この記事はこのような方に向けて書いています。
・メンタルヘルスの対応体制をどう構築すればいいんか迷っている担当者の方
・メンタルヘルス推進担当者としての仕事について悩んでいる方
・メンタルヘルス推進をしている企業の方
1. 職場でメンタルヘルスの現状とその対策の重要性
メンタルヘルスの職場における重要性
「メンタルヘルス対策は職場でできていますか?」昔と労働環境は大きく変わり、IT技術の進展によるリモートワークの導入、フレックス勤務などの就業形態の多様化、成果主義の浸透、男女の役割分担の変化が以前と比べ、労働者一人一人の仕事に影響を与えています。
このような変化は、私たちの心にも影響を及ぼしています。厚生労働省の報告によれば、働く人々の約61%が仕事に関連するストレスを感じているというのは無視できない事実です。
また、自殺を含む精神障害等に係る労災補償は請求件数、認定件数共に令和3年度現在、過去最高を記録し、私たちの職場でのメンタルヘルス対策がいかに重要かを物語っています。
メンタルヘルス推進担当者の選任義務の重要性
「国がメンタルヘルス対策を重点的にしているらしい」と聞いた方もいるかもしれません。実際、労働安全衛生法の改定により、職場でのメンタルヘルス対策が法的により求められるようになっています。これは、個々人の健康としての問題だけでなく、企業全体の問題にも直結することとなります。
中小企業でも大企業においても、従業員の心の健康を守ることが重要になります。しかし、図1のように中小企業になればなるほど、メンタルヘルスケアへの取組ができてない現状があります。法的な要件を満たすことは必要条件ではありますが、その上で、職場での幸福感と生産性の向上を目指すべきです。
従業員一人ひとりの声に耳を傾け、実情に基づいた適切なメンタルヘルス対策を講じることが、求められています。
それではメンタルヘルス推進担当者がどのような仕事をするべきなのかについて記載していきましょう。
2. メンタルヘルス推進担当者の具体的な4つの仕事内容
①心の健康づくり計画の管理
- 計画の策定: 従業員のメンタルヘルスをサポートする具体的なプランを作成します。この計画には、ストレス管理、ワークライフバランスの改善、心理的サポートの提供なども含まれています。
- 周知: 作成した計画を従業員全員に伝え、全体の理解を促します。方法としては、会議、社内メール、掲示板などを通じて情報を共有することが一般的です。
- 実施状況のチェックと管理: 計画の進行状況を定期的にチェックし、必要に応じて調整や改善を行います。PDCAを通して、効果のモニタリングやフィードバックの収集も重要です。
②教育と支援の推進
- 教育プログラムの計画と実施: セルフケアやラインケアを行うためのサポート方法についてのプログラムを立案を行います。方法としてはワークショップ、セミナー、オンラインコースなどを用いることが考えられます。
- 教育の成果の評価と改善策の立案: 教育プログラムの効果を評価し、どのように改善できるかを検討します。参加者のフィードバックや成果の分析を通じて、社内文化にあったより効果の出るプログラムに変更していきます。
③相談窓口の提供
- 窓口の設置と管理: 従業員がメンタルヘルスの問題について気軽に相談できる窓口(メールアドレスや電話番号など)を設けます。産業医などの専門家の面談の手配やオンライン相談なども含めて検討します。
④外部資源との連携
- 連携窓口の運営: 事業場外のメンタルヘルスの専門家(心療内科医や精神科医など)や外部の資源との連携を担います。これには、カウンセリングサービス、専門的なトレーニングプログラム(リワーク施設や障害者支援施設など)、その他のサポートサービスとの連携が含まれます。
以上の4つがメンタルヘルス推進担当者の役割になります。
ここで重要なことは、教育や相談そのものを直接担当することまでは求められておらず、事業場内で行われるメンタルヘルス対策の調整者としての役割が求められているということです。
3.組織におけるメンタルヘルスの取り組み具体例
①管理職研修:セルフケアとラインケアの重要性
- 研修の内容: 管理職向けに、セルフケアやラインケアのテクニックを中心にした研修を実施します。これには、ストレスの兆候の認識、コミュニケーションのスキル、チーム内での心の健康サポートの方法などが含まれます。
- 研修の目的: 管理職がチームのメンタルヘルスをサポートするための知識とスキルを身につけ、従業員全体のストレス認識と対処能力を向上させることを目的とします。
②ストレスチェックに基づく組織改善
- ストレスチェックの実施: 定期的なストレスチェックを通じて、従業員のストレスレベルを評価します。匿名のアンケートやアセスメントツールを使用して、ストレスの原因を把握します。
- 結果に基づく改善策: ストレスチェックの結果を詳細に分析し、職場の特定のストレス要因(過度な業務負担、コミュニケーションの不足など)を特定します。これらの要因に基づいて、業務プロセスの改善や職場環境の調整などの具体的な対策を策定します。
③産業医の専門知識を活用した職場環境の改善
- 産業医の役割: 産業医は、職場のストレス要因の特定、ストレスチェックの結果の解釈、健康リスクの評価などを行います。
- 改善策の提案: 産業医は、職場環境の評価をもとに、具体的な改善策を提案します。これには、作業環境の改善、休息時間の確保、メンタルヘルスに関する社内プログラムの推進などが含まれる場合があります。
4. 選任プロセスとその課題
選任プロセスの概要
- ステップ1: 候補者の特定: メンタルヘルス推進担当者に必要な資格、経験、スキルを定義し、これに適合する候補者を特定します。
- ステップ2: 評価と選考: 候補者の過去の実績、教育背景、対人スキルなどを評価し、企業内のメンタルヘルス対策に最適な人物を選考します。
- ステップ3: トレーニングと開発: 選ばれた担当者に対して、必要なトレーニングを提供し、メンタルヘルスの専門知識や管理スキルを強化します。
追加情報
- 推奨される選任基準: 一般的に、衛生管理者や常勤の保健師など、メンタルヘルスに関連する専門知識を持つ従業員からの選任が推奨されます。
- 事業場の規模と担当者の適用: 50人未満の小規模事業場や、保健師・看護師が不在の場合は、人事労務スタッフなど他の適任者を担当者に指名することも考慮されています
産業医との連携によるメンタルヘルス対策のメリット
専門知識に基づく対策の強化
- 医学的なアプローチ: 産業医の医学的な専門知識を活用することで、メンタルヘルス対策がより科学的で効果的に繋げることができます。具体的な医学的見地から、ストレスや心の健康の問題を正確に理解し、より良い対応策を導くことができることができます。
トレーニングと教育の質の向上
- 実践的なトレーニング: 産業医と協力してトレーニングを行うことで、実際の職場での問題に即した内容になり、管理職や従業員が直面する実際の課題に対して具体的な対応方法を学ぶことができます。
- 継続教育の提供: 産業医は、最新のメンタルヘルス関連の知見を提供し、継続的な教育を通じて職場全体のメンタルヘルス対策の質を高めることができます。
事業場内のメンタルヘルスの継続的なサポート
- 定期的な評価とアドバイス: 産業医は、職場のメンタルヘルス状況を定期的に評価し、必要に応じてアドバイスや改善策を提案します。これにより、職場環境や業務プロセスの改善が図られます。
- 個別ケースへの対応: 産業医は、特に困難なケースや緊急事態において、個別の対応策やアドバイスを提供し、従業員の健康をサポートします。
産業医との連携により、組織内のメンタルヘルス対策はより包括的で効果的なものとなります。専門的な医学的アプローチと継続的なサポートを通じて、職場の健康環境を向上させ、従業員の心の健康を守ることが期待されます。
5. 総括:メンタルヘルス推進担当者と産業医の協力
記事の主要なポイントのまとめ
- 本記事では、メンタルヘルス推進担当者の重要な役割、産業医との協力によるメリット、実際の企業事例を通じた成功のポイントに焦点を当てました。
- メンタルヘルス推進担当者は、組織内のメンタルヘルス対策の円滑な進行を支え、産業医は専門的な知識を提供し、従業員の健康を守る上で重要な役割を果たします。
メンタルヘルス対策の重要性
- 今後のトレンド: 仕事の多様化が進み、メンタルヘルス対策の重要性はますます高まる傾向にあります。そのため、企業にとって人的資本の向上の一つの手段として行っていくことが重要になってきます。
メンタルヘルス推進担当者の簡易チェックリスト
<実施前の準備>
・従業員のメンタルヘルスに関するニーズと懸念を把握
・産業医やメンタルヘルス専門家との連携計画を立案
<プログラムの開発と実施>
・メンタルヘルス教育と意識向上プログラムの開発
・ストレスマネジメントとサポート体制の構築
・管理職と従業員向けのトレーニングとワークショップの実施
<継続的な評価と改善>
・メンタルヘルスプログラムの効果のモニタリングと評価
・ストレスチェックの結果とフィードバックに基づく改善策の実施
・継続的な教育とサポート体制の更新
これはメンタルヘルス推進担当者の仕事内容のチェックリストの一例です。、この項目の中で、最も大事になるのは、『企業文化を考えてメンタルヘルス対策を進める事』です。その際に、企業と契約している産業医と十分連携を行い、実行する事が不可欠になるでしょう。