部下がうつ病になると上司の評価は下がるのか~労働災害の責任はどこにある?~

この記事はこのような方に向けて書いています。

・部下がうつ病だと判明した方

・部下がうつ病を発症している可能性がある方

身体的な怪我を負ったり病気になったりしていなくても過度のストレスや長時間労働などにより通常の業務が行えなくなることがある、その原因はうつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題であり、きちんと病名がつくれっきとした疾患であるということは世間に広く周知されるような時代になりました。となると、従業員がうつ病になった時に上司からパワハラを受けていた、人間関係に問題を抱えていた、過労状態だったなどその原因を周囲から予想されるようになり、その責任が上司にあると思われるのではないか、と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

この記事は部下がうつ病だと分かったとき、上司の評価は下がるのかというテーマで書き進めています。部下がうつ病になり、今後が不安な方はぜひ記事をご覧ください。

目次

職場でうつ病になる原因は何か

うつ病になる原因は様々です。

1.業務によるストレス・プレッシャー

業務量が多すぎる、求められるクオリティが高すぎる、達成目標が高すぎるなど業務内容が原因であるケースがあり、これは職場で起こるうつ病の原因の中で一番多いパターンになります。真面目な性格、完璧主義であるほど自分を追い詰めてしまう傾向があり、うつ病も発症しやすくなります。

2.長時間労働

長時間労働により疲労が蓄積すること、睡眠時間が確保できないこともうつ病の原因となります。本人が平気だと思っていても、ダメージは確実に蓄積されていき、うつ病という目に見える形で表れることになります。

3.上司からのハラスメント

セクハラ、パワハラなど上司から受けたハラスメントもうつ病の原因になりえます。同じ内容でも言われた側がどうとらえるかで扱いは変わりますが、当人がハラスメントを受けた、精神的苦痛を感じたと思ったらそれはハラスメントになります。

4.職場の人間関係の悪化

「同僚に無視された」、「同僚に悪口を言われた」など職場の人間関係が原因でうつ病になるケースもあります。上司からのハラスメントと合わせた職場における対人関係がうつ病の原因である場合、適切な対応をしないと休職して十分に休養を取った後に復職しても人間を信用できなくなり、再度業務に支障をきたす可能性があります。

5.仕事以外の原因

家庭内でトラブルがあった、親しい人を亡くした、身体的な疾患が見つかり精神的に疲弊している、離婚したなど業務外の原因でうつ病を発症しているケースもあります。この場合、上司及び企業に責任はありませんので事実関係ははっきりさせておく必要があります。

6.職場のサポートシステムの欠如

職場におけるサポートシステムの不備や欠如も、うつ病の原因となり得ます。たとえば、メンタルヘルスに関する相談窓口がない、問題が発生したときに適切な対応がなされない、業務負担を軽減する制度が機能していないなど、職場環境そのものが従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす場合があります。企業としては、従業員が安心して働ける環境を整えることが重要です。

7.職場の文化と風土

職場の文化や風土も従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。たとえば、過度な競争を強いる文化、失敗を許さない風土、常に高い成果を求める圧力などがある場合、従業員は持続的なストレスにさらされることになります。また、オープンでないコミュニケーション文化が存在する職場では、問題を抱えた従業員がサポートを求めることが難しくなり、うつ病の発症リスクが高まります。

部下がうつ病になった責任は上司にあるのか

うつ病になる原因は様々ですし、1つであるとも限りません。通常はどの原因がどのくらいの割合で発症に影響したのかを詳しく調査したうえで対応が決まります。

この時、上司には部下に対して、業務内容だけではなく部下のメンタルヘルスのマネジメントを行うことが求められているので、たとえパワハラなどの直接的な原因になっていなかったとしても、安全配慮義務を果たせていないということで、責任の一部は上司にあるとされます。パワハラがうつ病発症の主な原因であればもちろん責任はパワハラをした上司にあるとされます。

(補足)安全配慮義務とは

労働契約法第五条において

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働契約法第五条

と定められています。これにより、事業者は労働者が安全かつ健康に働けるよう職場環境を整備したり、メンタルヘルスの不調に対する対策を行ったり、事故防止に努めたりすることが求められています。

部下がうつ病になると上司の評価は下がるのか

結論から言うとケースバイケースです。また、そのケースによるとともに企業にもよります。この場で絶対にこうなるとは言えません。ただし、一般的には安全配慮義務があるとはいえパワハラなど直接的な原因になっていなければ評価が下がることはないでしょう。

しかし、評価が下がる可能性が低いとはいえ、上司として部下のメンタルヘルスに対する適切な対応は重要です。部下の健康を守ることは、上司の責務であり、結果的に職場全体のパフォーマンスや雰囲気にも影響を与えるからです。では、具体的に上司と職場が取るべき取り組みについて詳しく見ていきましょう。

上司が取るべき具体的なアクション

  • 定期的な面談を通じて部下の状態をチェックすること
  • 職場環境の改善提案を行うこと
  • メンタルヘルスに関する教育を受けること

などが考えられます。

また、問題が発生した場合には、迅速に専門家の支援を求めることや、問題の根本原因を特定し、適切に対処するための環境を整備することも重要です。

うつ病予防のための職場環境の整備

職場でのうつ病予防には、ストレスを減らす環境づくりが重要です。定期的に職場のストレス要因を評価し、業務量の調整や人間関係の改善を図ることが求められます。また、リフレッシュできるスペースの設置や、フレックスタイムやリモートワークの導入によるワークライフバランスの推進も効果的です。これにより、従業員が安心して働ける環境が整います。

メンタルヘルスに関する教育とトレーニング

上司と従業員向けのメンタルヘルス教育は、うつ病の予防に役立ちます。上司は部下のメンタルヘルスを早期に察知し、適切にサポートできる知識を身につける必要があります。従業員にはセルフケアやストレス管理の方法を教え、ピアサポートの体制を整えることで、職場全体で支え合う環境を作ります。さらに、定期的なフォローアップやスーパービジョンを行うことで、学んだスキルが実際に活用されるよう支援します。

まとめ

部下がうつ病になったとき上司は安全配慮義務は負っていますが、直接加害していなければ基本的に評価が下がることはないでしょう。うつ病になった部下はこれから休職、復職と山場が続きますので、上司として必要な範囲で適切なサポートを行えるよう行動していきましょう。

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【参考文献】

労働契約法 | e-Gov 法令検索

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