この記事はこのような方に向けて書いています。
・従業員のメンタルヘルスの問題に悩む人事労務担当者の方
・ストレス軽減策に興味のある方
現代社会では、多くの人が仕事のプレッシャーや人間関係の悩み、長時間労働によるストレスを抱えています。ストレスが蓄積すると、集中力の低下や疲労感だけでなく、うつ病や不安障害といったメンタル不調を引き起こすこともあります。
特に職場環境はストレスの大きな要因の一つです。過剰な業務負担やハラスメント、評価制度への不安が原因で、心身に悪影響を及ぼすケースが増えています。しかし、企業側が適切な対策を講じることで、従業員のメンタル不調を未然に防ぎ、健康的な職場環境を作ることが可能です。
本記事では、ストレスがメンタル不調に与える影響を詳しく解説するとともに、企業や従業員が実践できる具体的なストレス対策を紹介します。心身ともに健やかに働ける環境づくりのために、ぜひ最後までご覧ください。
ストレスがメンタル不調に与える影響
日々の仕事や人間関係、生活環境などから受けるストレスは、心と体にさまざまな影響を与えます。特に、慢性的なストレスはメンタルの不調を引き起こしやすく、仕事や日常生活にも支障をきたすことがあります。ここでは、ストレスが脳や体に及ぼす影響と、代表的なメンタル不調の症状について詳しく解説します。
ストレスが脳や体に及ぼす影響
ストレスを受けると脳の底部にある視床下部が反応して、下垂体と副腎からのホルモン分泌が促進され、心拍数の増加、血圧の上昇、食欲の低下などが生じます。
最近の研究でストレスは大脳皮質前頭前野にも影響を及ぼし、高度な精神機能を奪ってしまうことが分かっています。ストレスは、感情や衝動を抑制している前頭前野の支配力を弱めるため、視床下部などの支配が強まった状態になり、不安を感じたり、普段は抑え込んでいる衝動(欲望にまかせた暴飲暴食や薬物乱用、お金の浪費など)に負けたりしてしまいます。これは、ストレスによりノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出され神経細胞間の活動が弱まることで、副腎が血液中に放出したストレスホルモンであるコルチゾールが脳に到達した結果起こります。
また、これらの変化はストレスがなくなれば回復しますが、慢性的なストレスにさらされると脳の一部が萎縮し、回復できなくなります。過去のストレス経験によって脳内に変化が生じると、以後のストレスに対してさらに脆弱になり、うつ病や依存症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害につながると考えられています。
ストレス症状
ストレスにさらされると以下の症状が現れることがあります。
・思考力や集中力が著しく落ちる
・ネガティブな思考に陥りやすくなる
・心拍数の上昇、血圧の変動、消化不良(交感神経が働きすぎた場合)
・疲労感や慢性的なだるさ(副交感神経がうまく機能しなくなった場合)
メンタル不調の代表的な症状
うつ病や適応障害
ストレスが長期間続くと、脳の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分泌が減少し、気分が落ち込みやすくなります。その結果、うつ病や適応障害を発症することがあります。
うつ病の主な症状には、無気力・意欲の低下、興味の喪失、ネガティブ思考などがあり、重症化すると日常生活を送ることが困難になるケースもあります。また、適応障害は、特定のストレス要因によって不安や抑うつ気分が強まり、仕事や学校に適応できなくなる状態を指します。
不安障害・パニック障害
ストレスが過剰にかかると、脳の「扁桃体」という部分が過剰に反応し、不安を感じやすくなります。その結果、不安障害やパニック障害を発症することがあります。
不安障害では、理由のない不安感や恐怖感によって落ち着かない状態が長期間続きます。一方、パニック障害では、突然の動悸や息苦しさ、めまいなどのパニック発作が起こり、外出や人と会うことが怖くなることもあります。
睡眠障害や倦怠感
ストレスが原因で自律神経が乱れると、寝つきが悪くなったり、途中で何度も目が覚めたりすることがあります。これが慢性化すると、睡眠不足が続き、日中の倦怠感や集中力の低下を引き起こします。
さらに、睡眠の質が悪化すると、疲労が十分に回復せず、慢性的な疲労感や頭痛、胃腸の不調などの身体症状も現れることがあります。
職場環境によるストレス要因とは?
現代の職場では、多くの従業員がさまざまなストレスを抱えています。特に、長時間労働や過重労働、人間関係のトラブル、評価制度やキャリアに関する不安などは、メンタルヘルスに大きな影響を及ぼします。ここでは、職場環境における代表的なストレス要因について詳しく解説します。
長時間労働・過重労働
長時間労働や過重労働は、職場における代表的なストレス要因の一つです。仕事量が多すぎる、締め切りが厳しい、休みが取れないといった状況が続くと、肉体的・精神的に大きな負担がかかります。長時間労働は以下のような影響をもたらします。
疲労の蓄積:睡眠不足や休息不足により、疲労が回復せず、積み重なることで集中力や判断力が低下し、仕事の効率が悪化します。
ワークライフバランスの崩壊:プライベートの時間が削られ、家族や友人との関係が希薄になり、孤独感が強まることがあります。
健康リスクの増加:先ほど触れたように長時間労働は、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を促し、高血圧、心疾患、うつ病などのリスクを高めます。
長時間労働を防ぐためには、業務の適正な割り振りや効率的な働き方の推進、休息時間の確保が必要です。企業側も従業員の健康を考え、労働時間の管理を徹底することが求められます。
人間関係のトラブル・ハラスメント
職場での人間関係のストレスは、精神に大きな負担を与え、仕事へのモチベーションを低下させる原因となります。特に、上司や同僚とのコミュニケーション不足、パワハラ・セクハラといったハラスメントは、深刻なメンタル不調を引き起こすことがあります。
以下のようなケースが想定されます。
上司や同僚との対立:意見が合わない、指示が曖昧、過度なプレッシャーをかけられる
ハラスメント(パワハラ・セクハラ・モラハラ):人格否定や不適切な発言・行動を受ける
チームワークの欠如:協力体制が整っていないことで、孤独感や不公平感が強まる
これらの問題を防ぐためには、オープンなコミュニケーションの促進や、ハラスメントを防ぐための研修、相談窓口の設置が重要です。企業は従業員が安心して働ける環境を整備し、問題が発生した際には適切に対応する必要があります。
評価制度やキャリアに対する不安
職場での評価制度やキャリアに対する不安も、ストレスの大きな要因となります。「努力が正当に評価されない」「昇進・昇給が見込めない」「将来のキャリアが不透明」といった不安は、モチベーションの低下につながります。
具体的には以下のケースが考えられます。
不公平な評価:上司の主観や職場の慣習によって評価が決まると、不満が募りやすくなります。
成果主義のプレッシャー:結果が全ての評価基準になっていると、従業員は常にプレッシャーを感じ、心身の負担が増します。
キャリアの不透明さ:将来的な昇進の見込みがない、スキルが評価されない環境では、働く意欲が低下しやすくなったり、強い不安を感じたりします。
これらの問題に対処するためには、透明性のある評価制度の導入や、キャリア支援制度の充実、従業員との定期的な面談の実施などが有効です。
メンタル不調を防ぐ職場での対策
職場でのストレスに対して、企業・個人それぞれが適切な対策を講じることが重要です。ここでは、企業・個人・管理職それぞれの立場での具体的なストレス対策を紹介します。
企業が取り組むべきストレス対策
1.定期的なストレスチェック制度の導入
ストレスチェック制度は、従業員のメンタルヘルスの状態を把握し、早期対応を可能にする重要な取り組みです。厚生労働省では50人以上の事業場に実施を義務付けていますが、規模に関わらずすべての企業での導入が望ましいでしょう。
2.メンタルヘルス研修の実施
メンタルヘルスへの理解を深めるため、定期的な研修が効果的です。ストレス対処法やメンタル不調の兆候についての知識を身につけることで、社員一人ひとりが自身の健康を守る力を養えます。また、管理職向けの研修では、部下のメンタルヘルスケアや適切な声かけの方法を学び、職場全体のサポート体制を強化できます。
3.相談窓口の設置
従業員が安心して悩みを相談できる環境づくりが重要です。社内外の相談窓口を設置することで、メンタル不調の予防と早期発見が可能になります。窓口の利用を促すため、プライバシーを確保し、気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけましょう。産業医の活用も効果的な対策の一つです。
個人でできるストレス対策
1.リラックス法
日常的にリラックスする習慣を持つことで、ストレスを軽減できます。深呼吸も副交感神経を活性化させるので有効です。
2.適度な運動と食生活の改善
ストレス耐性を高めるには、運動や栄養バランスの取れた食事が効果的です。
軽いジョギングやストレッチをすることで、ストレスホルモンの分泌を抑え、気分を安定させることができます。また、バランスの取れた食事を心がけ健康的な体を作るとストレスにも強いメンタルを維持できます。
3.睡眠の質を高める工夫
睡眠不足はメンタル不調の大きな要因となるため、質の良い睡眠を確保することが重要です。寝る前のスマホ・PC使用、カフェインやアルコールの摂取は控え、寝る前にリラックスする習慣を作りましょう。また、毎日同じ時間に寝る習慣をつけ、体内リズムを整えるのも効果的です。良質な睡眠をとることで、ストレス耐性が向上し、仕事のパフォーマンスも向上します。
管理職の役割と職場のサポート体制
1.部下のストレスサインの見極め
管理職は、部下のメンタルヘルスを守る重要な役割を担っています。ストレスが溜まっているサインを見逃さないことが大切です。表情や態度の変化(無表情、イライラしやすい)、
遅刻・欠勤の増加、業務ミスや集中力の低下などのサインが見られたら、早めに声をかけ、適切なサポートを行いましょう。
2.風通しの良いコミュニケーションの促進
職場の人間関係がストレスの原因にならないよう、オープンなコミュニケーションの場を作ることが重要です。定期的な1on1ミーティングを実施するのもよいでしょう。部下が安心して相談できる環境を整えることで、ストレスを軽減しやすくなります。
3.ワークライフバランスを考えた業務設計
仕事の負担を適切に管理し、従業員が無理なく働ける環境を整えることも、管理職の重要な役割です。業務量の適正な配分、長時間労働の防止、在宅勤務やフレックスタイム制度の活用、休暇の取得の促進などを進めましょう。

まとめ
ストレスを放置すると深刻なメンタル不調に発展する可能性があることは記事を通してお分かりいただけたかと思います。メンタル不調に発展する前に予防することが何よりも大切です。これには企業と個人が協力してストレス対策を講じることが最も効果的です。ストレスの影響を最小限に抑え、健全な職場環境を維持するために、記事で紹介した具体策にぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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【参考文献】