この記事はこのような方に向けて書いています
・産業医が予定通り働いてくれずに困っている人事・労務担当者の方
・産業医をこれから雇おうとしている人事・労務担当者の方
- 産業医との契約を結んでいるものの、その専門知識に疑問を抱えている方はいませんか?
- また、産業医の契約を検討しているが、何に注意すればよいか戸惑っている方もいるかもしれません。
製造業にとって、産業医が果たす役割は広範囲に渡ります。
なぜなら製造業の仕事場では、大きな騒音や化学物質、放射線が生じる環境がしばしばあるからです。これらを「有害業務」と呼びますが、こうした作業環境の職場を担当したことがない産業医にとっては、適切に対応することが難しいことがしばしばあります。
多くの製造業の企業が、この「有害業務」への適切な対処法ができる産業医を見つけることに苦労しており、様々な人事・労務担当者から有害業務を担当できる産業医を紹介してほしいという相談があるのが実情です。
今回、自社にあった産業医選びにお困りの人事・労務担当者向けに、製造業の企業を担当している産業医でもある私が、製造業の分野でどんな産業医と契約すべきなのかについての記事を作成いたしました。また最後には、簡単な製造業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストも記載しています。
是非、産業医を契約中の方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会にご確認してみてください。
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重労働や深夜作業に関連する健康リスクや有機溶剤や騒音職場に対応できる産業医で、より良い職場に変化を。
実際、有害業務対応できる産業医がいないと相談を受けることも多いです...
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そもそも製造業とは?
一般的に
原材料を加工・組み立てし、製品として販売して利益を得る業態
を指すとされます。
そして、製造業は、さらに自動車産業、化学工業、電子機器産業、食品産業、重工業、鉄鋼業、繊維産業、医薬品産業など幅広い分野に分類されます。
加えて、製造業は有害業務と呼ばれる業務が仕事の中に含まれているなど、ITやサービス業とは少し違った特徴があります。
つまり、製造業の企業を担当する産業医はそれぞれの業務でおきる可能性のある事故の危険を早期に認識し、法改正などがあった際には、これを事業所に迅速に伝達し、適切な対策を講じる責務を担っています。
この責務を果たす上で業種や業界への知識や理解は必須となり、逆にこの理解がない産業医に仕事を任せてしまうと、会社側は短期や長期目線でも、業務用災害などのリスクを抱えることになってしまうかもしれません。
それではもう少し詳しく製造業分野で雇うべき産業医の特徴について、掘り下げて考察していきます。
企業文化をより理解しようとする
「あの産業医の先生は私たちのことを全く理解していない」という不満を抱えたことはありませんか?
専門的な”健康や安全”に関する知識を持つ産業医は数多くいますが、その知識を具体的な提案として企業に提案することのできる能力を持つ産業医は決して多くはありません。
また、企業によっては従業員の安全を第一に考えてはいても、予算の制約により、最新の設備投資に踏み切ることが難しい現実があります。産業医には、企業文化を深く理解し、限られたリソースの中で何を最優先で実行すべきかを判断することが求められます。
したがって、単に知識が豊富な産業医ではなく、企業の具体的な文化や状況に合わせて適切な提案ができる産業医が大切になります。
労働安全衛生法や有機溶剤に関して知識がある
「化学物質の規制が来年から変わるらしい」や「新たな化学物質が法律の規制に加わったらしい」といったニュースを耳にしたことはありませんか?
製造業に関係する法改正は毎年度、起きており、これに対して企業は柔軟に対応することが求められています。
例えば、製造業に関係する法律は、以下のようなものがあります。
- 労働安全衛生法(通称:安衛法)
- 安全衛生規則
- 有機溶剤予防規則(通称:有機則)
- 特定化学物質予防規則(通称:特化則)
- 高気圧障害予防規則(通称:高圧則)
- 酸素欠乏防止規則(通称:酸欠則)
- 粉塵障害防止規則(通称:粉じん則)
- 石綿障害予防規則(通称:石綿則)
- 鉛中毒予防規則(通称:鉛則)
- 事務所衛生基準規則
これらに加えて、労働基準法や労働契約法など、労働に関する多くの法律が製造業に深く関わってきます。
特に、製造過程で頻繁に利用される有機溶剤や化学物質の取り扱いは企業にとって大きな頭痛の種になっています。また、最近では「化学物質のリスクアセスメントに関する法律」が改正され、国が企業に求める安全対策のレベルは日に日に増している現状があります。
端的に言うと、
国は企業に対し、法律を深く理解し、新たな規制に即座に適応すること
を求めています。しかし、実際には法規制を正確に把握し、適切に対応できている企業は少ないのが現実です。
製造業における産業医は、これらの法律に精通した上で、適切な知識を企業のフェーズごとに提案し、実行をサポートをする姿勢が求められています。
レスポンスが速く、法改正などにも対応して動ける
「監査での指摘に産業医がタイムリーに対応してくれなかった」と困惑した経験はありませんか?
もし違法行為などにより国から稼働停止を命じられた場合、企業は莫大な損失を被る可能性があります。そのため、製造業を担当する産業医はリスクアセスメントを積極的に行い、問題を未然に防ぐことが必要不可欠になります。もし問題が表面化した場合には、担当する企業と協力して迅速に状況を悪化させないための対策を講ずることが求められます。
つまり、製造業を担当する産業医は「健康と安全」に対して深い知識を有し、法律や規制に関する改正などがあった場合には迅速にそれを把握し、企業に対して柔軟でかつ明確な対応策を提案することが必要不可欠になるのです。
大規模工場の産業医を経験したことがある
「工場で重大な事故が発生した」というアクシデントを耳にした事がある方もいるかもしれません。
製造業の多くの企業は、工場を持つことが多く、労働災害が他の業種と比較しても発生しやすいという特有のリスクを抱えています。
厚生労働省が示す業種別休業4日以上の死傷災害発生状況の表
厚生労働省のデータによると、機械を伴う業務を行っているため、業務上災害が起きやすいという事実があります。
製造業分野を担当する産業医はこれらのリスクを適切に分析し、対策案を都度、提案することが求められます。
そのために大規模工場で勤務経験を持つ産業医は、製造現場特有の課題やリスクをより深く理解しており、不測の事態に迅速かつ適切に対応できると言えます。
海外展開する企業で働いたことがある
「来期から海外に新工場を設立します」との内示を会社で見聞きした経験がある方もいるかもしれません。
特にアジアやアフリカの市場に目を向け、海外に工場を設立する企業も年々増加しています。そして海外進出に際し、現地の文化や法律への理解が欠かせません。
現地で活躍する日本人駐在員は、文化の違いや法規制の違いに直面することが多く、これらの課題への適応は容易ではありません。こうした駐在員を裏から支える産業医は、彼らが直面する具体的な課題を把握し、国際的な視点でのアドバイスをする能力が求められます。
したがって、このような企業を担当する産業医には、異なる国の法律や規制、文化を適切に理解し、企業と相談しながら、対応していく能力が求められるのです。
総括:製造業に向いている産業医のチェックリスト
製造業に求められる産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?自社の産業医は、今回の記事で述べたような特徴をしっかり備えていましたか?
製造業における産業医の役割は多岐に渡り、企業の健康と安全の環境を向上させるために重要となります。そして、企業にマッチした産業医を選ぶ事ができると、労働災害のリスクを低減させることだけでなく、労働環境の質の向上と従業員の意識改革につながり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与するのです。
もし企業が産業医を選ぶ際には、その経験、知識、技術、およびコミュニケーション能力を総合的に評価していくことが重要です。今回挙げた特徴も有効活用して企業にあった産業医を選定できれば幸いです。
最後に、製造業の企業が採用すべき産業医の基準をチェックリストにまとめました。
あなたの会社の産業医は大丈夫??製造業の産業医チェックリスト
【必須条件】
□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
□ 知識や経験の有無 :法律や危険物の管理などに精通しているか
□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
□ 迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
【副次条件】
□ 工場での勤務歴:大規模工場でのリスクアセスメントの経験の有無
□ 海外展開する企業での勤務歴:企業と相談して臨機応変に対応できるか
これらは製造業の会社が雇うべき産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で、特に大事になることは”企業文化にあった提案をすることのできる産業医”です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。
「製造業に向いている産業医」についての記事はいかかでしたでしょうか?
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