「自社で衛生管理者を法的義務として選任する必要がある」とか「衛生管理者の具体的な役割は何か」という疑問をお持ちではありませんか?
また、「産業医の役割と衛生管理者との関係性は?」という疑問を持っている方もいるかもしれません。
特定の条件を満たす企業には、衛生管理者の選任が法律により義務付けられています。そして、50人以上の事業所では産業医の契約が義務付けられています。衛生管理者と産業医の役割は相補的であり、両者が協力することで職場の健康と安全が大きく向上します。
この記事では、衛生管理者の選任基準、適切な人数の確保方法、さらに衛生管理者と産業医の関係について、詳細に解説します。法規制に準拠しながらも、効果的な職場の衛生管理体制と産業医契約の重要性について、実践的なアドバイスを提供しています。
はじめに衛生管理者の選任義務の重要性
「衛生管理者の設置の目的と仕事は何?」と疑問に思っている方も多いはずです。衛生管理者の目的は、職場の安全と従業員の健康を守ることです。そのために、職場巡視による労働衛生環境の把握、有害物質を使用しているのであればその物質の経験性や有害性の把握を行い、健康リスクを最小限に抑えることが重要になります
また企業が契約している産業医と協力し、広範な医学的視点の知識と経験を活かすことでより職場の健康と安全を効果的にサポートすることができるのです。
衛生管理者の具体的な仕事内容
「衛生管理者として何をすればいいのか?」と悩んでいる方もいるかもしれません。
衛生管理者の具体的な仕事内容は、企業における労働者の健康と安全を確保するために重要な役割を担っています。
以下に、衛生管理者の主な職務と責任領域を詳しく説明します。
- 職場環境の健康リスク評価:
- 職場の環境を定期的に評価し、健康リスク(化学物質、騒音、照明、換気など)を特定。
- リスク評価を基に、予防策を提案し、実施。
- 衛生管理プログラムの開発と実施:
- 職場の衛生基準を確立し、健康と安全のプログラムを策定。
- 健康教育プログラムを提供し、従業員の健康意識を高める。
- 法規制の遵守と文書管理:
- 労働安全衛生法などの法規制を遵守し、関連する文書(安全データシート、健康診断記録など)の管理を行う。
- 法律や規制の変更に対応し必要に応じてプロセスやポリシーを更新。
- 健康診断と医学的サポートの提供:
- 定期的な健康診断の実施や職場内の救急処置対応など、医学的サポートを提供。
- 職業性疾患の予防と早期発見に努める。
- 事故・疾病の発生時の対応:
- 職場での事故や疾病の発生時には、迅速に対応し、原因分析と再発防止策を講じる。
- 事故記録の保持と分析を行い、安全対策の改善に努める。
- 環境衛生の監視と改善:
- 職場環境(空気質、衛生設備、廃棄物管理など)の監視と改善を行う。
- 環境衛生に関する課題に対して適切な改善策を提案し、実施する。
以上が衛生管理者ができうる仕事内容になります。これらの仕事を通して、「従業員の健康と安全の向上」を行います。
衛生管理者の選任基準:従業員数による要件
法律により、50人以上の従業員を超える企業は衛生管理者を選任することが労働安全衛生法の第4条で義務付けられています。
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表1:衛生管理者の人数ごとの設置義務
- 50人以上200人以下:1人(衛生管理者)
- 200人を超え、500人以下:2人(衛生管理者)
- 500人を超え、1000人以下:3人(衛生管理者)
- 1000人を超え2000人以下:4人(衛生管理者)
- 2000人を超え、3000人以下:5人(衛生管理者)
- 3000人を超える場合:6人(衛生管理者)
衛生管理者は表1のように企業の規模や業種によって選任義務となる衛生管理者の数が異なります。
表2:専任衛生管理者の必要な事業場
- 業種に関わらず、常時1000人を超える労働者を使用する事業場
- 常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または**一定の有害な業務(労基則)**に常時30人以上の労働者を従事させるもの
表2のようにある特定の事業場では、衛生管理者という仕事に専任させることが必要となります。
このように、法律に則して、適切な衛生管理を確保し法的責任を果たすことが重要となるのです。
選任されない場合の法的な罰則と免除になるケース
選任されない場合の法的罰則
衛生管理者の設置義務は法律によって義務付けられているため、怠った場合は罰金が課せられる可能性があります。
労働安全衛生法第120条によれば、50万円以下の罰金と定められています。設置しないだけで厳しい罰則が科せられてしまうのは、労働者の健康を維持するためには専門知識を有する衛生管理者の存在が欠かせないからです。
衛生管理者を設置せず、従業員の健康管理を怠ってしまうと業務に支障が出るほどの健康被害が出てしまう可能性もあります。設置義務の無視は、労働者の生命、そして企業の立場にも悪影響を及ぼすリスクにつながることを念頭に置いておきましょ
衛生管理者の選任が免除になるケース
- 特定のものを衛生管理の業務に従事させる
- 期間は概ね1年以内に限定
どうしても設置ができない場合は期限付き等で免除されることがあります。
衛生管理者選任プロセス:届出から完了まで
衛生管理者を選任した場合、衛生管理者の選任届を決められた期限内に所轄の労働基準監督署へ届け出る義務があります。ここでは生成管理者選任届の入手方法や提出までの流れ、いつまでに提出が必要なのかを解説していきます。
衛生管理者を選任したら、忘れずに衛生管理者選任届を提出するようにしましょう。
衛生管理者選任届を入手・記入する
産業医選任届は入手方法や記入方法、提出方法にいくつかのパターンがあります。どのように記入して提出するかによって、入手する場所を決めるとよいでしょう。
選任届の入手場所には、以下のようなパターンがあります。
- 厚生労働省のWebサイトからPDFの用紙をダウンロードする
- 「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用する
- e-Gov電子申請のネット申請を利用する
- 労働基準監督署窓口で直接もらう
厚生労働省のWebサイトからPDFをダウンロードした場合と労働基準監督署窓口で直接用紙をもらった場合は、原紙に手書きで記入します。入力支援サービスの利用は、オンライン上で記入して印刷し、紙で提出する方法です。e-Gov電子申請はオンライン上で記入・提出まで行えます。
紙を手元に置きながら記入したい、時間短縮のためにオンラインで済ませたいなど、利用しやすいと思う方法で選任届を入手・記入しましょう
以下、参考PDFになります。ぜひダウンロードしてみてください。
厚生労働省:
「総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告様式」
厚生労働省
「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」
e-Gov電子申請
「産業医の選任報告」
衛生管理者選任届の添付書類を準備する
衛生管理者の選任報告には、以下の書類が必要です。
衛生管理者選任届を選任後14日以内に提出
①衛生管理者選任届
②衛生管理者免許証の写し、または資格証する書面
衛生管理者選任届は、衛生管理者の選任義務が発生してから14日以内に所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。
他にも衛生管理者と同様に従業員が50人以上の事業所には、産業医の選任義務が生じます。
職場の安全衛生を考える上で衛生管理者はこの産業医と連携してことにあたることが重要になります。
衛生管理者と産業医との連携がもたらすメリット
産業医と衛生管理者は、それぞれが持つ独自の専門知識とスキルを活かし、職場の健康と安全の向上に大きく貢献します。それでは大まかなメリットを見ていきましょう
従業員の生産性と健康への影響
- 生産性の向上: 衛生管理者による職場環境のリスク評価と産業医の専門的な健康管理が、従業員がより効率的かつ健康的に働ける環境を実現します。
- 病欠の減少: 両者の連携による包括的な健康リスクの管理は、病欠を減らし、業務の連続性を保ちます。
- 健康増進: 衛生管理者と産業医による健康啓蒙活動が従業員の健康意識を高め、全体的な健康を促進します。
従業員の満足度と忠誠心
- 満足度の向上: 従業員が安全で健康的な職場環境を感じることで、職場に対する満足度が高まります。
- 職場の安全: 連携による効果的な安全管理は、事故のリスクを減らし、従業員に安全な労働環境を提供します。
- 組織への帰属意識の強化: 安全と健康への配慮は、従業員の組織への忠誠心を強め、企業文化への積極的な参加を促します。
職場の文化と協力の促進
- 安全文化の構築: 安全と健康を重視する職場文化が、職場全体の協力と効率を向上させます。
- 健康意識の醸成: 従業員が自身の健康に対して積極的に関与する文化が醸成されます。
- オープンなコミュニケーションの促進: 衛生管理者と産業医の連携は、職場でのオープンなコミュニケーションを促進し、チームワークの強化に寄与します。
このように、衛生管理者と産業医が密に連携を行なっていくことは、従業員の生産性、健康、満足度、および組織全体の協力と文化に多大な利益をもたらします。
結論:職場での衛生管理と産業医の協力の重要性
この記事で最も強調したいのは、従業員が担当する衛生管理者と産業医の連携を行い、お互いの得意分野を活かして動くことが職場にとっていかに重要かということです。主なポイントは以下の通りです。
- 衛生管理者の役割: 職場環境の健康リスクを評価し、予防策を提案・実施することで、職場の安全衛生基準を確立します。
- 産業医との連携: 従業員の健康状態の監視や医学的アドバイスを提供し、健康診断や職場適応支援を行います。
ここが協力することで、従業員の健康と安全を確保し、生産性を向上させることができます。そして、産業医との契約は、職場の衛生状態を改善し、従業員の福祉を高める重要な一歩となります。そして、企業にとって『健康と安全』を向上させるだけでなく、最終的な生産性向上に繋げることができるのです。
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