この記事はこのような方に向けて書いています。
・VDT作業の際に効果的な休憩の取り方を知りたい管理職の方
・VDT作業で疲労がたまりやすいことに悩んでいる方
「VDT作業」と呼ばれる情報端末を用いた業務は今や当たり前のものとなりました。紙で行っていた面倒な作業をコンピュータが人間の代わりにより速くより正確に行うことで便利になった一方で、そのVDT作業は体にも脳にも大きな負担がかかり、様々な症状を訴える人が増えています。
この記事ではVDT作業による健康被害を予防するためにどのような休憩を取ったらいいのかについて解説します。
VDT作業とは
「VDT」とは、ビデオ表示端末装置を意味する Visual Display Terminals の頭文字を取ったもので、具体的には、ディスプレイなどの文字や図形、グラフィック、動画などを表示する装置のことを指します。
「VDT機器」を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業を「VDT作業」といいます。つまり、パソコンやタブレット端末などを日々の仕事で使っている方は「VDT作業に従事している」と言えます。
VDT作業になぜ適切な休憩が必要なのか
長時間のVDT作業が与える影響
VDT作業を長時間連続して行うと心にも体にも負担がかかり、主に以下のような症状が現れます。
・目のトラブル
画面に集中していると瞬きの回数が減ったり、まぶたを開く幅が増えたりしてドライアイや眼精疲労になります。眼精疲労は目の痛みや頭痛、ドライアイは目の乾き、異物感、眩しさを感じやすくなる、視力低下、頭痛などを引き起こします。
・筋肉の疲労
長時間にわたって同じ姿勢を続けたり指を酷使したりすることで首、肩、腰のこりや
腕、手の痛みやしびれを引き起こします。
・ストレス
連続作業で疲労がたまると頭痛、耳鳴り、イライラ、倦怠感が現れるようになります。
このような症状を予防するためには適切なタイミングで適切な休憩を取ることが大切です。
効果的な休憩のタイミングと頻度
厚生労働省は1時間(を超えない時間)おきに10~15分の「休憩(作業休止時間)」を取ることを推奨しています。ここでいう「休憩」とはVDT作業を休止することであり、一般的な休憩とは別物です。また、作業中に労働者が自分のタイミングで1~2分程度の小休止を1~2回ほど取るよう企業が指導するよう求めています。
この「休憩」を取るタイミングはこれ以上連続で作業をし続けるとミスが増えたり目の働きが下がったりするという研究結果をもとに決められたので、効率的に業務を行う上で最も最適であると言えるでしょう。
詳細は以下のように定められています。
(1) 作業時間等
イ 一日の作業時間
情報機器作業が過度に長時間にわたり行われることのないように指導すること。
ロ 一連続作業時間及び作業休止時間
一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間内において1回~2回程度の小休止を設けるよう指導すること。
ハ 業務量への配慮
作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。
(イ) 作業休止時間は、ディスプレイ画面の注視、キー操作又は一定の姿勢を長時間持続することによって生じる眼、頸、肩、腰背部、上肢等への負担による疲労を防止することを目的とするものである。連続作業後、一旦情報機器作業を中止し、リラックスして遠くの景色を眺めたり、眼を閉じたり、身体の各部のストレッチなどの運動を行ったり、他の業務を行ったりするための時間であり、いわゆる休憩時間ではない。
一連続作業時間の目安として1時間としているのは、パソコン作業がおおよそ1時間以上連続した場合には誤入力の頻度が増すことやフリッカー値が低下する(フリッカー値とは光の点滅頻度のことで、この値の低下は覚醒水準の低下に起因する視覚機能の低下を反映していると考えられる。)、すなわち大脳の疲労と関連する指標値に変化が見られたという研究結果に基づいている。(ロ) 小休止とは、一連続作業時間の途中で取る1分~2分程度の作業休止のことである。時間を定めないで、作業者が自由に取れるようにすること。
厚生労働省『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(令和元年7月12日)』
休憩中にした方がいいこと
短い休憩時間でしっかりと体と脳を休ませるにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは休憩中に行うと良いことを具体的に紹介します。
ストレッチ
長時間同じ姿勢を取り続けると体が痛んだり凝ったりします。軽いストレッチをして体をほぐしましょう。ここでは座ってできるストレッチをいくつか紹介します。
〇首のストレッチその1
- 右手で左側の頭を持って引っ張り、頭を右に倒しながら左側の首を5秒間伸ばす
- 反対側も同じように行う
- これを3回繰り返す
〇首のストレッチその2
- 両手を肩の上に乗せる
- そのまま、両肘で円を描くように、腕を後ろに5回まわす
- 同じように前方向に腕を5回まわす
〇肩のストレッチ
- 息を吸いながら肩をぎゅっと上げる
- 息を吐きながら肩をすとんと落とす
- 1と2を繰り返す
〇足のストレッチ
- 足のつま先を上げながら、 ふくらはぎをのばす
- ふくらはぎに緊張を感じたら、 力を抜く
- 1,2を繰り返す
〇番外編
足首の力を抜いてひざから下をブラブラ振る。
目のトレーニング
VDT作業は近い場所を見続けるので目の筋肉にも疲労がたまり、働きが鈍くなってしまいます。次の方法で機能低下を予防しましょう。
〇目のストレッチ
- 目を閉じる
- 目を大きく開ける
- 眼球を上下左右に動かす(顔は正面に向けたまま、眼球だけを動かす)
- これを3回繰り返す
〇遠くを眺める
遠くを見ることで適度に目の筋肉を使います。目印になる特徴的な建物や山を決めてそれを見るようにするとやりやすいです。
企業ができる4つのこと
従業員の健康を守るためにVDT作業中に適切な休憩を取ることが大切だと分かりました。では企業はこのためにどのようなことができるでしょうか。
1.ルール化
1時間に一度の作業休止時間は完全にルール化し、従業員が確実に作業を止められるような環境づくりをしましょう。
2.声掛け
1~2分の小休止は各個人のタイミングでとりますが、作業に集中しているとついつい休憩を取るのを忘れてしまうものです。定期的に声掛けをしてこまめに休憩をはさむよう促しましょう。
3.情報提供
ストレッチの方法を掲示するなどして従業員が効果的な休憩を取れるように努めましょう。
4.作業環境を整える
『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』では適切な作業環境についても定めています。まぶしすぎずディスプレイの照度とも差がない明るさの維持、必要な機器の提供、各個人が調整でき、移動しやすい椅子の提供など快適な作業環境づくりは従業員の健康維持に大きな影響を与えます。
まとめ
ここまでVDT作業中の適切な休憩の取り方について解説しました。
適切な休憩を取ることはVDT作業による身体的な症状を予防し、従業員の健康を守るだけでなく、作業の効率を上げることにもつながります。この記事で紹介した休憩のタイミング、休憩中にやることなどの情報を日々の業務に生かしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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【参考文献】
1.職場のあんぜんサイト:VDT作業[安全衛生キーワード] (mhlw.go.jp)
2.「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて」の一部改正について(◆令和03年12月01日基発第1201007号) (mhlw.go.jp)
3.VDT症候群とは?PC・スマホの見過ぎによる心身不調の原因やケア方法について解説|スマイル|ライオン株式会社 (lion.co.jp)