『両立支援』という言葉を聞いたとき、皆さんはどのようなイメージを持ちますか?この用語は一部の方にとってはまだ馴染みのないものかもしれませんが、健康寿命の延長とともに、病気を持ちながら働く方や、育児をしながら働く方が増えています。これらの従業員を支援するために、職場での『両立支援』が社会的にも企業にとっても重要な課題となっています。
たとえば、柔軟な勤務時間の設定や、在宅勤務の選択肢を提供することで、子育て中の従業員がキャリアを継続しやすくなります。また、病気を持つ従業員に対しては、特別な配慮や休息の必要性を考慮した勤務体系を考えることが求められます。このような具体的な措置は、『両立支援』の一例です。
今回の記事では、『両立支援』の人事・労務担当者に向けて、会社に対して伝えやすいように両立支援の重要性やメリットと簡単な両立支援のアプローチ方法について詳しく解説していきます。
両立支援の定義と重要性
両立支援は、従業員が仕事と私生活のバランスを取りやすくするために企業が行う一連の施策です。この支援は、従業員が職場において最高のパフォーマンスを発揮できるようにすることを目的とし、同時に企業の総合的な生産性と社員の満足度を向上させることを目指します
両立支援の必要な場面は、特に育児や介護、健康上の課題、そしてメンタルヘルスの問題に直面した場合におきます。これらのニーズに効果的に応えることは、従業員のエンゲージメントを高め、長期的な人材確保につながります。
上図は、少子化と男女共同参画に関する専門調査会が行った「管理者を対象とした両立支援策に関する意識調査」の結果です。これによれば、企業管理者の多くが両立支援の重要性を認識しており、両立支援を行った際に企業にとってのプラスの影響が大きいと感じた管理職が多かったことを示しています。
また、がんなど治療と仕事の両立に取り組む事業所は4割強でしかなく、中小規模企業になればなるほど対策がされていないとのことが『労働安全衛生調査』で明らかになっています。
上図は、企業の離職者に占める介護離職の割合を示すグラフである、健康問題以外でも介護による離職が増加している傾向にあるとのことです。
現代の労働環境における両立支援の必要性
企業規模に関わらず深刻化する人手不足:
少子高齢化により、大企業から中小企業まで幅広い規模の企業が人手不足に直面しています。特に介護や育児に関わる雇用者の減少がこの問題を深刻化させています。たとえば、介護を理由に退職する従業員が増加しており、企業はこうした状況に対応するために、柔軟な勤務体系や在宅勤務のオプションを提供することが必要です。
多様な雇用形態への適応:
近年、フリーランス、短時間雇用など多様な雇用形態が増加しています。これらの従業員にも健康保険や有給休暇、育児支援などの両立支援策を提供することで、企業は柔軟性を持ちながらも安定性を確保できます。例えば、柔軟な勤務時間の設定やリモートワークのオプションは、多様なライフスタイルに合わせた働き方を可能にします。
世代ごとの異なる働き方への対応
現在の労働市場はさまざまな世代が混在しています。20代30代のも若者は、特に仕事と生活のバランスを重視しています。これらの世代のニーズに応えるために、企業は柔軟な勤務体系や両立支援策を提供することが重要です。例えば、柔軟な勤務時間の設定や育児支援は、働きやすい環境を提供し、才能ある従業員を惹きつけることができます。
両立支援の基本的な3つの考え方
①個々の事業場および労働者の状況に応じた対応
両立支援は、それぞれの事業場と労働者一人一人の状況に合わせてカスタマイズされるべきです。例えば、小規模事業では直接的なコミュニケーションが可能な一方で、大企業ではより構造化されたアプローチが必要です。労働者一人ひとりのニーズを理解し、個別の職場環境に適した柔軟な対応策を実施することが重要です。
②労働者と関係者間の共通理解の促進
労働者と経営層、人事部門などの関係者間で共通の理解を築くことが不可欠です。定期的なミーティング、ワークショップ、アンケートを通じて、一人一人が両立支援に関する認識を共有していくことが重要になります。
③医療と職業のバランス:産業医の役割
産業医は、従業員の健康管理と職業生活のバランスを保つためのキーパーソンです。定期的な健康診断、健康に関するアドバイス、メンタルヘルスのサポートなど、従業員の健康を維持し、職場での生産性を高めるための具体的な支援を提供します。また、病気や怪我からの復帰をサポートすることで、労働者が安全かつ健康的に働き続けられるようにします。
このように、両立支援の基本的な考え方は、個々の状況に合わせた対応、関係者間の共通理解の促進、そして医療と職業のバランスを保つことに重点を置いたものでなければなりません。これらの要素を組み合わせることで、労働者が働きやすい環境を作り出し、企業全体の生産性と満足度を高めることができます。
両立支援の具体的な3つのアプローチ
①労働契約の柔軟性
- フレキシブルな働き方: 労働契約に柔軟性を持たせ、従業員がプライベートと仕事のバランスを取りやすくします。例えば、フレックスタイム制度や在宅勤務などの多様な働き方を提案することで、従業員の生産性と満足度を高めます。実際に、子供の発熱や、介護などでフレックス勤務を求めている労働者も多く、通常の8時半から17時までの勤務形態ではなくその人それぞれにあった勤務体制が必要になってきています。
②育児・介護支援
- 家庭とのバランスを支援: 育児休暇や介護休暇、短時間勤務制度を提供することは特に重要です。国としても子育て支援や介護支援により重要になってきている傾向にもあるため、企業としても国の方針に合わせて柔軟に就業規則を含めて対応していくことが重要になってきています。
③健康とメンタルヘルス
- 健康支援の充実: 定期的な健康チェック、ストレス対策、産業医との連携を通じて、従業員の身体的、精神的健康をサポートすることが重要になっています。従業員が健康的な生活を過ごすことでより良いモチベーションで仕事を行うことができるためそのことがより重要になってきます。
今後このような両立支援を支援するアプローチは、従業員がよりバランスの取れた働き方を実現し、企業が優秀な人材を確保し維持するために不可欠です。人事労務担当者は、これらの具体的な支援策を実施することで、従業員の満足度を高め、企業の生産性向上に貢献することができるのです。
両立支援による3つのメリット
①人材の確保と定着
- 働きやすさが人を引きつける: 両立支援は従業員にとって大きな魅力となります。家庭と仕事のバランスが取れることで、優秀な人材の獲得ができるようになるかもしれません。実際、育児を行うために泣く泣く仕事をやめる方も多くおり、企業にとっても優秀な人材に働き続けてもらうためにそのようなプログラムを準備することは重要になってくるのです。。
②モチベーションと生産性の向上
- 幸せな従業員がより生産性が上がる: バランスの取れた環境では、従業員はより満足し、モチベーションが高まります。例えば、柔軟な勤務時間(フレックス勤務)を設けた企業では、従業員の生産性が向上したというデータも出ています。社会が多様化する中で、多種多様な働き方を容認することが企業の成長にとって必要不可欠になることになるかもしれません。
③企業イメージの向上
- 企業のイメージの向上: 現在、国としても両立支援を応援しており、企業にとって両立支援に対しての対策をすることが社会的責任になってきています。そのため、両立支援に対して先進的な対応をすることで、今後企業価値が高まる可能性があります。
以上が大まかなメリットとなります。この両立支援を行うには、どの程度の両立支援が必要なのか、企業としてどのようなことができるのかというような、適切な知識を持って対応することが必須になります。そのため、この実現をよりスムーズに行うためには、企業が契約している産業医が必要不可欠になります。
総括:効果的な両立支援と産業医契約の重要性
両立支援の戦略的アプローチ
企業がより成功していくためにはそこで働く従業員の幸福度がより重要になるはずです。企業が両立支援の対策を行うことで、仕事と生活のバランスを適切に保つことができ、このことが生産性の向上につながるはずです。フレキシブルな勤務体系やストレス管理やワークライフバランスの促進は、従業員が自分のリズムで働き、ストレスを軽減する手段として効果的と言えるでしょう。
産業医の重要性
産業医は、従業員の健康と職場の安全を守る重要なパートナーです。定期的な健康診断、職場環境の評価、そして緊急時の対応計画の提供により、従業員の健康を維持し、生産性を保証します。産業医の存在は、職場の安全性と従業員の信頼を高める要素となります。
結論:両立支援と産業医の連携の重要性
職場での両立支援策と産業医の専門的な介入は、企業の持続可能な成長に不可欠です。従業員のワークライフバランスの向上と健康の維持は、企業の競争力を高め、長期的な成長を実現します。専門的な知識のある産業医の協力のもと、企業にとって最適な両立支援を行うことで、企業は従業員とともに成長を続けていく事ができるのです。
最後に両立支援を行うための人事労務担当者チェックリスト
<実施前の準備>
□従業員のワークライフバランスに関するニーズを把握
□柔軟な勤務体系の導入の可能性を評価
□産業医との連携方法を確立
<プログラムの開発と実施>
□育児・介護支援プログラムの開発
□メンタルヘルスのケア体制の確立
□社内コミュニケーションの向上
<継続的な評価と改善>
□労働法規と社内ポリシーの遵守確認
□両立支援策の効果の定期的な評価
□従業員からのフィードバックに基づく改善策の実施
これは両立支援のためにチェックリストの一例です。、この項目の中で、最も大事になるのは、『企業文化を考えて両立支援を進める事』です。その際に、企業と契約している産業医と十分連携を行い、実行する事が不可欠になるでしょう。
『両立支援』という言葉を踏まえ、ライフインベスターは企業の成功が従業員の健康と幸福に深く根ざしていることを理解しています。私たちは、貴社が日々直面する多様な課題に対し共感し、それぞれのニーズに合わせた専門的なサポートを提供します。ライフインベスターに所属する産業医は、コミュニケーション能力と専門知識の両面で厳しい基準を満たしており、従業員一人ひとりの心身の健康を支え、企業全体の生産性の向上に貢献します。
私たちは大手企業だけでなく、新たな挑戦を始めるスタートアップやベンチャー企業にも、特にメンタルヘルスの分野で実績豊富なサポートを提供しています。
ライフインベスターでは、従業員の健康が企業文化の根幹であると信じ、具体的な手段を提供しています。産業医の契約や交代、従業員の健康管理に関するご相談があれば、いつでもお気軽に無料のオンライン相談をご利用ください。私たちはいつでも皆さんの信頼できるパートナーとして、皆さんのニーズに対応し、サポートを提供したいと考えています。
参考文献:
・治療と両立支援ナビ(ガイドライン付き)
・労働安全衛生調査