この記事はこのような方に向けて書いています
・産業医が予定通り働いてくれずに困っている小売業の人事・労務担当者の方
・産業医をこれから雇おうと考えている小売業の人事・労務担当者の方
小売業で働かれている人事・労務担当者は、店先での転倒防止対策や、店舗ごとに人間関係や従業員の心身不調の問題で悩まれている方が多くいらっしゃいます。このような課題に対処するため、産業医の役割は不可欠です。産業医は、従業員の健康を守り、労働災害を予防し、企業の生産性を高めるための重要な役割を担います。(参考:小売業における労働災害の実態と防止活動の推進方策)
具体的には、小売業での産業医の役割は、従業員のストレスマネジメントや作業環境や職場環境の改善が含まれます。例えば、クレーマー対応による従業員のストレスを軽減するためのセルフケアやラインケアの方法などの介入などです。
産業医の選定にあたり、小売業界の独特な課題を理解し、従業員のニーズに応じた健康管理を提供できる専門家を探すことが重要です。効率的な労務管理は従業員の満足度と企業の成長を促進させるでしょう。
この記事の最後には、小売業に最適な産業医を見分けるための簡単なチェックリストを提供しています。既に産業医と契約している場合は、現在の産業医が小売業界の要求を満たしているか、産業医をこれから契約することを考えている方は産業医にとってどんなことが必要なのかをぜひこの機会に確認してみてください。
小売産業における労働災害の現状と産業医の重要性
「店先で商品が落ちてきて従業員が怪我をしたらしい」などと聞いたことはありませんか?小売業で働く従業員の中にも、小売業の労働災害と聞いてあまりイメージできない人がいるかもしれません。
上の図が示すように、小売業の労働災害は、荷物の搬入や、商品の陳列の際の転倒や転落などが起きており、厚生労働省が発表している全体の約半数を「転倒」が占めています。
国としてもこの問題を深刻に受け止め、第14次労働災害防止計画にて2027年までに男女ともに労働災害(特に転倒や転落)を減らすことを掲げています。
産業医は、この状況において、企業の労働者の健康と安全を保護し、企業の生産性と評判を維持するため、迅速に必要な措置を講じるサポートをするという重要な役割を担っています。
次に、小売業界に向いている産業医の4つの特徴について詳しく解説していきましょう。
企業文化をより理解する
「うちの産業医は小売業の文化や背景を全く理解していない」という不満を抱いたことはありませんか?小売業界は他の業界とは異なる文化を持っており、産業保健活動を迅速に行っていくために産業医にもその文化への理解が求められます。
- 消費者との直接的な関わり:産業医は顧客との直接的な関わりから生じるストレスや職場環境の影響を理解し、サポートすることが求められます。
- 対策例:ストレス対策(セルフケア、ラインケア)のワークショップ
- 販売チャネルの多様化:オンラインとオフラインの販売が混在している小売業界では従業員の健康管理についても多様なアプローチを行うことができます。
- 対策例:オンライン作業における眼の疲れや姿勢の問題への対処
- 在庫管理と供給チェーン:物理的な作業が多い在庫管理では、作業環境の改善や労働者の身体的健康の維持が重要となります。
- 対策例:定期的なストレッチ休憩の導入
- 市場動向の追跡:トレンドの変化に伴う職場のストレスを理解し、従業員のメンタルヘルスをサポートすることが重要です。
- 対策例:メンタルヘルスのための相談窓口、変化への対応のトレーニング
- 顧客体験の向上:従業員の幸福が直接顧客体験に影響を与えるため、産業医は従業員の健康と幸福を維持することで結果的にビジネスの成功に貢献できます。
- 対策例:従業員のワークライフバランスの改善、健康促進プログラムの提供など
小売業における産業医の役割は単に病気や怪我を予防するだけでなく、従業員の健康管理、メンタルヘルスのサポート、そして職場環境の改善を通じて、全体のビジネスに貢献することが必要となります。このためには、従業員および経営層との強固なコミュニケーションをが必要となります。
安全衛生管理の分野に専門的な知識がある
「あなたの企業は墜落や転落防止の対策を適切に行えていますか?」小売業界は、商品の補充や大量の荷捌きによる転倒や転落のリスクが高いため、安全衛星管理には特別な注意が必要です。産業医はこれのリスクの軽減に重要な役割を果たすことができます。
リスクの特定と評価
- 労働災害のデータの詳細な分析:統計的なデータに加え、従業員からのフィードバックや過去の事故報告を利用して、企業内の主要な災害の特定を行います。
- リスク評価の実施:専門家と共同で、小売環境のリスク評価を行い、実情に基づいた管理計画を策定します。
予防措置と従業員教育
- 実用的な予防措置の導入:具体的な作業環境改善案や事故防止のための装置の導入
- 従業員向けの継続的な教育と訓練:労働災害の認識向上を目的とした、定期的な教育プログラムの実施
- 予防的アプローチの推進:災害が発生する前に、予防策を計画し、従業員の意識づけ
この中で、産業医は各企業の状況に応じた具体的な提案と実行のサポートを提供し、リスク管理においては、中心的な役割を担うことができます。
このように、小売業界における産業医は、単に「健康と安全」の相談相手とであるだけでなく、企業のリスク管理において重要な役割を担うことができます。産業医は、知識だけでなく、企業文化に合わせた提案をすることが求められています。
法改正への迅速な対応と予防的アプローチ
「緊急時に即時対応が求められる状況で、産業医が相談に載ってくれなかった」という経験はありませんか?小売業界は転倒や転落だけでなく、同僚や顧客との関係性から生じるメンタルヘルスの問題にも直面しています。メンタル不調者への早期の対応は企業にとっても重要な課題です。
国の統計によると、仕事で強い不安やストレスを感じる労働者は約50%にも上る(厚生労働省資料より)
という報告もあります。このような背景もあり、国としても安全衛生法の改正を行い、ストレスチェックの義務化や職場改善の推進など、企業にメンタルヘルス対策を求めています。
法改正への迅速な対応
- 最新の法律情報の把握:産業医は、最新の法律改正や国の方針に対して常にアップデートされた情報を持つことが求められます。
- 法改正に基づく行動計画の策定:新しい法律や規制に基づいて、企業内での具体的な行動計画の立案と実行をサポートします。
予防的アプローチの強化
- メンタルヘルス対策の推進:ストレスチェックの実施、メンタルヘルスに関する教育プログラムの提供、高ストレスや過重労働の従業員への面談などを通じて、メンタルヘルス対策を強化します。
- 職場環境の改善:職場のストレス要因を特定し、それらを軽減するための具体的な改善策を提案します。
このように、小売業界における産業医は、健康と安全の問題だけでなく、法改正への迅速な対応と予防的なアプローチにおいても中心的な役割を果たすことができます。産業医は、企業と従業員の健康を守るために、法律の変化に対応し、効果的な対策を実施することが求められています。
多文化的な労働環境への対応能力
「外国人を労働者として雇う方針らしい」という事を耳にした方もいるかもしれません。
インバウンドの増加に伴い、外国から来た旅行客などに接客を行うというニーズの増加に伴い外国人労働者の需要がより高まっています。
しかし、外国人と日本人の労働者間の言語の壁や文化の違いから労働災害が増加していることも事実です。
企業には、
- 異文化間の調和とコミュニケーション:多様な労働者の背景を理解し、異なる文化間でのコミュニケーションを円滑にする技術。
- 多言語対応と教育プログラムの実施:多言語での安全衛生教育とコミュニケーション手法の開発と適用。
などが求められています。
このような状況では、産業医は健康管理だけでなく、安全教育資料などを配布し、労働者間の情報伝達不足の解消をサポートします。
産業医は健康管理だけでなく、企業の国際化においても重要な役割を果たすことができます。
総括:小売業界における産業医のチェックリスト
小売業に求められる産業医の特徴について考察した記事はいかがでしたでしょうか?自社の産業医は、今回の記事で述べたような特徴をしっかり備えていましたか?
小売業における産業医の役割は多岐に渡り、企業の健康と安全の環境を向上させていくことが重要になります。そのような企業にマッチした産業医を選択することができると、リスクを低減させることだけでなく、従業員の質の向上や従業員の意識改革に繋がり、結果的に企業の生産性の向上にも寄与します。
最後に、小売業に向いている産業医の基準をチェックリストにまとめました。
あなたの会社の産業医は大丈夫??小売業の産業医チェックリスト
【必須条件】
□ 企業文化への理解 :企業の現状を理解し、適切なコミュニケーションがとれるか
□ 知識や経験の有無 :法律や危険物の管理やメンタル対応などに精通しているか
□ 説明のわかりやすさ:専門用語ではなく従業員にわかりやすい用語を使えるか
□ 傾聴力:経験や知識だけを主張せず、会社の状況を踏まえながら一緒に考えてくれるか
□ 迅速な連絡対応:メールや電話は当日中か翌日には返事があるか
【副次条件】
□ 外国人労働者の対応:外国人労働者の問題に対応することができるか
これらは小売業に求められる産業医の条件の一例です。そして、この項目の中で最も大事になるのは、”企業文化にあった提案をすることのできる産業医”です。現在の産業医がこの条件を満たさない場合は、変更を検討する価値があるかもしれません
以上が「小売業に向いている産業医」についての記事になります。最後までお読みくださりありがとうございました。
ライフインベスターズでは、コミュニケーション能力や専門性など、書類や面接審査を通じて一定の基準を満たした厳選した産業医が所属しております。
大手法人様はもちろん、これから衛生委員会を立ち上げるスタートアップ・ベンチャー企業様への対応経験も豊富にございます。特にメンタル対応についてお困りの法人様から専門性の高さで高くご評価いただいておりますので、産業医の交代を含め、何かお困りやご不満がございましたら、無料のオンライン相談も受けつけておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。