【産業医監修】建設業や建築業で必要な産業医の4つの特徴とその選び方【チェックリスト付き】

建設業や建築業で必要な産業医の4つの特徴

この記事はこのような方に向けて書いています

・産業医が予定通り働いてくれずに困っている建設業の人事・労務担当者の方

・産業医をこれから雇おうと考えている建設業の人事・労務担当者の方

建設業界における産業医の役割は、単に労働者の健康を守る以上の意義を持ちます。重機の騒音、高所作業、そしてその他多くの危険有害業務が存在している業界では、そこで活躍する産業医にも専門的な知識と経験が求められます。

多くの建設業の企業が、この「危険・有害業務」への適切な対処法ができる産業医を見つけることに苦労しており、様々な人事・労務担当者から有害業務を担当できる産業医を紹介してほしいという相談があるのが実情です。

今回、自社にあった産業医選びにお困りの人事・労務担当者向けに同業種の産業医でもある私が、建設業の分野でどんな産業医と契約すべきなのかについての記事を作成いたしました。また最後には、簡単な製造業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストも記載しています。

是非、産業医を契約中の方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから雇うことを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会にご確認いただければ幸いです。

もし産業医選定に悩んでいたり、どんなことを任せればいいのかお悩みの方はライフインベスターにお気軽にお問い合わせください。

目次

序論:建設業界の現状と産業医の重要性

建設業界は、ビルや橋での高所作業や、炎天下での重労働路など、労働者に対して特有の健康リスクを抱えています。

死傷災害発生状況の推移(図)

厚生労働省の統計によると、この業界は休業4日以上の死傷災害で製造業に次ぐ発生率を示し、死亡災害においては他業界を上回る割合を占めています特に高所からの転落事故は頻発し、その影響は重大です。

国はこの問題を深刻に受け止め、第14次労働災害防止計画にて、2027年までに全国の85%以上の事業所で転落災害防止を実施し、死亡者数を15%以上減少させることを目標として掲げています。

これに対応するために、産業医の専門的知識は不可欠です。産業医は、安全な作業環境の確保や労働者の健康管理において重要な役割を担います。例えば、高所作業における安全対策や熱中症予防に関する助言は、囲いや手すりの設置、フルハーネスの使用など、適切な休憩時間や水分補給の推奨など、より効果的で具体的な措置に反映されます。

産業医はまた、労働災害予防のための教育やトレーニングを提供し、特に法律で義務付けられている危険・有害業務に従事する労働者への特別教育に重要な役割を担います。

このように、産業医はどの場面でも専門的知識を駆使して、適切な対応策を提案することができる「健康と安全」のスペシャリストとして、企業にとって不可欠な存在です。

次に、建設業界に向いている産業医の4つの特徴について詳しく解説していきます。

建築業界に向いている産業医の4つの特徴

①企業文化をより理解しようとする

「うちの産業医は建築業界の文化を全く理解していない」という不満を抱いたことはありませんか?建築業界は他の業界とは異なる独特の文化を持っており、産業医にもその文化への深い理解が求められます。

  • 安全意識が高い:小さなミスが大きな事故につながる可能性があります。このため、産業医は、高い安全意識を理解し、安全教育や危険予知への具体的な指導と提案が求められる。
  • 厳格な時間管理が必要:プロジェクトの遅れが大きな損失につながるため、産業医は労働者の健康管理とスケジュールのバランスに注目し、長時間労働による健康問題を防ぐ助言をすることができます。
  • 高い技術力が必須:職人の技術力は、「品質は細部に宿る」の通りに品質に直結します。産業医は、健康管理やメンタルサポートを通じて技術力向上に貢献することができます。
  • ハードワークが求められる:産業医は、肉体的に過酷な条件に対応するための体力維持と適切な休憩計画、熱中症予防策を提供することができます。

このように産業医は企業の文化や特定の問題に対して適切な優先順位を設定し、対応する能力が求められます。

つまり、 産業医は、専門知識と経験を活かして、企業の実際の作業環境や労働者の日常に根差した具体的な対策をすることが必要となると言えます。

②労働安全衛生法や有害業務に関して知識がある

あなたの企業は熱中症対策や墜落・転落防止対策の規制強化に迅速に対応できていますか?

建設業界では、こうした法改正への迅速かつ適切な対応が欠かせません。

建設業に関わる主要な法律には、労働安全衛生法や特定の職業病予防規則(例:有機溶剤、粉じんなど)が含まれます。また、建設業法や労働基準法もこの業界に密接に関連しています。

特に有機溶剤や粉じんの曝露対策、高所作業、熱中症対策は、建設業の企業にとって大きな課題です。さらに労働時間や働き方改革に関する最近の法改正もあり、労働時間の厳密な管理対策や各工程へのリスクアセスメントを行う必要があるなど、企業に新たな対策の必要性をもたらしています。

しかし、多くの企業はこれらの法規制を正確に理解し、適切に対応する事が難しいことが実情です。ここで産業医の役割が重要になります。建設業界における産業医は、これらの法律に精通し、各企業の状況に応じた具体的な提案と実行のサポートを行う必要があります。

このように、建設業界における産業医は、健康と安全」の相談相手という側面だけでなく、企業の安全文化の形成と維持において中心的な役割を担うことができるのです。

③迅速なレスポンスと法改正などにも対応して動ける

「緊急時に迅速な対応が必要な状況で、産業医が相談に載ってくれなかった」

という経験はありませんか?建築現場での落下事故などの重大な労働災害が発生した際、産業医は、会社と協力して事故の予防措置、対策の実施、従業員本人や周囲の従業員の身体的・精神的サポートにおいて重要な役割を果たします。

さらに違法行為による業務停止命令を受ける可能性がある場合、産業医は高所作業や危険物の取り扱いに関するリスク評価を行い、労働者の健康状態を確認し、問題の未然防止に努めます。

建築業における産業医は健康管理の専門家であり、企業の安全文化を形成・維持に不可欠です。また、必要に応じて組織改革をサポートし、事業の発展に寄与することも期待されています。

つまり、 産業医は、知識を常にアップデートして、的確なアドバイスを提供することが重要となるのです。

④外国人労働者の対応をしたことがある

「今年度も外国人労働者を積極的に採用します」という方針が多くの企業で採られているかもしれません。

図1:

引用:第14次労働災害防止計画より

人手不足に関する国交省のデータによると、建設業界では2023年に約21万人の人材不足(引用;国交省資料)がみられ、このことが図1の左の図で示すように、技術職における外国人労働者の需要増加につながっています。

しかしながら、この人手不足の解消に伴い、図1の右の図で示すように、言語の壁や文化の違いから労働災害が増加していることも事実です。(第14次労働災害防止計画より)

図2:

引用:第14次労働災害防止計画より

このような状況では、産業医の役割は極めて重要になります。産業医は図2で示すような多言語に対応した安全教育資料を提供し、労働者間の情報伝達不足の解消をサポートや緊密な協力を通じて、労働者の健康と安全を守るための具体的な戦略を提案することができるかもしれません。

産業医は健康管理だけでなく、企業の国際化においても重要な役割を果たすことができます。つまり、外国人従業員の文化背景を理解し、企業と一緒に対策をしていくことが求められるのです

総括:建設業・建築業で必要な産業医の特徴まとめ<簡単チェックリスト付き>

建設業・建築業に求めるべき産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?自社の産業医は、今回の記事で述べたような特徴をしっかり備えていましたか?

建築業や建設業における産業医の役割は多岐に渡り、企業の健康と安全の環境を向上させることが重要となります。そのような企業にマッチした産業医を選択することができると、リスクを低減させることだけでなく、従業員の質の向上や従業員の意識改革に繋がり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与します。

最後に、建設業や建築業に向いている産業医の基準をチェックリストにまとめました。

あなたの会社の産業医は大丈夫??建設業の産業医チェックリスト
【必須条件】
企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
知識や経験の有無 :法律や危険物の管理やメンタル対応などに精通しているか
説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
【副次条件】
外国人労働者の対応:外国人労働者の問題に対応することができるか

これらは建説業・建築業に求められる産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で最も大事になるのは、”企業文化にあった提案をすることのできる産業医”です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。

以上が「建設業・建築業に向いている産業医」についての記事になります。最後までお読みくださりありがとうございました。

弊社でも、「産業医はそんなもんだとコストとして諦めていたけど、産業医も先生によってこんなに違うんですね」と驚かれる人事・労務の方も一定数いらっしゃいますので、先生によってバラツキがあるのも事実と思います。

ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。

大手法人様はもちろん、これから衛生委員会を立ち上げるスタートアップ・ベンチャー企業様への対応経験も豊富にございます。特にメンタル対応についてお困りの法人様から専門性の高さで高くご評価いただいておりますので、産業医の交代を含め、何かお困りやご不満がございましたら、無料のオンライン相談も受けつけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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