に健康上の懸念や個人的な問題を話す際には、その情報が適切に扱われ、秘密として守られることを期待しています。従業員は、自分の状況を理解しサポートしてもらうため、あるいは健康状態に関連するアドバイスを受けるために、産業医と情報を共有することが多いです。そのため、産業医は受け取った情報を倫理的に扱い、従業員の信頼を裏切ることなく、職場での健康と福祉の向上に貢献することが求められます。

②健康診断の結果を見た場合

産業医が従業員の健康診断結果を扱う際は、これらの情報が厳重な守秘義務によって保護される必要があります。健康診断から得られる個人の健康情報は、従業員のプライバシーに直結しており、産業医はこれを第三者に漏らすことなく、医療的サポートの提供や健康管理のアドバイスのためにのみ使用することが求められます。従業員の同意なしにこの情報を共有することは禁止されています。

③産業医面談で情報を得た場合

産業医が面談を通じて得た従業員からの情報は、同様に厳格な守秘義務の下で扱われます。この面談で共有される内容は、従業員の健康状態、職場での悩み、または個人的な問題に関するものが含まれるため、産業医はこれらの情報を第三者に漏らすことなく、従業員の健康支援や相談への対応、全体的な職場改善のためだけに使用することが必要とされています。

守秘義務が解除される例外的な場合

  1. 法律による解除: 特定の法律や条例が、産業医に対し、健康情報を開示することを義務付けている場合があります。これは通常、公衆衛生の保護や疾病の予防、治療のために必要とされる情報の共有を目的としています。
  2. 正当な理由に基づく解除: 犯罪の防止や調査のため、または従業員自身や他者の安全を守るために、秘密情報の開示が必要とされる状況がこれに該当します。例えば、従業員が重大な健康リスクに直面している場合や、職場内での安全性を確保するために必要な情報は、関連する機関や企業と共有することがあります。

これらの例外は、従業員のプライバシーを保護するとともに、より大きな公共の利益や安全を確保するためのバランスを取ることを目的としています。産業医は、これらの例外的な状況を正確に理解し、適切な判断を下す責任があります。

産業医が守秘義務違反したら負うペナルティ

産業医が守秘義務を違反した場合、重大なペナルティに直面することがあります。これには以下の二つが含まれます。

  1. 刑法違反: 守秘義務の違反が刑法に抵触する行為と見なされた場合、産業医は刑事訴追の対象となり得ます。これは、機密情報を不正に開示したり、個人のプライバシーを侵害したりした場合に適用されることがあり、罰金や懲役刑に処される可能性があります。
  2. 民事上の損害賠償責任: 守秘義務違反により個人や企業に損害が発生した場合、産業医は民事訴訟の対象となり、損害賠償を支払う義務を負うことになります。これには、漏洩した情報によって生じた精神的苦痛や名誉毀損、経済的損失などが含まれます。

これらのペナルティは、産業医の職業的な評価やキャリアに深刻な影響を及ぼすだけでなく、関連する組織や企業に対しても信頼性や評判の損失を招くことがあります。そのため、産業医は、従業員の情報を厳密に守ることの重要性を常に認識し、倫理的な基準を遵守することが求められます。

ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。

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