この記事はこのような方に向けて書いています
・シニア従業員の健康管理や労働災害対策をしたいと考えている人事・労務担当者の方
・シニアの多い企業で産業医をこれから雇おうと考えている人事・労務担当者の方
・シニアの労働災害対策のために何かしらの方法を考えようとしている方
シニア世代と聞くとどのようなことを思い浮かべるでしょうか?世界保健機関(WHO)の定義によると、65歳以上の方をシニア(高齢労働者) と呼ぶようです。
シニア世代が多い企業における産業医の役割は、単に労働者の健康を守る以上に、高血圧や糖尿病などをもった従業員がどう病気を対処して仕事を行うかや、若者よりも転倒や転落のリスクが相対的に高い状況であり、より産業医に労働災害の予防や、病気を持ちながらも仕事をすることへの専門的な知識と経験が求められます。
しかし、様々な人事・労務担当者から産業医の知識不足やスキル不足などにより高齢労働者への対応が難しく、良好な信頼関係を構築できずに困り果ててしまい、新たな産業医を探しているということでお問合せをいただく機会も多いです。
今回自社にあった産業医お困りの人事・労務担当者向けに高齢者労働者を雇っている企業に向いている産業医の特徴についての記事を作成いたしました。また最後には、簡単な高齢労働者が多い企業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストも記載しています。
是非、産業医を契約中の方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会にご確認してみてください。
高齢労働者の現状と産業医の重要性
少子高齢化が進み、図1のように2055年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率が40%を超えると推計されています。(総務省:国勢調査より)
図1 :厚生労働省発行(第14次労働災害防止計画より引用)
労働力の観点から、国としても65歳を超えてからも就業できる環境作りを求めています。実際に企業によっては図2のように65歳や70歳まで働くことのできる会社の数が年々増加しています。
図2 :厚生労働省発行(第14次労働災害防止計画より引用)
しかし、高齢者労働者多いが企業では、相対的に労働災害が増えるリスクにもつながります。国の出す労働力調査では、若年層と比較して、高年齢労働者では労働災害発生率が2倍以上であるという報告があり、国としてもこの発生率を下げることを企業にも求めています。
厚生労働省発行(第14次労働災害防止計画より引用)
具体的には、
- 企業は高齢者労働者の特性を理解した作業管理
- 身体的機能の低下を補う設備・装置の導入
- 勤務形態の工夫等
があります。
このプロセスを進めていく際に、産業保健分野に精通した産業医の医学的知識や経験を利用して、高齢者労働者の労働生産性を上げることに繋げることが必要不可欠になってきます。
次に高齢者が多い企業に向いている産業医の3つの特徴について詳しく解説していきます。
シニア世代が多い企業に向いている産業医の3つの特徴
1.シニアやミドルシニアの特有の問題に精通している
「なぜ、あの産業医は従業員の話をしっかり聞いてあげないのか?」そんな不満を抱いたことはありませんか?
高齢者は若者と違い、体力がなくても豊富な経験や知識を持っています。産業医は、これらの価値ある特性を理解し、企業の産業保健に活かすことが求められます。
- 労働環境の調整
- 高齢者に優しい労働環境の構築は、労働災害の防止に直接寄与します。例えば、物理的な負担が大きい作業からの除外、作業場の安全性向上などです。
- 産業医はこれらの環境調整が、高齢者の健康、安全性、生産性にどのように影響するかを評価し、企業への具体的な改善策を提案する役割を持ちます。
- 健康管理の専門性
- 高齢者特有の慢性疾患管理に関する専門知識は産業医にとって必須です。高血圧や、糖尿病、関節炎などの状態を適切に管理することは、職場における健康維持と生産性向上に直結します。
- 産業医は、定期的な健康診断、生活習慣のアドバイス、必要に応じた事業場の措置などの提案などができます。
- 多様な労働形態への適応
- すべての高齢者に若者と同じ労働条件を適用することは非現実的です。柔軟な勤務時間やパートタイム、リモートワークなどの多様な労働形態を検討し、高齢者のニーズに応じて適応することが重要になります。
- 産業医は、これらの労働形態がその企業文化に合っているかを確認しながら、高齢者の健康と生産性にあうような職場となるようなサポートします。
高齢者の知識と経験は、適切にサポートされれば、企業にとって貴重な資産になります。産業医は、高齢労働者の特有の問題に対する理解を持ち、これらの問題に対応するための実践的な方法を提示し、企業がこれらの資源を最大限活用できるようにサポートする役割を果たします。
2.企業とコミュニケーショをとり文化をより理解しようとする
「あの産業医の先生は法律のみで企業文化を全く理解してない」という不満を抱えているかもしれません。
専門的な『健康や安全』に関する知識を持っている産業医は必要ですが、それ以上に企業文化を理解して適切な提案をすることができる産業医がより重要になります。
企業によっては従業員の安全を第一に考えてはいても、予算や設備の制約により、劇的な改善をすることが難しい側面もあります。産業医には、従業員とのコミュニケーションを取る中で企業文化を深く理解し、限られたリソースや時間の中で最優先で実行すべきことが何なのかということが求められます。
知識が豊富だけでなく、企業とよりコミュニケーションをとり、適切な提案をすることができる産業医が重要です。
3.レスポンスが早く、法改正などにも対応して動ける
「直近の法改正の指摘に産業医がタイムリーに対応してくれなかった」と困惑した経験はありませんか?
企業にとって、法律に違反しているという指摘により、事業停止処分や再監査などが命じられた場合は、企業は実質的な損失以外にも企業のブランドイメージの低下など莫大な損失を被る可能性があります。そのため、高齢者を雇っている企業を担当する産業医はリスクアセスメントを積極的に行い、問題を未然に防ぐことが必要不可欠になります。
つまり、高齢者が多い産業医は『健康と安全』に対して深い知識を有し、法律や規制に関する法改正などが合った場合にそれを把握し、企業に対して柔軟でかつ明確な対応策を提案することが必要不可欠になるのです。
最後に:シニア従業員の多い企業のための産業医チェックリスト
シニア世代が多い企業に求められる産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?
若者と比較してシニア労働者はやはり労働災害の発生率や発生した後に復帰するまでの日数が多い傾向にあります。しかし、それを補ってあまりある経験や知識も兼ね備えていることもあるため、企業としてうまく活用することができればより生産性が高いことを行うことができるのです。
もし企業が産業医を選ぶ際には、上記に挙げた特徴を踏まえて、経験、知識、技術、コミュニケーション能力を総合的に評価していくことが重要となります。
最後に、高齢者の多い企業が採用すべき産業医の基準のチェックリストをもとめました。
あなたの会社の産業医は大丈夫??シニア従業員の多い企業の産業医チェックリスト
【必須条件】
□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
□ 知識や経験の有無 :シニア労働者の健康管理やメンタル対応などに精通しているか
□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
□ 迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
これらは、シニア従業員が多い会社が雇うべき産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で、特に重要になるのが、『企業文化にあった提案をすることができる産業医』です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。
弊社でも、「産業医はそんなもんだとコストとして諦めていたけど、産業医も先生によってこんなに違うんですね」と驚かれる人事・労務の方も一定数いらっしゃいますので、先生によってバラツキがあるのも事実と思います。
ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。
大手法人様はもちろん、これから衛生委員会を立ち上げるスタートアップ・ベンチャー企業様への対応経験も豊富にございます。特にメンタル対応についてお困りの法人様から専門性の高さで高くご評価いただいておりますので、産業医の交代を含め、何かお困りやご不満がございましたら、無料のオンライン相談も受けつけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。