この記事はこのような方に向けて書いています。
・メンタル不調の社員対応に戸惑っている人事担当者の方
・産業医がいるものの、うまく活用できていないと感じている方
・社内でメンタルヘルス対策を体系的に進めたい経営者の方
・中小企業での現実的な対応策を知りたい方
ある日突然、「Aさんが体調不良でしばらく休職することになりました」と報告を受けたとき、あなたはどう対応しますか?
メンタル不調は、外見では分かりにくく、対応を誤ると職場全体の信頼関係や生産性に影響を及ぼす恐れもあります。しかも、「間違った対応をしてはいけない」「でも、何が正解か分からない」と、不安を感じている人事担当者は少なくありません。
そんな時、頼りになるのが「産業医」の存在です。専門知識をもつ第三者の視点で、社員の健康と企業のリスク管理をサポートしてくれる心強いパートナーです。
この記事では、産業医の基本的な役割から、実際にメンタル不調のケースでどのように活用すべきかまで、実践的なガイドとしてわかりやすく解説していきます。
産業医とは?メンタルヘルス対策との関係
産業医は、労働者の健康管理を専門に担う医師であり、労働安全衛生法に基づいて選任されます。50人以上の労働者を抱える事業場では選任が義務となっており、その役割は「健康診断の実施」や「職場巡視」だけではありません。
とくに近年では、メンタルヘルス対策における産業医の関与が重要視されており、以下のような場面で力を発揮します。
- ストレスチェック結果の分析・助言
- 高ストレス者への面談指導
- 休職者の復職可否の判断
- 長時間労働者への健康相談
- 職場環境改善のための提言
社員の心身の健康を守りつつ、企業としてのリスク管理を行ううえで、産業医の存在は欠かせません。
メンタル不調への初期対応と産業医の役割
社員がメンタル不調を訴えた場合、初期対応で最も重要なのは「早めの専門家への相談」です。
人事担当者や上司が一人で判断しようとすると、「無理な復帰を促してしまう」「配慮が過剰になり業務に支障が出る」など、逆効果になることもあります。また、メンタルの不調は個人差が大きく、症状や回復のスピードも一様ではありません。そのため、医学的な知見をもつ産業医の判断を仰ぐことが、本人・職場の両方にとって適切な対応への第一歩になります。
特に以下のようなケースでは、早期に産業医を関与させることが推奨されます。
- 明らかに業務に支障が出ている
- 遅刻・欠勤・早退が頻発している
- 表情や発言にいつもと違う様子がみられる
- 本人から「眠れない」「会社に来るのがつらい」といった訴えがある
こうしたサインが見えたら以下の流れで初期対応を行います。
①当事者との面談で状況を把握(無理に深く聞き出さない)
感情的に追い込まず、「何か困っていることはありますか?」という姿勢で傾聴に徹しましょう。
②必要に応じて産業医へ相談・同席依頼
面談の場に産業医を招くことで、本人にとっても「相談しやすい空気」が生まれます。
③労務管理上の配慮が必要かどうかの判断を仰ぐ
勤務時間の短縮、業務内容の変更など、医学的な観点での助言をもらえます。
④勤務調整・休職等の措置を検討
主治医の診断書に加えて、産業医の意見をもとに、就業可否や復職の可否を慎重に判断します。
⑤社内での情報共有・記録の整理
本人のプライバシーを守りつつ、今後の対応に一貫性を持たせるため、対応履歴はきちんと記録しておきましょう。
また、人事や上司が「何を聞いてよいか分からない」「どう接するのが正解か分からない」と感じるのは、ごく自然なことです。その不安を一人で抱えず、早い段階で産業医に協力を依頼することで、対応の軸ができ、職場全体にとっても安心材料となります。
「何を聞いてよいか分からない」と感じたら、迷わず産業医に協力を依頼しましょう。
実際の活用例:面談・復職支援・職場環境改善
メンタルヘルス対応の場面では、産業医が果たす役割は多岐にわたります。ここでは、現場でよくある3つのシーンを取り上げ、それぞれで産業医がどのように活躍しているのかを具体的に見ていきましょう。
面談による実態把握
社員が「疲れている」「調子が悪い」といった抽象的な不調を訴えた際に、医学的な視点から客観的な状態を確認するのが産業医の面談です。
この面談では、以下のような観点から就業継続の可否を総合的に判断します。
- 睡眠や食欲、生活リズムの乱れはないか
- 注意力・集中力は業務に支障がないレベルか
- 感情のコントロールに困難がないか
- 本人が職場の何にストレスを感じているか
人事担当者では判断が難しい心身の状態を、専門知識を持った医師が確認することで、対応方針に説得力が増します。また、本人にとっても、会社側との「中立的な橋渡し役」が存在することで、心理的負担が軽減されるケースが多くあります。
さらに、面談後には医師の意見書(就業可否や配慮事項などを記載)を企業に提出することもあり、法的リスクを抑えた対応にもつながります。
復職支援
メンタル不調による休職からの復職は、企業にとっても本人にとっても非常に繊細なプロセスです。再発リスクを避けるためには、復職の可否判断を「主治医の診断書」だけに頼らないことが大切です。
産業医は、以下のような観点から復職支援に関与します。
- 実際の業務に照らした復職の適性判断
- 勤務時間や業務内容を段階的に戻す「リワーク支援」
- 上司や同僚への配慮事項の整理と共有
- 再発防止に向けた本人へのフォローアップ指導
また、「診断書に“復職可”と書かれているから復帰させたが、再発してしまった」といったリスクも、産業医の介在によって防ぐことが可能です。産業医の判断を挟むことで、復職判断の透明性と安全性が高まり、企業にとっても法的・倫理的なリスクを最小限に抑える効果が期待できます。
職場改善のための助言
産業医の支援は、個別対応にとどまりません。むしろ、職場全体を俯瞰した組織的なメンタルヘルス改善にこそ大きな力を発揮します。
たとえば、以下のようなケースでは、産業医による職場環境へのフィードバックが有効です。
- 特定の部署で離職者が多い
- 上司と部下のトラブルが続いている
- 長時間残業が常態化している部署がある
- ストレスチェックで高ストレス者が偏っている
こうした状況に対して、産業医は「改善ポイントの洗い出し」と「具体的な対策提案」を行います。
- 業務分担の再調整や業務フローの見直し
- 上司に対するマネジメント研修の実施提案
- 休憩時間の確保や業務終了時間の明確化
- 1on1ミーティングなどのコミュニケーション強化策
このように、産業医の知見を活かすことで、社員の不調を個人の問題で終わらせず、職場全体の改善につなげることが可能になります。
よくある誤解と効果的な連携のコツ
産業医と聞くと、「健康診断のときだけ関わる先生」というイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。しかし、実際には、企業のメンタルヘルス対策や職場改善において、非常に重要な役割を果たす存在です。
ここでは、産業医に対する誤解を解きつつ、より効果的に連携していくためのポイントを解説します。
産業医=健康診断だけの人ではない
もっとも多い誤解のひとつが、「産業医は健康診断の判定をするだけ」というものです。確かにそれも役割のひとつですが、産業医の本質的な使命は、社員の健康保持増進と、企業の健康リスクの最小化にあります。
具体的には、以下のような領域で支援を受けることができます。
- 長時間労働者に対する面談指導
- 高ストレス者への対応と就業上の助言
- 過重労働による健康障害の予防措置
- 職場巡視による安全衛生の視点からの改善提案
- 衛生委員会への参加と助言
- 復職時の業務調整やモニタリングの提案
つまり、“健康管理の顧問医”として継続的に企業の中に関与し、組織の健全性を保つパートナーなのです。
社内のことを相談するのは気が引ける?
「産業医に会社の内部事情を話していいのか」とためらう方もいますが、心配は無用です。産業医は医師であり、法律上の守秘義務を厳格に負っています。
そのため、以下のような相談も安心して行うことが可能です。
- 特定の部署で不調者が続いている
- 一部の上司によるマネジメントに不安がある
- ハラスメントや人間関係のトラブルがある
- 特定の業務で過重負担がかかっている
こうした情報を共有することで、産業医は企業に対して、医療的かつ中立的な立場から客観的な改善提案を行えます。逆に、情報が不足したままでは、産業医の支援の質が十分に発揮されない恐れもあります。
むしろ、「オープンに相談してくれる企業ほど、リスク対策もしやすい」と感じる産業医は多いのが実情です。
何を相談していいか分からない
産業医と話す際、「明確な悩みがないと相談できないのでは?」と考えがちですが、それは大きな誤解です。漠然とした不安や傾向的な気づきこそ、早期対応のきっかけになります。
たとえば以下のような会話でも、十分に価値があります。
- 最近、特定のチームで遅刻が増えている気がする
- 若手社員から「誰にも相談できない」という声を聞いた
- ハラスメントとまでは言えないが、上司の言動が厳しすぎる
こうした「ちょっとした違和感」や「傾向」の共有は、重大な問題が起きる前の予防策につながるのです。
さらに、定期的に雑談のような感覚で情報交換を行うことで、産業医側も職場の空気感や企業文化を把握しやすくなり、より的確なアドバイスが可能になります。
中小企業でもできる実践的な導入・活用方法
「うちは人数が少ないし、産業医なんて大げさでは…」と思う方もいるかもしれません。しかし、非常勤で月1回訪問するスタイルであれば、コストを抑えながら必要なサポートを受けられます。
導入にあたっては以下のようなポイントを押さえましょう。
- 訪問頻度・業務範囲を事前にすり合わせる
- 社内の担当者を明確にする(人事・衛生管理者など)
- 労働者にも「相談できる存在」として周知する
- 定例の打ち合わせや職場巡視を組み込む
大切なのは、「導入したら終わり」ではなく、「継続的に対話を続ける仕組み」をつくることです。

まとめ
メンタルヘルス対策は、制度だけ整えても意味がありません。実際の現場で「どう動くか」が問われる場面では、経験や知識だけでなく、“適切な支援体制”が必要です。
産業医は、社員の心の健康と企業の健全な経営、どちらも支える重要な存在です。メンタル不調の兆しを見逃さず、正しく対応するために、まずは社内での産業医の位置づけを見直し、一歩踏み出してみませんか?
専門家とつながる一歩を踏み出すなら
中小企業にとって、メンタルヘルス対策や産業医の活用は「難しそう」「うちにはまだ早い」と感じられるかもしれません。しかし、社員の心身の健康が守られ、安心して働ける職場こそが、企業の持続的な成長を支える土台になります。
「ライフインベスターズ」は、全国の中小企業向けに産業医を派遣し、メンタル不調への実践的な対応から、職場改善の継続的サポートまでを提供している専門サービスです。貴社の課題や業種に合わせたオーダーメイドの支援で、導入から運用までをスムーズにサポートします。
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