【人事必読】医薬品製造業の産業医が兼ね備えるべき4つの特徴

この記事はこのような方に向けて書いています。

・産業医が予定通り働いてくれずに困っている医薬品製造業の人事・労務担当者の方

・産業医をこれから雇おうと考えている医薬品製造業向けの人事・労務担当者の方

産業医と契約するにあたりどのような点に注意すればよいのか悩んでいませんか?

医薬品製造業は消費者の健康に直結しますよね。製造業の中でも特に一つのミスが命に関わる危険性もあり、デリケートな現場となることが多いです。

作業現場では大きな騒音や化学物質、放射線が生じることがあり、このような環境での業務を「有害業務」と呼びますが、有害業務に加えて衛生環境も他の現場以上に厳重に管理しなければなりません。

このような作業環境の現場を担当したことがない産業医はどういった対応が重要なのか判断ができず、適切な対応を取れないこともしばしばあります。医薬品製造業に関わる産業医は有害業務に対して適切に対処できることに加え安全・衛生に対する知識も要求されると言えるでしょう。

今回、自社にあった産業医選びにお困りの人事・労務担当者向けに、医薬品製造の分野でどのような産業医と契約すべきなのかについての記事を作成しました。また最後には、簡単な医薬品製造業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストも記載しています。

是非、産業医を契約中の方は自社の産業医が本記事で解説した特徴を持っているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医を選ぶにあたって何に注目すればいいのかをぜひこの機会にご確認してみてください。

産業医はどんなことができるのかや職場改善したいのだけどどんな方法を使えば良いの?など興味があれば、気軽にライフインベスターにお問い合わせください。

目次

医薬品製造業での労働災害

医薬品製造業は、私たちの健康を支える重要な仕事です。この仕事には、製造工程での様々な危険が伴います。これらの危険を理解し、従業員の安全を守ることが、産業医の重要な役割です。

生物学的危険性

医薬品を作る際には、細菌やカビ(真菌)、ウイルス、動物の細胞などが使われます。これらの中には病気を引き起こさない種類(非感染性病原体)もありますが、それでもこれらを使う工程では、環境が汚れることが安全上の問題になり得ます。

また、新しい薬を開発するための研究では、これらに加えて、病気を引き起こす微生物(感染性病原体)も使われることがあります。こうした研究や製造の場所は、非常に清潔に保たれている必要があります。清潔に保たれていない場合、微生物が広がってしまい、事故や汚染の原因になることがあります。

化学的危険性

医薬品を作る過程では、様々な化学物質が使われます。これには、毒性があるものや、燃えやすいものなど、扱いに注意が必要なものも含まれます。これらの化学物質に誤って触れたり、空気中に放出されたものを吸い込んだりすると、健康に害を及ぼすことがあります。また、医薬品を作るための原料としてだけでなく、製造工程で一時的に使われた後に取り除かれる化学物質もあります。これらの化学物質が原因で、労働者がけがをしたり健康に問題が生じることもあります。

物理的危険性

一般的な製造業と同じように騒音、温度、湿度、寒冷ストレス、熱ストレス、放射線、物理的な衝撃などにより健康被害を生じる可能性があります。機械の操作ミスやメンテナンスの不備による事故が起きることも考えられます。

実際の労働災害の例

労働災害の具体的な事例として、以下の二つが挙げられます。

  1. 有機溶剤中毒: 医薬品の製造過程で、大量のアセトンを含む医薬品中間体の乾燥作業を行っていた際、作業員が気化したアセトンを吸入し、有機溶剤中毒を発症しました。この事故は、作業環境内でのアセトン濃度が高まった結果です。
  2. 皮膚炎: 別のケースでは、医薬品の原料となる中間体に付着した保湿剤を取り除く作業中に、3-ビニル[1,4]ベンゾオキシノ[2,3-c]ピリダジンのしぶきが直接皮膚に接触し、皮膚炎を引き起こしました。

医薬品製造業における労災を防ぐために

医薬品製造においては指定物質に関してリスクアセスメントを行うこと、安全に関するガイドラインを遵守することが第一の労働災害を防ぐ方法です。また、プロジェクトの締め切りや厳格な品質管理の要求により、従業員が過労やストレスにさらされることで労働災害や健康問題を引き起こす可能性もあります。産業医はメンタルヘルスの問題とこれによる集中力の欠如により引き起こされる物理災害の両方に対処する必要があります。

医薬品製造業に必要な産業医の特徴

1.企業文化をより深く理解しようとする

「あの産業医はうちの業界のことを全く理解していない」という不満を抱えたことはありませんか?医薬品製造業では他の製造業に対して以下のような違いがあげられます。

清潔の確保に対する意識が高い:医薬品製造においては、製品の清潔さが極めて重要です。製造した医薬品を摂取した消費者に健康被害が生じた場合、製造企業の評判は大きな打撃を受ける可能性があります。食品製造業と同様に消費者の口に入る製品を製造しているからこそ、製品の安全性は最優先事項です。

品質の維持に対する意識が高い:医薬品の品質は、消費者の健康に直接関わるため、その維持は安全性と同じくらい重要です。製品の品質が損なわれることは、消費者への影響だけでなく、企業の評判にも影響を及ぼします。

産業医は製造業の中での医薬品製造業の特殊性を深く理解し、何を優先させるべきかを判断する能力が問われています。

2.化学物質や製造業特有の法律に関する知識がある

「化学物質の自律的管理が問題になっているらしい」とニュースを耳にした方もいるかもしれません。

製造業に関係する法改正は毎年度起きており、これに対して企業は柔軟に対応することが求められています。製造業に関係する法律の中で医薬品製造業に関わるものは以下のようなものがあげられます。

・労働安全衛生法(通称:安衛法)

・安全衛生規則

・有機溶剤予防規則(通称:有機則)

・特定化学物質予防規則(通称:特化則)

・高気圧障害予防規則(通称:高圧則)

・事務所衛生基準規則

・労働基準法や労働契約法などの労働に関する法

最近では「化学物質のリスクアセスメントに関する法律」が改正され、国が企業に求める安全対策のレベルは日に日に増しています。

これらに加え、医薬品製造業者は「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令(GQP省令)」「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(GMP省令)」に従う必要があります。

都度変化する法律に適応でき、医薬品製造業特有の省令に対しても適切な知識を持つ産業医が求められていると言えるでしょう。

3.迅速な対応が取れる

監査での指摘や法改正に産業医が迅速に対応できず、違法行為などにより国から稼働停止を命じられた場合、企業は莫大な損失を被る可能性があります。そのため、医薬品製造業を担当する産業医はリスクアセスメントを積極的に行い、問題を未然に防ぐことが必要不可欠になります。もし問題が表面化した場合には、担当する企業と協力して迅速に状況を悪化させないための対策を講ずることが求められます。

さらに、化学物質への接触や爆発事故への巻き込まれなど重大な労働災害が発生した場合、労働者本人に対する対応や事故の予防措置などを行う必要があります。事故に遭った労働者本人の身体的、精神的なサポートだけでなく、周囲の従業員のメンタルヘルスのサポートも産業医の仕事の一つです。

4.海外の法律や文化に適応できる

近年アジアやアフリカをはじめとした海外諸国に工場や支社を置く企業が増加しており、製薬企業も例外ではありません。もちろん日本の法律や基準だけでなく、現地の法律や基準に従う必要があります。

さらに、海外に駐在する日本人駐在員は慣れない海外での業務に精神的・身体的負担を感じることも多く、彼らをサポートする産業医は、これらの従業員が健康かつ安全に業務を遂行できるよう、心理的サポートや健康管理の面でも積極的な役割を果たす必要があります。

海外市場への展開に伴い、産業医は単に医学的な知識だけでなく、異文化への理解と柔軟な対応力を持つことが不可欠です。現地の文化や習慣、法律に適応し、多様な労働環境において従業員の健康と安全を守ることが、産業医の重要な任務となります。

医薬品製造業に向いている産業医のチェックリスト

ここまで医薬品製造業の労働災害とそこに必要な産業医の特徴について解説してきましたが、自社の産業医はいかがでしたでしょうか。

医薬品製造業における産業医は企業の健康と安全の環境を向上させるために大切であり、製造業の中でも特殊なこの業界ではその役割はより重要なものとなります。そして、企業にマッチした産業医を選ぶ事ができると、労働災害のリスクを低減させることだけでなく、労働環境の質の向上と従業員の意識改革につながり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与するのです。

もし企業が産業医を選ぶ際にはその経験、知識、技術、およびコミュニケーション能力を総合的に評価していくことが重要です。今回挙げた特徴も有効活用して企業にあった産業医を選定できれば幸いです。

最後に、医薬品製造業の企業が採用すべき産業医の基準をチェックリストにまとめました。

あなたの会社の産業医は大丈夫??医薬品製造業の産業医チェックリスト

【必須条件】

□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか

□ 知識や経験の有無 :法律や危険物の管理などに精通しているか

□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか

□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか

□ 迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか

【副次条件】

□ 海外展開する企業での勤務歴:企業と相談して臨機応変に対応できるか

これらは医薬品製造業の会社が雇うべき産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で、特に大事になることは”企業文化にあった提案をすることのできる産業医”です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。

「医薬品製造業に向いている産業医」についての記事はいかかでしたでしょうか?

産業医にとってどんなことが大事なのかが少しでも伝わったのなら幸いです。もし少しでも産業医に興味関心があればお気軽にライフインベスターにお問い合わせください。

ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。

大手法人様はもちろん、これから衛生委員会を立ち上げるスタートアップ・ベンチャー企業様への対応経験も豊富にございます。特にメンタル対応についてお困りの法人様から専門性の高さで高くご評価いただいておりますので、産業医の交代を含め、何かお困りやご不満がございましたら、無料のオンライン相談も受けつけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

【参考文献】

1.厚生労働省 職場のあんぜんサイト 労働災害事例

医薬品中間体の乾燥作業中に有機溶剤中毒

医薬品原料中間体が付着した保湿材を外す作業中、3-ビニル[1、4]ベンゾジオキシノ[2、3-c]ピリダジンのしぶきを受け皮膚炎で入院

2.厚生労働省

医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令
医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令

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