この記事はこのようなお悩みをお持ちの方に向けて書いています。
・従業員50人未満の事業場だが、ストレスチェック義務化の対象になると聞いて何から準備すればよいかわからない
・50人以上の事業場があり、50人未満の支社・拠点の対応をどうすべきか検討している
・義務化の時期や具体的な対応内容を正確に把握しておきたい
2025年5月14日、労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律が公布されました。この改正により、これまで努力義務にとどまっていた従業員50人未満の事業場にも、ストレスチェックの実施が義務化されることが正式に決定しています。
施行時期は公布後3年以内に政令で定める日とされており、最長で2028年5月までに義務化される見込みです。ただし政令によって施行日が早まる可能性もあるため、まだ先の話と油断せず、今から準備を進めておくことが重要です。
この記事では、法改正の概要から中小企業が直面する課題、今から取り組むべき具体的な準備までを、人事担当者・経営者向けにわかりやすく解説します。
なぜ今、50人未満の事業場への義務化が決まったのか

小規模事業場のストレスチェック実施率の低さ
厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、ストレスチェックを実施している事業場は、50人以上の事業場では9割近くにのぼる一方、10〜49人規模では33.5%にとどまっており、メンタルヘルス対策の格差が長年の課題となっていました。
精神障害の労災件数が過去最多を更新
厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労働災害の支給決定件数は1,055件と、統計開始以来初めて1,000件を超えました。労働者のメンタルヘルス対策の徹底が喫緊の課題となっています。
小規模事業場で働く人は全体の半数以上
全事業場の95.9%が小規模事業場であり、50人未満の事業場で働く人は全体の半数以上にのぼります。50人未満の事業場をメンタルヘルス対策の対象外に置き続けることは、社会全体の課題解決として限界があると判断されたのです。
こうした背景から、今回の法改正によって企業規模を問わず、すべての事業場でのストレスチェック実施が義務化される方向に舵が切られました。
改正法の主なポイント整理
人事担当者として押さえておくべき改正内容を整理します。
義務化の対象
これまでストレスチェック実施が義務付けられていたのは常時使用する労働者が50人以上の事業場のみでした。改正後は従業員数にかかわらず、原則すべての事業場が対象となります。
注意点として、ここでいう従業員数は会社全体の人数ではなく、各事業場(職場)に常勤する従業員数であることを押さえておきましょう。本社が50人以上でも、支社・営業所が50人未満であれば、その拠点も今回の義務化の対象です。
施行時期
2025年5月14日に公布され、ストレスチェックに関する部分は公布後3年以内に政令で定める日までに施行されます。遅くとも2028年5月までには全事業場での義務化がスタートする見通しです。
労基署への報告義務は課さない方針
50人未満事業場については、負担軽減の観点から労働基準監督署への報告義務は課さない方針とされています。ただし、ストレスチェックの実施自体と高ストレス者への面接指導は義務となる点に変わりはありません。
厚生労働省がマニュアルを公表済み
改正法の公布を踏まえ、50人未満の小規模事業場に即した実施体制・実施方法についてのマニュアルが厚生労働省の検討会にて作成・公表されています。実施体制の設計にあたっては、このマニュアルを参照することをおすすめします。
50人未満の事業場が直面する3つの課題
義務化に向けて準備を進める上で、50人未満の中小企業には特有の課題があります。
課題① 実施者となる専門家の確保
ストレスチェックの実施者は、医師・保健師・一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士のいずれかでなければなりません。50人未満の事業場の多くは産業医を選任していないため、実施者をどう確保するかが最初の壁になります。
対応策としては以下が有効です。
- 産業医紹介サービスを活用して嘱託産業医を選任し、実施者を兼ねてもらう
- 地域産業保健センターを活用する
- 実施者の確保も含めてサポートしてもらえる外部委託サービスを利用する
課題② プライバシー保護への懸念
50人未満の企業では従業員同士の距離が近く、「上司や同僚に自分のストレス状態が知られるのではないか」と、回答をためらう従業員もいます。
この懸念を払拭するために最も効果的なのは、外部委託によって結果管理を社外に置くことです。外部機関が結果を管理することで、社内の誰かに見られるかもしれないという不安を取り除きやすくなります。また、実施前に個人結果は本人以外に通知されないことを丁寧に説明する場を設けることも重要です。
課題③ 高ストレス者への面接指導体制の整備
ストレスチェックの実施だけでなく、高ストレス者から申し出があった場合の面接指導体制の整備も義務となります。面接指導は医師が行う必要があるため、産業医がいない事業場では対応できる医師をあらかじめ確保しておく必要があります。
地域産業保健センターでは面接指導の実施も支援していますが、利用回数に制限があります。継続的な対応が必要な場合は、産業医の選任または外部の産業保健サービスの活用を検討しましょう。
LiFE Investorsは、メンタル対応に特化した産業医紹介サービスです。
復職判断・休職対応・メンタル不調者への対応など、現場の悩みに寄り添える産業医をご紹介します。
サービスの詳細はこちらからご確認いただけます。
👉 資料請求・お問い合わせはこちら
今から取り組むべき4つのこと
義務化までの期間を有効に使い、段階的に準備を進めるためのステップを紹介します。
STEP 1|実施体制の選択肢を検討する
実施体制には大きく3つの選択肢があります。
- 自社運用:産業医を選任し、ストレスチェックを社内で実施する
- 外部委託:外部のストレスチェックサービスに実施を委託する
- 地域産業保健センターの活用:50人未満事業場向けの無料サービスを利用する
50人未満の事業場では外部委託が最も現実的なケースが多く、コストも近年は低廉化が進んでいます。複数のサービスを比較検討しておきましょう。
STEP 2|産業医または面接指導医の確保を検討する
高ストレス者への面接指導に対応できる医師の確保は、時間がかかる場合があります。義務化の施行直前に慌てて探すのではなく、早めに産業医紹介サービスや地域産業保健センターに相談しておくことをおすすめします。
ストレスチェックの実施者とメンタルヘルス対応の専門性を兼ね備えた産業医を選任できれば、実施体制と面接指導体制を一括して整えることができます。
STEP 3|従業員への周知と理解促進を進める
制度の意義・個人情報の取り扱い・受検が任意であることなどを、従業員に丁寧に説明する機会を設けましょう。特に小規模事業場ではプライバシーへの不安が受検率を下げる要因になるため、結果が誰に知られるのかを明確に伝えることが受検率向上の鍵です。
STEP 4|結果を職場改善に活かす仕組みを作る
ストレスチェックは実施して終わりでは意味がありません。集団分析の結果を産業医や経営層と共有し、職場環境改善につなげる仕組みを整えることで、初めてメンタルヘルス対策としての実効性が生まれます。
義務化前に自主的に取り組む企業のメリット
施行まで猶予があるからといって、義務化を待ってから動き出す必要はありません。今から自主的に取り組むことには複数のメリットがあります。
健康経営優良法人の認定要件を満たしやすくなる点は、採用活動や企業ブランディングにも直結します。また、ストレスチェックを実施していることが安全配慮義務の履行の証跡となり、万が一のトラブル時のリスク軽減につながります。
さらに、施行直前には産業医やサービス業者への需要が集中し、希望の体制を組みにくくなる可能性があります。先行して準備を進めることで、自社に合った体制をじっくり選べるというメリットもあります。
まとめ
ストレスチェックの50人未満事業場への義務化は、2025年5月の法改正により正式に決定しています。施行は最長2028年5月までとされていますが、政令によって早まる可能性もあります。準備に時間がかかることを考えると、今から動き出すことが重要です。
- 2025年5月14日の改正労働安全衛生法公布により、50人未満の事業場へのストレスチェック義務化が決定
- 施行は最長2028年5月まで。政令によって早まる可能性もある
- 従業員数は会社全体ではなく事業場単位で判断する
- 10〜49人規模のストレスチェック実施率は33.5%にとどまっており、対策の格差解消が義務化の背景(厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」)
- 精神障害による労災支給決定件数は令和6年度に1,055件と過去最多を更新(厚生労働省「令和6年度 過労死等の労災補償状況」)
- 50人未満事業場の課題は実施者の確保、プライバシー対策、面接指導体制の整備の3点
- 外部委託・地域産業保健センターの活用・産業医の選任が主な対応策
「いつかやらなければ」ではなく、「今から計画的に準備する」というスタンスで動き出すことが、義務化後の混乱を防ぐ最善策です。
ストレスチェック義務化への対応でお困りの方へ
LiFE Investorsでは、メンタル対応に強い産業医を紹介しています。
貴社の課題やご状況に合わせて、最適な産業医をご提案します。
👉 サービス詳細・事例はこちら|LiFE Investors 産業医紹介サービス
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況については産業医や専門家にご相談ください。法令の改正により内容が変わる場合があります。

