この記事はこのような方に向けて書いています。
・健康経営の取り組みを進めたいが、特定保健指導などの具体的な法的義務に関して不安がある方
・特定保健指導を適切に実施するための知識がほしい方
近年、企業や保険者に対する健康管理の重要性が増しています。特に「特定保健指導」は、メタボリックシンドロームや生活習慣病を予防するための重要な取り組みです。しかし、特定保健指導は誰に対して義務化されているのかが分かりづらい点もあります。この記事では、そもそも特定保健指導とは何なのか、その義務を負うのは誰なのかについて解説しています。
特定保健指導とは?
特定保健指導とは特定健康診査とセットで行われます。メタボリックシンドロームに着目した特定健康診査を行い、生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善が必要と判定された人に対しては特定保健指導を行います。特定保健指導の判定基準はメタボリックシンドロームの診断基準とは異なります。参考までに横浜市の特定保健指導対象者の判定基準を示します。

引用:https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/kenko/sidou.html
横浜市 特定保健指導対象者判定の流れ
特定健診・特定保健指導の対象者
特定健診・特定保健指導の対象となるのは40歳以上75歳未満の医療保険加入者です。
特定保健指導の内容
特定保健指導では、医師や保健師、管理栄養士らによって対象者一人ひとりに合わせた生活習慣を見直すためのアドバイスなどを行われ、リスクの程度(血圧、血糖、脂質、喫煙歴など)に応じて「動機付け支援」または「積極的支援」の2つに分けられます。
①動機付け支援
対象者が自分の健康状態を理解し、生活習慣を振り返りながら、改善のための具体的な計画を立てられるようになること、そして、その計画をすぐに実践に移し、長続きするようにやる気を引き出すことを目指した支援です。
②積極的支援
「動機付け支援」に加えて、定期的にサポートを続けることで、生活習慣を改善するための目標を決め、その目標を達成するために実際に取り組みながら、健康的な生活が続けられることを目指した支援です。
特定保健指導の流れ
特定保健指導を受けることが決定する
↓
【初回面接】
保健師などによる面接支援により対象者が自らの生活習慣を振り返り、行動目標を立てます。
↓
【3か月後評価】
立てた行動目標を達成できているかなどを保健師らが評価します。
↓
【次年度健診結果による評価】
この結果から次年度の特定保健指導の対象となるかが判断されます。
積極的支援の対象となった場合は、3か月以上の継続的支援が初回面接後に行われます。
〈取り組み例〉
- 習慣付け ex)体重・腹囲測定の記録
- 食生活 ex)食事記録、栄養教室への参加
- 運動 ex)ウォーキングの実施
特定保健指導の実施義務
特定保健指導は保険者に実施義務があります。一方で、対象者に対しては受診は義務ではありません。個人の意思で受信するか否かを決めることができます。
*保険者…医療保険制度の運営、実施主体。健康保険組合、全国健康保険協会(協会けんぽ)、市町村国保、国民健康保険組合、共済組合など。
事業者には、労働安全衛生法により健診の実施は義務付けられていますが、保健指導の実施は努力義務となっています。
そのため、保険者が事業者に対して特定保健指導を行うように働きかけても、事業者が実施しない場合は、保険者が実施する必要があります。
この記事を読んでいる方は基本的に事業者の立場にいる方だと思いますので、事業者向けにまとめると、特定保健指導の実施は努力義務です。
努力義務は義務ではなく、違反したとしても罰則は科せられません。しかし、努力義務を怠った場合は、努力義務違反として損害賠償を請求されることもありますので、規定の内容を守るよう努めることが大切です。
また、特定保健指導の実施義務は保険者のみにあるとはいえ、確実に実施するためには、事業者や健診対象者の理解は不可欠です。健診の確実な実施とデータの提供、従業員への健診と保健指導の受診促進などにも努めましょう。
ちなみに、対象者については先ほど説明した通り受診は義務ではなく、個人の意思による参加となります。そのため事業者は、従業員が特定保健指導を受けるための時間の賃金を負担する義務は負いません。しかし、受診が自由意志とはいえ、健康を守るためには対象者の積極的な受診が肝要です。受診を促すためにも就業時間中の特定保健指導に要した時間の賃金を手当として支給するなどの工夫をするのもよいかと思われます。
参考までに厚生労働省が事業者団体・関係団体の長宛てに出した「特定健康診査等の実施に関する協力依頼について」には、「特定保健指導等を受けるための機会の拡充や実施率の向上は、労働者の健康の保持増進につながり、医療費適正化等を通じて事業者の保険料負担にも関係することから、事業者におかれては、就業時間中の特定保健指導に要した時間の賃金等の取扱いについて、特段の配慮をいただき、協力いただきたい」との記載があります。

まとめ
特定保健指導は事業者にとっては実施は努力義務ではありますが、生活習慣病の予防と健康管理の一環として重要なものとなっています。健康診断をもとに実施される特定保健指導を通じて、生活習慣病の予防や改善を目指すことができ、結果的に企業の健全な運営や従業員の生産性向上にもつながります。
特定保健指導に関連して産業医は専門知識を用いて健康経営をサポートすることができます。また、企業の健康経営を支援するだけでなく、従業員のメンタルヘルスや職場環境の改善にも寄与します。
企業は、特定保健指導の義務を果たすだけでなく、産業医を活用して健康管理の質を向上させることで今後の労働環境の改善や業績向上につなげることができます。
ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。
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【参考文献】
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/1.html#section2
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000193458.pdf
https://sangyoui-navi.jp/blog/221
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/kokuho/kenko/sidou.html