食品製造業に最適な産業医の選び方:重要な4つの特徴を解説

この記事はこのような方に向けて書いています

・食品製造業分野で産業医をこれから雇おうと考えている担当の方

・食品製造業分野で産業医を雇う際にどんなことが必要なのか詳しく知りたい

食品製造業は、生鮮食品や加工食品の生産を通じて、我々の日々の生活に不可欠な役割を果たしています。この業界では「安全と衛生」が最優先事項であり、これらの基準を維持するためには、専門的な知識と経験を持った産業医の存在が不可欠です。特に、地場産業的な特徴を持ち、従業員300名未満の中小規模で運営される多くの事業場では、産業医の役割がさらに重要です。

月に1度の巡視では、産業医は従業員の健康状態だけでなく、労働環境の安全性も評価します。これは、不慮の事故や職業病の予防に直結し、従業員の生命と企業の生産性を守るために不可欠です。そのため、企業文化に合った、適切な知識と経験を持つ産業医を選ぶことが、企業の成功に直接影響を与える言えます。

今回、自社にあった産業医選びにお困りの人事・労務担当者向けにどんな産業医と契約すべきなのかについて記載しています。また最後には、簡単な食品製造業に向いている産業医を見分けるためのチェックリストを記載しています。

是非、産業医を契約中の方は自社の産業医がこの条件を満たしているか、産業医をこれから契約することを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会にご確認してみてください。

目次

食品製造業界での労働災害の現状

食品製造業界は、原材料を加工・組み立て・製品を販売する業態として定義されます。この業界は、他の製造業と比較しても労働災害が多いことが特徴です。

厚生労働省の「労働者死傷病報告」や総務省「労働力調査」によると食品製造業界における休業4日以上の死傷災害は製造業全体の2倍以上の発生率を示しています。

労働災害の主な原因

  • 労働集約型産業人手による作業が多く、労働災害のリスクが高まります。
  • 加熱調理を行う:水や油を使うことによる転倒や火傷のリスクが存在する
  • 刃物を使用する作業切創事故(包丁などで指を切るなど)のリスクが存在する

そのほかにも同じ作業の繰り返しが多く、立ち作業が比較的多く疲労が溜まりやすいなどの特徴があります。

つまり、食品製造業の企業を担当する産業医はそれぞれの業務でおきる可能性のある事故の危険を早期に認識し、法改正などがあった際には、これを事業所に迅速に伝達し、適切な対策を講じる責務を担っています。

この責務を果たす上で業種や業界への知識や理解は必須となり、逆にこの理解がない産業医に仕事を任せてしまうと、会社側は短期や長期目線でも、業務用災害などのリスクを抱えることになってしまうかもしれません。

それではもう少し詳しく食品製造業分野で雇うべき産業医の特徴について、掘り下げて考察していきます。

食品製造業界に向いている産業医の4つの特徴

1.企業文化をより深く理解しようとする

「うちの産業医は業界の仕組みを全く理解していない」という不満をいただいたことはありませんか? 食品製造業界は、他の製造業とは異なる文化を持っており産業医にもその文化への深い理解が求められます。

  • 安全衛生への意識が高い:小さなミスが大きな事故につながる可能性もあります。産業医は、このリスクを認識し、労働者への教育や危険予知に関する指導を行う必要があります。
  • 厳格な時間管理が重視される:製造工程の遅れは大きな損失につながります。産業医は労働者の健康管理とスケジュールのバランスに注目し、長時間労働による健康問題を防ぐ助言を行うことが提供することが求められます。
  • ハードワークが求められる:食品製造業界では長時間の立ち仕事が求められるなど、ハードワークが求められます。産業医は労働者が健康を維持しながら、高い生産性を保つために、適切な健康管理と職場環境の改善を促進する必要があります。

産業医は企業の文化や特定の問題に対して適切な優先順位を設定し、対応する能力が求められます。専門知識と経験を活かして、企業の作業環境や労働者の日常に根差した具体的な対策をすることが不可欠になります。

2.食品衛生管理における専門知識を持つ

「食中毒が起きないようにより安全衛生基準が厳しくなる」といったニュースを耳にしたことがあることがあるかもしれません。実際に食品製造業界では産業医には、食品衛生管理に関する知識も同時に求められます。特に、以下の領域における専門性が必要になることがあります。

便検査の重要性

・食品製造に従事する従業員の健康状態の監視:食品製造業において、従業員の健康は食品の安全性に直結します。便検査を通じて、食中毒の原因となる病原菌の保有者を早期に特定し、対策を講じることが重要です。

ノロウイルスによる食中毒予防:食品製造業ではノロウイルス感染症のリスクが常に存在します。産業医は、感染症の予防と拡散防止に関する知識を持ち、適切な衛生管理指導を行うことが求められます。

HACCPシステムの理解

  • 食品安全管理の国際基準HACCP:Hazard Analysis and Critical Control Point(HACCP)システムは、食品の安全を保証するための国際基準です。産業医は、HACCPの原則を理解し、その実施に関する助言やサポートを行うことが求められることがあります。

食品衛生管理に関するこれらの知識は、食品製造業界での産業医の役割を効果的に果たすために不可欠です。これらの専門知識を持つ産業医は、食品製造業界の安全性と衛生水準を高める上で重要な役割を担います。

3.迅速なレスポンスと法改正などにも対応して動ける

「緊急時に迅速な対応が必要な状況で、産業医が対応してくれなかった」という経験は、企業にとって大きな不利益につながる可能性があります。特に食品製造業界では、産業医と協力を行い、迅速な対応をすることが極めて重要です。

緊急事態への迅速な対応

  • 重大な労働災害の発生時:食品の落下や巻き込まれ事故などの重大な労働災害が発生した場合、産業医は迅速に対応し、事故の予防措置や対策の実施を行います。
  • 従業員の身体的・精神的サポート:事故による従業員本人や周囲の従業員のサポートも産業医の重要な役割です。

法改正への対応

  • 法的規制の変更に対する迅速な対応:食品製造業に関連する法律や規制が変更された場合、産業医はこれらの変更に迅速に対応し、適切なアドバイスや対策を提供します。

緊急事態や法的変更に迅速に対応することは、企業の損失を最小限に抑え、労働者の安全と健康を守るために不可欠です。産業医は、これらの状況において、企業と緊密に協力し、迅速に必要な措置を講じることが求められます。

4.外国人労働者の対応をしたことがある

「人手不足を補うために外国人を採用することになった”という会社もあるのではないでしょうか?」食品製造業界では、常に有効求人倍率が全産業平均で約3倍(図3:参照)になっており人手不足が常態化しています。

引用:第14次労働災害防止計画より

そしてそれを補うために多くの企業が外国人労働者などの多様な層を採用しています。しかし、その反面、文化的な違いから作業ミスによる労働災害が起きていることも事実です。実際、政府が発表しているデータにも外国人労働者の労働災害発生数は10%高い傾向にあるとの報告あります。

  • 多言語に対応した安全教育資料の提供:産業医は多言語に対応した安全教育資料を提供し、労働者間の情報伝達不足を解消するサポートを行います。
  • 企業との緊密な協力:企業と協力し、労働者の健康と安全を守るための具体的な戦略を提案します。

産業医は、健康管理のみならず企業の国際化においても中心的な役割を担います。外国人労働者の文化背景を理解し、企業と一緒に対策を進めることが求められます。

食品製造業における産業医のチェックリスト

食品製造業に求められる産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?自社の産業医は、今回の記事で述べたような特徴をしっかり備えていましたか?

食品製造業における産業医の役割は多岐に渡り、企業の健康と安全の環境を向上させるために重要となります。そして、企業にマッチした産業医を選ぶ事ができると、労働災害のリスクを低減させることだけでなく、労働環境の質の向上と従業員の意識改革につながり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与するのです。

もし企業が産業医を選ぶ際には、その経験、知識、技術、およびコミュニケーション能力を総合的に評価していくことが重要です。今回挙げた特徴も有効活用して企業にあった産業医を選定できれば幸いです。

最後に、食品製造業の企業が採用すべき産業医の基準をチェックリストにまとめました。

あなたの会社の産業医は大丈夫??食品製造業の産業医チェックリスト
【必須条件】
企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
知識や経験の有無 :労働安全衛生法などの法律や働き方改革などに精通しているか
説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
【副次条件】
外国人労働者への対応の有無:企業と相談して臨機応変に対応できるか

これらは製造業の会社が雇うべき産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で、特に大事になることは”企業文化にあった提案をすることのできる産業医”です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません。

食品製造業に最適な産業医の特徴」の記事をご覧いただきありがとうございます。

「食品製造業に最適な産業医の特徴」の記事をご覧いただきありがとうございます。

多くの人事・労務担当者様が産業医を単なるコストと考えがちですが、実際には医師の専門性によって大きな違いが生まれます。ライフインベスターズでは、この事実に基づき、優れたコミュニケーション能力と高い専門性を兼ね備えた産業医を厳選しています。

ライフインベスターズでは、大手企業からスタートアップ、ベンチャー企業まで、幅広い組織のニーズに対応してきた経験を持ち、特にメンタルヘルス対応において高い評価を得ています。産業医の交代や職場のメンタルヘルス問題に関するお悩みがある場合、ライフインベスターズは無料のオンライン相談を提供しております。お気軽にご連絡いただければ幸いです。

参考文献:
・産業保健21(2012.1第67号)
・食品製造業における労働力不足克服ビジョン(農林水産省)
・第14次労働災害防止計画(厚生労働省)

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