この記事はこのような方に向けて書いています。
・従業員の特定保健指導受診率を向上させ、健康経営を推進したい企業の人事・健康管理担当の方
・従業員の健康意識に悩んでいる企業の人事・健康管理担当の方
特定保健指導は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の予防や重症化を防ぐために特定健康診査と連携して行われる制度で、従業員の健康維持と生活習慣病の予防において重要な役割を果たしています。しかし、多くの企業では特定保健指導の対象者がいても、受診率が思うように伸びず、その効果を十分に発揮できていないという状況です。
本記事では近年の特定保健指導の受診率と受診率を上げるための取り組みについて紹介します。ぜひ、自社の健康経営推進にお役立てください。
特定保健指導の受診率
まず、特定保健指導の受診率とは特定健診の結果を踏まえて特定保健指導の対象となった人の中で実際に特定保健指導を受けた人の割合を言います。
2022年度の特定健康診査の対象者数は約5,192万人、受診者数は約3,017万人であり、特定健康診査の実施率は58.1%でした。これは2021年度と比較しても1.6ポイント向上しており、特定健診については高水準とまでは言えませんが比較的高い割合で実施されています。特定健診を受けた人の中で2022年度の特定保健指導の対象者数は約512万人、特定保健指導を終了した人は約135万人であり、特定保健指導の実施率は、26.5%でした。2021年度と比較して1.9ポイント向上してはいますが、実施率は低いと言わざるを得ません。
特定健診と特定保健指導の受診率はコロナ禍の影響を受け2020年度に一度低下しているものの、年々上昇し続け2022年度は最高値を記録したので健康に対する意識は少しずつ向上しています。
受診率が低い原因
従業員側の要因
- 時間や手間に関する問題
忙しくて指導を受ける時間が取れなかったり、わざわざ指導を受けるという手間が負担になっていたりするケースがあります。特に、長時間労働や不規則な勤務体系の従業員は受診する時間を確保しにくい傾向があります。
- 特定保健指導の必要性への理解不足
自分の健康リスクや特定保健指導の目的を十分に理解していない従業員は、指導を無駄だと捉えていることが多いです。
企業側の要因
- 啓発不足や情報の周知の問題
特定保健指導の内容やメリットを社内で十分に伝えられていないケースも多いです。
- 組織内でのフォロー体制の欠如
特定保健指導を受けるにあたって職場が抜けた穴をフォローできなければ指導を後回しにしてしまいがちです。
受診率向上が企業にもたらすメリット
1. 生活習慣病の予防
特定保健指導は、主に生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)の予防を目的としています。これらの疾患は、重症化が進むと重大な疾患を引き起こす可能性があります。脳や心疾患につながった場合、長期休職や早期離職を余儀なくされる可能性があります。
特定保健指導を受けることで、従業員は生活習慣を見直し、早期の段階で健康リスクを軽減することができます。結果的に離職リスクが低下し、企業の人材資源を守ることになります。
2. 企業の生産性向上
従業員の健康状態は、企業の生産性に直結します。慢性的な疲労感や体調不良は、業務効率の低下や集中力の欠如を引き起こします。一見すると体に症状が出ていないように思えてもじわじわと体調不良が積み重なっていきます。一方、生活習慣病の予防や改善に成功した従業員は、仕事への集中力やパフォーマンスが向上し、欠勤の頻度も低くなります。
3. 健康経営優良法人認定への貢献
健康経営優良法人認定制度は、経済産業省が推進する制度で、従業員の健康管理に積極的に取り組む企業を評価するものです。この認定を受けると、企健康経営を実践する企業として企業イメージが良くなり、採用活動や取引先との関係構築で有利になります。また、
健康経営優良法人に認定される企業は、持続可能な成長を重視していると見なされ、投資家からの評価も向上すると考えられます。
特定保健指導の受診率は、この認定制度における重要な評価基準の1つです。認定を目指す企業は、受診率を高めることも必要です。
特定保健指導の受診率を向上させる方法
1. 業種特有の課題を抽出し、対策をする
業種によって課題になる部分は異なります。それらに対して個別に対策を取ると受診率向上につながります。
例:建設業などの現場業務にあたる従業員
【課題】
連絡や特定保健指導を行うことができる時間帯が限られる。
【対策】
1.メールでのやりとりを可能とするために申込時にメールアドレスを収集する
2.連絡可能な時間帯を申告してもらう
3.特定保健指導の実施が難しい時期は電話や手紙でフォローを行う
2. インセンティブを設定する
特定保健指導に対する関心や意欲を高めるために、様々なインセンティブの設定を行うのも有効です。
例:・特定保健指導対象者に対するクオカードや図書カード等の金銭的なインセンティブ
・対象者が所属する部署に対する表彰制度
・特定保健指導の取組の内容に応じて契約単価を設定する
3. 初回面接を特定健康診査当日に実施する
初回面接のための日程調整や当日の移動が不要になるので指導を受けるハードルが下がります。 また、特定健康診査当日は健康に対する意識が高まっているので受診率は向上すると考えられます。

まとめ
特定保健指導の受診率向上は、企業の健康経営において重要な課題であり、従業員の健康維持と企業の今後の成長に直結します。
受診率が低い原因には、従業員の時間的負担や理解不足、企業側の啓発不足やフォロー体制の欠如など、さまざまな要因がありますが、これらの課題に対する適切な対策を講じることで、受診率を大きく改善できます。
特定保健指導を通じて、生活習慣病の予防や、従業員のパフォーマンス向上を実現することは、健康経営優良法人認定への貢献にもつながります。インセンティブの提供や業種特有の課題解決、初回面接の工夫など、具体的な取り組みを導入することで、従業員の健康意識を高め、受診率向上を目指しましょう。
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【参考文献】