この記事はこのような方に向けて書いています。
・社内研修やガイドライン作成のため、ハラスメントの防止方法を知りたい方
・ハラスメントについて知りたい方
現代の職場環境において、ハラスメントは深刻な問題となっています。職場でのパワハラやセクハラは、従業員の心身の健康を害し、職場全体の生産性にも大きな悪影響を及ぼします。これを防ぐためには、企業や組織が積極的にハラスメント防止策を講じ、従業員全体で理解を深めることが不可欠です。
この記事では、ハラスメントの基本的な定義から、法的な対策、企業が取るべき具体的な防止方法までを解説し、ハラスメントを未然に防ぐための実践的な知識を提供します。
ハラスメントとは
ハラスメントとは、相手に対して不快感や苦痛を与える行為や言動のことを指します。意図的であれ無意識であれ、相手が嫌だと感じた時点でハラスメントになります。日本語で「嫌がらせ」や「いじめ」に相当するものです。
ハラスメントは、職場、学校、家庭など、さまざまな場面で起こる可能性があり、被害者に深刻な心理的なストレスやトラウマを与えることがあります。具体的には、以下のような種類が存在します。
- パワーハラスメント(パワハラ): 上司など立場が上の人から、精神的・身体的に不当な扱いを受けること
- セクシュアルハラスメント(セクハラ): 性的な言動によって働く環境が害されたり、対応を理由に労働条件で不利益を受けること。
- モラルハラスメント(モラハラ): 言葉や態度で相手に精神的な苦痛を与える行為で、身体的な暴力を伴わない点が特徴。
- マタニティハラスメント(マタハラ): 妊娠・出産・育児休暇の取得に伴って、上司や同僚から不当な扱いや言動を受けること。
それぞれのハラスメントには適切な理解と防止策が必要です。
ハラスメント防止に関する法的規定
職場におけるハラスメントを防止するために、企業は法律や政府の指針に基づき、実施が「望ましい」とされているものを除いて、措置を必ず実施する必要があります。これはすべての事業主に求められているものであり、業種や規模を問わず、適切に対応しなければなりません。
1.企業の方針を明確化と、その方針の周知・啓発
企業は、ハラスメントが職場で発生しないようにするための方針を明確化し、これを従業員に周知しなければなりません。
- ハラスメントが許されない旨の方針
- ハラスメント行為者に対する厳格な対応方針
- ハラスメント発生時の対処法の明示
これらを行うことにより、全従業員がハラスメント防止に対する共通認識を持つことができます。
2.相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
企業は、ハラスメントに関する相談を受け付ける窓口を設置し、適切な対応ができる体制を整えなければなりません。具体的なポイントは以下です。
- 相談窓口の設置: 誰でも安心して相談できる場所を設ける
- 窓口担当者の教育: 状況に応じた適切な対応ができるよう担当者を質を上げる
- 広く相談を受け付ける: 相談者が抱える問題に応じて柔軟に対応
こうした体制を整えることで、従業員は安心してハラスメントの問題を相談できます。
3.ハラスメントが起きた時の適切な対応
相談を受けた後は、事実関係を速やかに、かつ正確に確認します。
確認できた場合は速やかに被害者に対する配慮の措置、ハラスメント加害者に対する措置を行います。また、事実関係が確認できたかできなかったかに関わらず、再発防止に向けた措置を考えなければなりません。
4.相談者や加害者のプライバシーの保護
被害者に限らず、加害者もプライバシーはきちんと保護されなければなりません。企業は、従業員が職場におけるパワーハラスメントについての相談を行ったことや被害者に限らず事実確認に協力したことを理由とする解雇やその他不利益な取扱いをすることは、法律上禁止されています。また、この旨を従業員に周知・啓発する必要があります。
5.業務体制の整備など、ハラスメントの防止のための措置
特にマタハラについては産休や育休などによる人員不足の解消、妊婦の周りの従業員に過度な負担がいかないような労働環境の整備など、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するためにできることも多いので、業務体制の整備など、ハラスメントの防止のための措置もとても大切です。
これらの措置は、業種・規模に関わらず、すべての事業主に義務付けられています。
ハラスメント防止のためにできること
ハラスメントは従業員の心身の健康に大きな影響を及ぼすだけでなく、職場全体の生産性や士気を低下させる原因となります。法的な義務が課されるケースもありますが、たとえ法的な義務がなくても、企業や組織として自主的にハラスメント防止に取り組むことが望ましいです。
1.コミュニケーションの活性化
職場でのハラスメント防止には、日常的なコミュニケーションの質を向上させることが非常に重要です。ハラスメントが発生しやすい環境は、しばしばコミュニケーションが不足しているか、誤解が生じやすくなっています。以下の取り組みが効果的です。
・コミュニケーションスキル向上のための研修
言葉の選び方や建設的なフィードバックの仕方、相手を尊重した対話術を学ぶことは、誤解や対立を避けるために有効です。特に、リーダーやマネージャーに対しては、部下とのコミュニケーションを円滑にする方法を学ばせることで、ハラスメントの発生リスクを低減します。
・チームビルディング活動の実施
社員同士の信頼関係を構築するために、定期的なチームビルディング活動や社内イベントを行うことが効果的です。これにより、日常的なコミュニケーションが促進され、ハラスメントが発生しにくい健全な人間関係を構築することができます。
2.職場環境の改善のための取組
ハラスメントを防ぐには、業務目標の設定や職場環境の整備が重要です。過剰なプレッシャーや非現実的な目標が、ハラスメントの温床となることが多いため、適切な目標設定が必要になります。
・業務目標の現実的な設定
不適切な業務目標や過度なプレッシャーは、職場でのストレスを増大させ、パワーハラスメントの原因となることがあります。経営者や上司は、従業員の能力や状況に応じた現実的な目標を設定し、達成可能な範囲での指導を心掛けることが重要です。
・業務分担の見直し
過剰な業務負担を避け、適切に分担された職務内容により、従業員間のストレスやトラブルを軽減することが可能です。公平な業務分担は、従業員が感じる不満や対立を減らし、ハラスメント発生のリスクを下げます。
・ストレスチェック制度の導入
職場における心理的負担を定期的にチェックし、従業員のストレス状態を把握することが、ハラスメント防止に役立ちます。早期に問題を発見し、業務環境の改善や個別対応を行うことで、深刻な問題に発展する前に対処することが可能です。 ストレスチェックに限らず、職場環境の改善には産業医の視点が役立ちます。産業医は労働衛生の専門家であるとともに、担当企業の環境や企業文化をよく知っていますので、上手く利用すると良いでしょう。
3.運用状況の把握・見直しの検討
ハラスメント防止策が有効に機能しているかどうかを定期的に見直すことは、継続的な防止策の運用に不可欠です。従業員の意見を取り入れながら、職場環境の改善やハラスメント防止策の見直しを進めることが重要です。
・従業員アンケートの実施
ハラスメントに関する意識や体験を定期的にアンケート調査することで、現状の問題点や改善点を把握することができます。匿名性を確保することで、従業員が率直な意見を述べやすくなり、実際にハラスメントが発生しているかどうかを確認できます。
・フィードバックセッションの開催
ハラスメント防止策の有効性について、従業員と意見交換する場を設けることが重要です。これにより、実際の運用状況に対する従業員の意見や提案を取り入れ、現場に即した改善策を講じることができます。
・ハラスメント防止策の定期的な見直し
法律や社会の動向に合わせて、ハラスメント防止策を定期的に見直すことが必要です。企業内のガイドラインや規則が最新の状態であるかどうかを確認し、必要に応じて更新することで、効果的な防止策を維持することができます。
これらの取り組みを通じて、企業はハラスメントの発生リスクを最小限に抑え、従業員が安心して働ける職場環境を築くことが可能になります。
また、特に就職活動中の学生に対するセクシュアルハラスメントは、正式な採用活動だけでなく、OB・OG訪問の場でも問題化しています。職場におけるパワハラを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、自社以外の従業員、就職活動中の学生等の求職者、インターナショナル参加者、教育実習生、個人事業主などのフリーランスなどに対しても同様の方針を併せて示すのが望ましいです。社外の人間に対しても同じようにハラスメントは問題であり、厳しく対処されることを研修などを通して従業員に周知させましょう。
まとめ
ハラスメントは、職場環境に深刻な影響を与える問題であり、企業としてその防止策を講じることは法的にも道義的にも求められています。パワハラやセクハラなど、様々な種類のハラスメントに対する理解を深め、従業員全員が安心して働ける環境を整えることが重要です。法規に基づいた対策を講じるだけでなく、ハラスメント防止研修の実施や社内ガイドラインの策定、相談窓口の設置に加え、産業医の活用も有効です。産業医は従業員のメンタルヘルスや健康管理を専門とし、ハラスメントによるストレスや健康被害の早期発見と対応に貢献します。
企業がハラスメント防止に取り組むことで、従業員の士気向上や生産性の向上につながり、持続可能な組織づくりが可能になります。また、産業医を定期的に活用することで、従業員の健康維持とハラスメント防止の両面から、さらに健全な職場環境を整えることができるでしょう。
この記事を参考にぜひ積極的なハラスメント防止に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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【参考文献】