この記事はこのようなお悩みをお持ちの方に向けて書いています。
・健康経営優良法人の認定を目指したい
・社員の病気療養や復職における両立支援制度を検討したい
・私病による長期休職者へのサポート体制を整えたい
「健康経営」という言葉が広く認知される中で、社員の健康管理に積極的に取り組む企業が増えてきました。その中でも、健康経営優良法人の認定を目指す場合、避けて通れないのが「仕事と治療の両立支援」に関する取り組みです。
とくに注目されるのが、「私病等に関する復職・両立支援の取り組み」です。ここでいう「私病」とは、がんや心疾患、糖尿病など、業務とは直接関係のない病気を指します。
しかし、「私病は個人の問題」として片づけてしまうと、優秀な人材を失うだけでなく、企業全体の働きやすさや信頼性にも影響しかねません。
この記事では、健康経営優良法人の認定項目にも含まれている「私病への復職・両立支援」について、具体的な対応方法や実践例を紹介します。
仕事と治療の両立支援⑦「私病等に関する復職・両立支援の取り組み」とは?
健康経営優良法人の評価項目のひとつ、「仕事と治療の両立支援⑦」では、「私病等に関する復職・両立支援の取り組み」が求められます。
この項目では、がん・心疾患・糖尿病・女性特有の疾患・難病など、業務外で発症した病気に対しても、企業が積極的に支援を行っているかが評価されます。
評価対象となるのは、以下のような支援です。
- 病気治療中の社員への勤務時間・勤務形態の柔軟な対応
- 復職にあたっての段階的な就業支援(リハビリ出勤など)
- 主治医・産業医・人事部門の連携体制の整備
- 社員向けガイドラインや相談窓口の設置
- 定期的なフォローアップ面談の実施
単に制度があるだけでなく、「実際に運用されていること」が評価されるため、事例や実績の提示が認定において重要になります。
私病とは何か?企業に求められる基本的な視点

「私病」とは、業務に直接起因しない病気やケガを指し、労災とは区別されます。がん、心疾患、腎疾患、女性特有の疾患、難病などが含まれ、治療には中長期的な通院・入院・療養が必要となることもあります。
企業としては、これらの私病を「本人の責任」と突き放すのではなく、仕事との両立を支援する視点が求められています。なぜなら、社員が安心して治療に専念できる環境は、結果として職場全体の信頼性や定着率の向上につながるからです。
認定を意識したポイント
健康経営優良法人の認定を目指すうえで、「私病への復職支援」は“仕組みがあるだけ”では不十分です。以下のような点を押さえておくと、認定評価において有利になります。
- 支援制度の実績があるか(例:過去に復職支援を行った事例)
- マニュアルやガイドラインが整備されているか
- 産業医・主治医との連携体制が明文化されているか
- 本人の意向を尊重する支援プロセスがあるか
- 対象がメンタル疾患に偏っていないか
実績がない場合でも、今後の計画や制度導入の方針を明文化し、社内での周知を進めることで、一定の評価を得ることができます。
具体的な復職・両立支援の取り組み事例
ここからは、実際の企業で導入されている取り組みを紹介します。
花王株式会社
花王では、「健康経営宣言」のもと、がんを含む私病と仕事の両立を支える多面的な制度と風土づくりに取り組んでいます。主な支援内容は以下の通りです。
1. 柔軟な勤務・休暇制度の整備
- 私傷病特別休暇(有給):勤続年数に応じて20〜40日付与。入院・通院治療に活用可能。
- 看護・介護特別休暇:家族の看護・介護にも同様の有給休暇を付与。
- 時間単位・半日単位の年次有給休暇:定期的な通院やフォローアップ診察にも柔軟に対応。
- フレックス勤務/時差出勤/在宅勤務制度:治療と業務の両立を支援する働き方が可能。
2. 復職支援制度の充実
- 「職場復帰ガイドライン」に基づき、試し出勤やリハビリ出勤が可能。本人・上司・人事・産業看護職が連携してスムーズな復職を支援。
3. 医療職・相談体制の強化
- 各事業場に健康相談室を設置し、産業医・看護職による相談支援を実施。
- 女性の健康相談窓口や専用メールアドレスもあり、相談のハードルを下げている。
- 上司・人事・産業医との3者面談を通じて、最適な働き方を一緒に検討。
- 外部EAP(従業員支援プログラム)や社内カウンセラーによる心理面のサポートも実施。
4. がん検診・健康支援の推進
- 健康診断にがん検診項目を含め、女性向け検診(乳がん・子宮がん)も対応。若年層への検診も推奨。
- 人間ドック費用は全額会社負担。要再検査者へのフォロー体制も充実。
5. 情報発信・風土づくり
- 社内ポータルやイントラネットで、健康情報や制度利用方法を発信。
- 女性の健康情報発信誌「Kao Women’s News」を定期配信。
- 東京都作成の「がん動画」や「両立支援ハンドブック」も社内共有し、啓発を図っている。
6. インクルーシブな職場づくり
- 障がいのある社員による社内コミュニティ「KAKEHASHI」の活動を通じて、多様な働き方への理解を促進。
- がんを含む病気のある社員も、安心して働き続けられる企業文化を醸成。
株式会社松下産業
松下産業ではがんを発症した社員に対して以下のような対応を行っています。
1.情報共有と心理的支援
- グループウェアでの情報共有:病状・業務進捗を在宅から報告。経営層・関係者が励ましの言葉を返し、「会社とつながっている安心感」を醸成。
2.自宅療養中の家族支援
- 人事(HR)から家族へ定期連絡し、負担状況を把握。
- がん相談支援センターと連携し、ケアの分担(24時間を家族でシフト化、口腔ケアを訪問看護へ依頼等)など実用的アドバイスを提供。家族の不安軽減に寄与。
3.収入不安への備え(GLTD)
- 団体長期所得補償保険(GLTD)を導入(既往症や再発も一定条件で補償、精神疾患オプションあり)。
- 傷病手当金終了後の無収入リスクを補填。保険料は年間1人あたり約2万円のプラン。
4. つながり・やりがいの確保
- 在宅勤務制度を活用し、体調に合わせて自分のペースで就業。メール等で双方向コミュニケーションを継続。
- 社内報への闘病記寄稿(本人同意のもと)で、感謝と学びを共有し、社内理解促進につなげる。
また、がんになった社員への対応の経験から以下のような社内施策が生まれました。
5. 二次検査費用の会社負担・がん検診の強化
- 要精密検査の放置防止:二次検査の結果報告を義務化、費用は会社負担。
- 35歳以上を対象に、頸動脈エコー・胃カメラ・マンモグラフィ・乳腺エコー等のがん検診を会社負担で実施。早期発見事例あり。
6.在宅勤務規程の整備
- がん罹患社員のニーズから制度化し、その後も長期療養時の継続就業手段として活用。
7.情報の質担保(社内ライブラリ)
- 産業医監修で書籍・情報を選定し、がん専用ライブラリを社内に設置。玉石混交の情報環境下で正しい知識へのアクセスを確保。

まとめ:両立支援は企業の信頼と生産性を高める
私病への復職支援は、「思いやり」だけでなく「戦略的」な人材マネジメントでもあります。病気を抱えながらでも働き続けられる環境を整えることは、社員のモチベーションや企業イメージの向上にもつながります。
健康経営優良法人の認定を目指す企業は、まずは自社の現状を確認し、できるところから支援策を導入することが大切です。
社員の「仕事と治療の両立支援」を進めるなら、専門家の力を活用しませんか?
健康経営の実現において、私病への対応や復職支援体制の構築には、産業医や外部専門家との連携が欠かせません。
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