この記事はこのような方に向けて書いています。
・ストレスチェックを受けたが、結果の見方がよく分からない方
・企業の人事・労務担当者として、結果を職場改善に活用したい方
・部下や同僚のメンタルヘルスを支える立場にある管理職の方
「ストレスチェックの結果が届いたけど、グラフや数値の意味が分からない」
「社員のストレス状況は見えたが、それをどう活かせばいいのか悩んでいる」
こうした声は、ストレスチェックを導入している多くの企業で聞かれるものです。ストレスチェックは、従業員の心の健康状態を見える化する大切な制度です。しかし、その「読み方」を正しく理解しないと、せっかくの情報も活用されずに終わってしまいます。
この記事では、ストレスチェックの結果を正しく読み取るためのポイントと、実際に人事施策や職場改善へつなげる方法をわかりやすく解説します。
ストレスチェックの目的と仕組み
ストレスチェック制度は、2015年の改正労働安全衛生法に基づき、従業員50人以上の事業所に義務付けられている制度です。
主な目的は以下の通りです。
- 従業員本人が自分のストレス状態を把握する
- 高ストレス者に医師面接の機会を提供する
- 組織全体の職場環境改善のためのデータを集める
質問票は「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」が一般的に使用され、心理的負荷、仕事のコントロール感、人間関係などが評価されます。


結果票の見方
個人のストレスチェック結果は、主に以下の3つの指標で構成されます。これらは単独で見るのではなく、組み合わせて全体像を把握することが重要です。
①ストレスの原因(仕事の負担や人間関係など)
ここでは、従業員が職場でどのようなストレス要因にさらされているかを分析します。
たとえば、「業務量が多すぎる」「自分の裁量で仕事が進められない」「上司や同僚との関係が悪い」といった状況は、ストレスの原因としてよく見られるものです。
この項目が高い数値を示している場合は、日々の業務環境そのものがストレスの根本的な要因となっている可能性があります。そのため、業務配分やコミュニケーションの見直しが求められることもあります。
②ストレス反応(身体・精神の不調)
この項目では、実際に本人の心や体にどのような反応が起きているかを評価します。
代表的な反応には、「イライラしやすい」「眠れない」「集中力が続かない」「気分が落ち込む」などが挙げられます。これはいわばストレスによる“影響の深刻度”を示す指標です。
仮にストレスの原因が軽微でも、ここで高い反応が出ていれば、個人のストレス耐性や健康リスクが表れている可能性があり、注意が必要です。
③周囲の支援(上司・同僚からの支援感)
最後に注目すべきは、本人が「どれだけ支えられていると感じているか」です。
「困ったときに相談できる上司がいる」「職場の同僚が助けてくれる」といったサポート感があるかどうかが、ストレスの緩和に大きく影響します。
逆に、支援が不足していると感じていると、ストレスの影響が深刻化しやすくなることがわかっています。心理的安全性の低い職場では、些細な出来事も過大に感じやすくなるため、組織としての支援体制が問われる部分です。
これら3つの指標は、それぞれが独立しているわけではなく、互いに影響し合っています。
たとえば、「ストレスの原因」が強く、「ストレス反応」も高いのに、「周囲の支援」が少ない場合は、特に注意が必要です。このような状態は、高ストレス者として医師の面接指導が推奨されるケースに該当する可能性があります。
数値だけを機械的に見るのではなく、「その背景にどんな職場の課題があるか」という視点で読み取ることが、結果を職場改善に活かす第一歩となります。
高ストレス者の判断基準と対応
厚生労働省が示す基準では、「ストレスの原因が強く、かつストレス反応が高い(①かつ②)」場合、または「ストレス反応が特に高い(②)」場合に、高ストレス者と判定されます。
ストレスチェックの結果で「高ストレス者」と判定された従業員には、迅速かつ丁寧な対応が求められます。対応を怠ると、本人のメンタル不調が悪化するだけでなく、職場全体の信頼や安全性にも悪影響を及ぼす可能性があります。
以下に、高ストレス者に対して企業が取り組むべき基本的な対応例をご紹介します。
①本人へ結果のフィードバックを丁寧に行う
まず重要なのは、本人に結果をしっかり伝えることです。ただ数値を見せるのではなく、本人が自分のストレス状態を冷静に理解できるように、言葉を選びながら丁寧に説明することが大切です。
例えば、「この数値は、最近の疲れや気分の浮き沈みが影響しているかもしれませんね」といった共感的な言い回しを使うことで、相手も受け入れやすくなります。フィードバックの場では、責めるのではなく“気づき”を促す姿勢が大切です。
②医師による面接指導の希望を確認する
高ストレスと判定された従業員には、産業医による面接指導を受ける権利があります。これは労働安全衛生法にもとづく制度で、本人が申し出た場合には企業は原則として対応する義務があります。
ただし、本人が希望しない場合には無理に勧めるべきではありません。まずは「必要であれば産業医との面談も可能ですが、ご希望はありますか?」といった形で、選択肢として提示することが望ましいです。
医師との面接を通じて、より専門的な助言やケアにつなげることが可能になります。
③業務内容や勤務時間の調整など、早めの配慮を検討する
ストレスの原因が明らかに仕事に起因している場合には、早期の業務調整や働き方の見直しが必要です。
たとえば、
- 一時的に業務量を軽減する
- 締切のプレッシャーを減らすような役割変更
- 勤務時間の柔軟化やテレワークの活用
など、無理のない範囲でできる職場内での配慮がポイントになります。
また、部署異動や上司との関係改善など、より構造的な対応が必要なケースもあります。こうした判断には、産業医や外部専門家との連携が有効です。
集団分析結果の読み方と活用法
ストレスチェックは個人のメンタル状態を知るだけでなく、組織全体の健康状態を「見える化」できる重要なツールでもあります。そのために欠かせないのが、部署や職種単位での集団分析です。
集団分析では、複数の従業員の回答結果を統計的に集計し、部門ごとのストレス傾向を把握します。これにより、表面的には見えづらかった職場の課題や強みが浮き彫りになり、組織改善に役立てることができます。
読み解きのポイント
①ストレスの高い部署や時期を特定する
集団分析によって、特定の部署だけストレス反応が高い、あるいはある時期に急増しているといった傾向が見つかることがあります。
たとえば、
- 繁忙期にストレスが急上昇している
- 特定のチームで上司からの支援感が極端に低い
- 若手社員が多い部署で「仕事のコントロール感」が不足している
といったデータは、人員配置や指導体制の見直しにつながるヒントとなります。
②他部署との比較で、改善の優先順位を判断する
複数部署のデータを横並びで見ることで、相対的にどの部署がリスクが高いかを判断できます。
すべての課題に一度に手をつけるのは現実的ではないため、優先順位をつけることが重要です。
例えば、
- 「反応スコア」は高いが「支援感」も高い部署 → 一時的なストレスと想定、経過観察
- 「反応スコア」も「支援感」も悪い部署 → 早急な介入が必要
というように、複数指標を組み合わせて評価することがポイントです。
③支援の少ない組織文化を可視化する
集団分析では、「上司の支援」「同僚の支援」といった項目が、組織文化やコミュニケーションの質を示す指標になります。
これが継続的に低い部署は、表面上は問題がなくても、相談しづらい雰囲気や孤立感のある職場である可能性があります。そうした傾向は、離職率の上昇やメンタル不調の予備群の温床となり得るため、注意が必要です。
分析結果を職場改善にどう活かすか
集団分析で得られた定量データは、単なる報告書で終わらせず、実際のアクションにつなげることが最も重要です。
活用の具体例
- 管理職へのフィードバック研修
- コミュニケーション促進を目的とした1on1の導入
- メンタルヘルスに関する社内アンケートの再実施
- 高ストレス部署への重点的な人員・業務配分の見直し
また、前年との比較や傾向の変化を見ることで、施策の効果検証や改善も可能になります。

まとめ
ストレスチェックは、単なる義務ではなく、職場の健康度を見直すための貴重なデータです。
今回の記事のポイントを簡潔におさらいしましょう。
- 結果票では「ストレスの原因」「反応」「支援」の3点を見る
- 高ストレス者には適切な対応を行い、安心できる環境を提供する
- 集団分析を通じて、組織全体の改善につなげる視点を持つ
読み方を正しく理解し、社内で共有・活用していくことが、メンタルヘルス対策だけでなく、従業員の定着率や生産性向上にもつながっていきます。
専門家のサポートでストレスチェックを職場改善に活かすなら
ストレスチェックの結果を正しく読み取り、組織として効果的に活用するには、専門家のサポートが不可欠です。
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